アスベストのスレート屋根、撤去かカバー工法か?費用とメリットを徹底比較
- seira murata
- 4 日前
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ご自宅のスレート屋根にアスベストが含まれているか不安ではありませんか?この記事では、アスベスト含有スレート屋根の改修方法である「撤去(葺き替え)」と「カバー工法」を徹底比較します。それぞれの費用相場、メリット・デメリット、工事期間の違いから、補助金の活用法、信頼できる業者の選び方まで詳しく解説。あなたの状況や予算に合わせた最適な選択肢が明確になり、安心して工事計画を立てられるようになります。
1. はじめに あなたのスレート屋根は大丈夫?アスベスト問題の現状
ご自宅の屋根がスレート葺きで、長年メンテナンスをしていない場合、「もしかしたらアスベストが含まれているのではないか?」とご不安に思われているかもしれません。かつてスレート屋根は、安価で耐久性が高いことから日本の多くの住宅で採用されてきましたが、その一部には健康被害のリスクがあるアスベスト(石綿)が使用されていました。
現在、アスベストはその危険性が広く知られるようになり、法律で厳しく規制されています。しかし、規制前に建てられた建物には、今なおアスベストを含んだ建材が数多く残存しているのが実情です。この記事では、ご自宅のスレート屋根に潜むアスベスト問題の現状と、安全な改修方法について専門的な視点から解説していきます。
1.1 法規制とアスベスト含有建材の今
アスベストは、吸い込むと肺がんや中皮腫といった深刻な健康被害を引き起こす可能性があるため、日本では段階的に規制が強化されてきました。そして、2006年(平成18年)9月1日以降は、アスベストを0.1重量%を超えて含有する製品の製造・使用が原則として全面禁止されています。
しかし、これはあくまで「これから新しく使うこと」を禁止したものです。規制以前に建てられた建物、特に2006年以前に施工されたスレート屋根には、アスベストが含まれている可能性が非常に高いと言えます。これらの建材は「既存不適格」として、今も日本全国の住宅や建物に残り続けているのです。
1.2 なぜ今、スレート屋根のアスベスト対策が必要なのか
「今まで問題なかったのだから、そのままでも大丈夫だろう」とお考えになるかもしれません。しかし、アスベスト含有スレート屋根を放置することには、主に2つの大きなリスクが伴います。
一つ目は、経年劣化によるアスベスト繊維の飛散リスクです。屋根は常に紫外線や風雨にさらされる過酷な環境にあります。長年の劣化によりスレート材がひび割れたり、欠けたりすると、そこから有害なアスベスト繊維が飛散し、ご家族や近隣住民の健康を脅かす恐れがあります。
二つ目は、法改正により解体・改修時の規制が強化されている点です。アスベストの飛散防止を徹底するため、近年、関連法規である「石綿障害予防規則(石綿則)」などが改正され、建物の解体やリフォームを行う際の事前調査や届出が義務化されました。これを知らずに工事を進めてしまうと、法律違反となるだけでなく、深刻な健康被害を招く原因にもなりかねません。
ご自宅の屋根の安全を確保し、将来にわたって安心して暮らすためには、アスベスト問題に関する正しい知識を持ち、適切な時期に適切な対策を講じることが不可欠です。次の章から、具体的な見分け方や対処法について詳しく見ていきましょう。
2. アスベスト含有スレート屋根の見分け方と危険性

ご自宅のスレート屋根にアスベスト(石綿)が含まれているのではないかと、ご不安に感じていませんか?かつては建材として広く利用されていましたが、現在ではその危険性が明らかになっています。ここでは、アスベスト含有スレート屋根の簡単な見分け方と、放置した場合に起こりうる重大なリスクについて詳しく解説します。
2.1 製造年でわかるアスベスト含有の可能性
アスベスト含有スレート屋根を見分ける最も簡単な方法は、建物の建築年または屋根材の製造年を確認することです。日本の法律でアスベスト含有建材の使用が段階的に規制され、2004年(平成16年)10月には石綿を1%以上含む製品の製造・使用が原則禁止されました。そのため、この年が一つの大きな目安となります。
ご自宅の建築確認通知書や設計図書を確認することで、建築年や使用された屋根材の製品名がわかる場合があります。
製造・建築された年代 | アスベスト含有の可能性 | 備考 |
〜2004年(平成16年) | 非常に高い | この時期に製造されたスレート屋根材(コロニアル、カラーベストなど)のほとんどに、強度を高める目的でアスベストが使用されていました。 |
2004年(平成16年)以降 | 原則として含まれていない | 法規制により、アスベストを含まない無石綿スレート屋根材に切り替わっています。 |
ただし、これはあくまで目安です。正確な含有の有無を判断するためには、専門業者による現地調査と分析が必要となります。
2.2 アスベストスレート屋根を放置するリスク
「すぐに飛散しないなら、そのままでも大丈夫」と考えるのは非常に危険です。アスベスト含有スレート屋根を放置することには、以下のような深刻なリスクが伴います。
2.2.1 健康被害のリスク
スレート屋根に含まれるアスベストは、通常の状態では固められているため飛散しにくい「レベル3」建材に分類されます。しかし、経年劣化によるひび割れ、欠け、または台風や地震などの自然災害による破損が起こると、アスベスト繊維が空気中に飛散する危険性があります。この飛散した繊維を吸い込むことで、肺がんや悪性中皮腫といった、潜伏期間が数十年にも及ぶ重篤な病気を引き起こす可能性があります。
2.2.2 資産価値の低下と将来的な費用の増大
アスベストが含まれている建物は、将来売却する際に買主への告知義務があります。これは資産価値の低下につながる可能性があります。また、法規制は年々厳しくなっており、解体や改修工事を先延ばしにすることで、将来的にアスベストの処分費用がさらに高額になることも考えられます。
2.2.3 近隣への飛散リスク
万が一、自然災害などで屋根が大きく破損した場合、アスベスト繊維が飛散し、ご自身の家族だけでなく近隣住民の健康にも被害を及ぼしてしまう恐れがあります。知らず知らずのうちに加害者にならないためにも、早期の対策が重要です。
3. アスベストスレート屋根の改修方法は主に2つ

アスベストを含んだスレート屋根の改修方法は、大きく分けて「撤去(葺き替え)工法」と「カバー工法」の2種類です。それぞれの工法には異なる特徴、メリット、デメリットが存在します。ご自宅の状況や将来の計画、予算に合わせて最適な方法を選択することが重要です。ここでは、それぞれの工法の詳細を解説します。
3.1 完全に新しくする「撤去(葺き替え)工法」
撤去(葺き替え)工法とは、既存のアスベスト含有スレート屋根をすべて撤去し、新しい屋根材に交換する工事方法です。アスベストを建物から完全に取り除くため、将来にわたって安心できる最も確実な改修方法と言えます。また、撤去時に屋根の下地である野地板の状態を確認し、必要であれば補修や交換ができるため、雨漏りなどの根本的な問題解決にも繋がります。
3.1.1 撤去工法のメリット
アスベストを根本から完全に取り除ける唯一の方法であり、将来的な健康被害や資産価値低下のリスクを解消できます。
屋根材をすべて撤去するため、普段は確認できない屋根下地の状態を点検し、劣化や腐食があれば補修・交換が可能です。
軽量な金属屋根材(ガルバリウム鋼板など)を選ぶことで、屋根全体の重量を軽くし、建物の耐震性を向上させることができます。
デザインや機能性を含め、最新の屋根材の中から自由に選択肢できる幅が広がります。
3.1.2 撤去工法のデメリット
既存屋根の撤去費用に加え、アスベストの適正な処分費用が別途発生するため、総額が高額になります。
撤去作業と新しい屋根の設置作業が必要なため、カバー工法に比べて工事期間が長くなる傾向があります。
解体作業中は騒音や粉塵が発生しやすく、屋根がない期間が生じるため天候の影響も受けやすくなります。
アスベストの飛散を防ぐため、専門的な知識と技術を持つ業者による厳重な飛散防止対策が不可欠です。
3.2 既存屋根の上から被せる「カバー工法」
カバー工法(重ね葺き)とは、既存のアスベスト含有スレート屋根を撤去せず、その上から新しい防水シート(ルーフィング)と軽量な屋根材を被せて覆う工事方法です。既存の屋根材を「封じ込める」という考え方で、解体作業が不要なため、多くのメリットがあります。ただし、アスベストが建物に残り続けるという点を理解しておく必要があります。
3.2.1 カバー工法のメリット
アスベストの撤去・処分費用がかからないため、工事費用を大幅に抑えることができます。
解体作業がない分、工事期間が短く、騒音や粉塵の発生も最小限に抑えられます。
既存の屋根を剥がさないため、アスベストが飛散するリスクが極めて低く、安全に工事を進められます。
屋根が二重構造になることで、断熱性や遮音性が向上する効果が期待できます。
3.2.2 カバー工法のデメリット
アスベストが屋根に残存するため、根本的な問題解決にはなりません。将来、建物を解体する際には、結局アスベストの撤去・処分費用が発生します。
既存の屋根の上に新しい屋根を重ねるため、屋根全体の重量が増加し、建物の耐震性に影響を与える可能性があります。
屋根下地の状態を確認できないため、もし下地が劣化していても気づかずに工事を進めてしまうリスクがあります。
重ね葺きに適した軽量な屋根材(主に金属屋根)に選択肢が限られます。
4. 【徹底比較】アスベスト屋根の撤去とカバー工法 どちらを選ぶべきか

アスベスト含有スレート屋根の改修には、主に「撤去(葺き替え)工法」と「カバー工法」の2つの選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが最適かはご自宅の状況や将来の計画によって大きく異なります。ここでは、費用、建物の将来性、工事期間という3つの重要な視点から、どちらの工法を選ぶべきかを徹底的に比較・解説します。
4.1 費用を最優先するならカバー工法
とにかく初期費用を抑えたい、という場合にはカバー工法が有利です。カバー工法は、既存のアスベストスレート屋根を撤去せず、その上から新しい屋根材を被せる手法です。そのため、アスベストの解体・撤去費用や、特別管理産業廃棄物としての高額な処分費用が発生しません。これが、撤去工法に比べて費用を大幅に削減できる最大の理由です。ただし、将来的に再度リフォームを行う際には、2層分の屋根を撤去する必要があり、その際の費用は高額になる可能性がある点も考慮しておく必要があります。
4.2 建物の耐震性や将来性を考えるなら撤去工法
建物の長寿命化や耐震性の向上、将来的な資産価値を重視するなら撤去工法が最善の選択です。古いスレート屋根を完全に撤去し、軽量な新しい屋根材(ガルバリウム鋼板など)に葺き替えることで、建物全体の重量が軽くなります。これにより、地震の際の揺れが軽減され、耐震性が向上します。また、撤去工法では、カバー工法では確認できない屋根の下地(野地板など)の状態を直接点検し、傷んでいる部分を補修・交換できます。雨漏りの根本的な原因解決や、建物の躯体を健全に保つためには不可欠な工程です。アスベストという負の遺産を完全に除去できるため、将来的な不動産売却時にも安心です。
4.3 工事期間の短さを重視するならカバー工法
日常生活への影響を最小限に抑え、短期間で工事を完了させたい場合はカバー工法が適しています。既存屋根の解体作業がないため、工事全体の工程がシンプルで、工期を大幅に短縮できます。解体に伴う騒音や粉塵の発生も少なく、近隣への配慮という点でもメリットがあります。在宅しながらの工事も比較的行いやすく、仮住まいなどの手間や費用をかけたくない方におすすめです。
4.3.1 撤去工法とカバー工法の比較まとめ
比較項目 | 撤去(葺き替え)工法 | カバー工法 |
初期費用 | 高額になりやすい | 安価に抑えられる |
将来的な費用 | 割安になる可能性 | 次回の改修時に高額になる |
耐震性 | 向上する(軽量化) | やや悪化する(重量増) |
下地のメンテナンス | 可能(劣化部分を補修できる) | 不可(下地の状態は確認できない) |
工事期間 | 長め | 短い |
アスベストの除去 | 完全に除去できる | 残存する(封じ込め) |
選べる屋根材 | 制限なし | 軽量な屋根材に限定される |
最終的にどちらの工法を選ぶべきか迷った際は、「屋根の下地が傷んでいないか」「今後その家に何年住み続ける予定か」を基準に判断することをおすすめします。下地の劣化が疑われる場合や、今後20年以上住み続ける計画がある場合は、長期的な視点で撤去工法を選ぶことが賢明です。一方で、下地の状態が良好で、数年以内の住み替えを検討しているなど、短期的なコストを重視する場合はカバー工法が有効な選択肢となるでしょう。
5. アスベストスレート屋根の撤去とカバー工法の費用相場

アスベスト含有スレート屋根の改修工事にかかる費用は、工法や屋根の面積、劣化状況によって大きく変動します。ここでは、一般的な30坪(屋根面積約60㎡)の戸建て住宅をモデルケースとして、撤去工法とカバー工法の費用相場と、その内訳を詳しく解説します。
5.1 スレート屋根の撤去費用の内訳
撤去工法(葺き替え)は、既存のアスベスト含有スレートを全て撤去し、新しい屋根材に交換する方法です。アスベストの専門的な撤去・処分費用が加わるため、カバー工法よりも高額になる傾向があります。総額の目安は、80万円〜200万円程度です。
撤去工法(葺き替え)の費用内訳(屋根面積60㎡の場合) | ||
工事項目 | 費用相場 | 備考 |
足場設置費用 | 15万円~25万円 | 飛散防止シートの設置も含む |
既存スレート撤去費 | 10万円~20万円 | 屋根の形状や勾配による |
アスベスト処分費 | 15万円~30万円 | アスベストのレベルや量で変動 |
下地(野地板)補修・設置費 | 5万円~15万円 | 下地の劣化状況による |
防水シート(ルーフィング)設置費 | 5万円~10万円 | シートのグレードによる |
新規屋根材設置費 | 25万円~80万円 | 使用する屋根材による |
諸経費(運搬費など) | 5万円~15万円 | 業者により異なる |
上記の他に、下地の状態が悪ければ交換費用が追加で発生することもあります。正確な金額は必ず専門業者に見積もりを依頼して確認しましょう。
5.2 カバー工法の費用内訳と屋根材の種類
カバー工法は、既存のアスベストスレート屋根の上に新しい防水シートと屋根材を被せる方法です。アスベストの撤去・処分費用がかからないため、総額を抑えることができます。総額の目安は、60万円〜150万円程度です。
カバー工法の費用内訳(屋根面積60㎡の場合) | ||
工事項目 | 費用相場 | 備考 |
足場設置費用 | 15万円~25万円 | 飛散防止シートの設置も含む |
防水シート(ルーフィング)設置費 | 5万円~10万円 | シートのグレードによる |
新規屋根材設置費 | 30万円~100万円 | 使用する屋根材による |
役物工事費(棟板金など) | 5万円~10万円 | 屋根の形状による |
諸経費(運搬費など) | 5万円~10万円 | 業者により異なる |
カバー工法では、建物への負担を考慮して軽量な金属屋根材が主に選ばれます。代表的な屋根材と特徴は以下の通りです。
カバー工法で人気の屋根材 | ||
屋根材の種類 | 特徴 | ㎡あたりの単価相場 |
ガルバリウム鋼板 | 軽量で耐久性が高く、錆びにくい。コストパフォーマンスに優れる。 | 6,000円~10,000円 |
SGL鋼板 | ガルバリウム鋼板を改良した次世代の鋼板。より高い耐久性と防錆性を持つ。 | 7,000円~12,000円 |
アスファルトシングル | デザイン性が高く、防水性・防音性に優れる。複雑な形状の屋根にも対応可能。 | 6,000円~11,000円 |
5.3 アスベストの調査費用も考慮する
屋根の改修工事を行う前には、アスベスト含有の有無を正確に把握するための事前調査が法律で義務付けられています。この調査費用は、工事費用とは別途必要になる場合があるため注意が必要です。
調査方法は主に3段階あり、それぞれ費用が異なります。
書面調査:設計図書などの書類で確認します。費用は無料〜3万円程度です。
現地調査(目視):専門家が現地で屋根材の状態を目視で確認します。費用は2万円〜5万円程度です。
分析調査:屋根材の破片を採取し、専門機関で分析します。最も確実な方法で、費用は3万円〜10万円程度です。
多くの場合、まずは書面調査や現地調査を行い、そこで判断できない場合に分析調査へ進みます。工事を依頼する業者に調査もまとめて依頼できることが多いので、見積もりの際に確認しておきましょう。
6. アスベスト屋根の撤去工事で活用できる補助金・助成金

アスベスト含有スレート屋根の撤去や改修には、高額な費用がかかる場合があります。しかし、国や地方自治体が設けている補助金・助成金制度を活用することで、その費用負担を大幅に軽減できる可能性があります。これらの制度は、アスベストによる健康被害を防ぎ、安全な住環境を確保することを目的としています。ご自身の工事が対象となるか、積極的に情報を集めて活用しましょう。
6.1 国が主導する補助金制度「住宅・建築物アスベスト改修事業」
国土交通省が主体となり、地方自治体を通じて実施している補助金制度です。個人住宅を含む民間の建築物で行われるアスベストの分析調査や除去、封じ込め、囲い込みといった飛散防止対策工事の費用の一部を補助します。
この制度は、地方自治体が補助を行う場合に、国がその費用の一部を支援する形をとっています。そのため、実際に利用する際は、お住まいの市区町村の窓口を通じて申請することになります。
6.2 地方自治体(都道府県・市区町村)独自の補助金制度
国の制度とは別に、多くの地方自治体が独自の補助金・助成金制度を設けています。制度の名称や内容、補助額は自治体によって様々ですが、主に以下のような工事が対象となります。
アスベスト含有調査(分析調査)費用への補助
アスベスト除去・処分費用への補助
アスベストを含む建物の解体費用への補助
お住まいの地域でどのような制度があるか、必ず確認することが重要です。
6.2.1 補助金制度の具体例
以下は、一般的な自治体の補助金制度の例です。詳細な条件や補助金額は自治体ごとに異なりますので、あくまで参考としてご覧ください。
自治体の補助金制度の例 | |
項目 | 内容の例 |
制度名称 | 民間建築物アスベスト除去等補助金、木造住宅耐震改修等助成事業(アスベスト除去含む)など |
対象となる建物 | 個人が所有する戸建て住宅、共同住宅など(吹付けアスベスト等が施工されている建築物) |
対象となる工事 |
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補助額・補助率 |
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主な条件 |
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6.3 補助金・助成金を利用する際の注意点
補助金をスムーズに活用するためには、いくつか押さえておくべき重要なポイントがあります。後から「知らなかった」と後悔しないよう、事前に確認しておきましょう。
6.3.1 申請のタイミングは「工事契約前」が原則
最も重要な注意点は、補助金の申請は必ず工事の契約・着工前に行う必要があるということです。多くの自治体では、事前の申請と交付決定通知がなければ補助の対象となりません。すでに工事を始めてしまったり、完了してしまったりした場合は、原則として申請できませんのでご注意ください。
6.3.2 予算の上限と申請期間
自治体の補助金制度は、年間の予算が決められています。そのため、申請期間内であっても予算の上限に達した時点で受付が終了してしまうケースが少なくありません。アスベスト屋根の改修を検討し始めたら、できるだけ早い段階で自治体の情報を確認し、準備を進めることをお勧めします。
6.3.3 お住まいの自治体への確認が必須
補助金制度の有無、名称、対象要件、申請手続きなどは、自治体によって大きく異なります。最新かつ正確な情報を得るためには、必ず工事を予定している建物の所在地を管轄する自治体のウェブサイトを確認するか、建築指導課や環境保全課といった担当窓口に直接問い合わせてください。業者に相談する際も、自治体の補助金制度に詳しいかどうかを確認すると良いでしょう。
7. 信頼できる専門業者の選び方と注意点

アスベスト含有スレート屋根の撤去やカバー工法は、専門的な知識と技術が求められる非常にデリケートな工事です。業者選びを誤ると、アスベストの飛散による健康被害や近隣トラブル、予期せぬ追加費用の発生など、深刻な問題につながりかねません。ここでは、安心して工事を任せられる信頼できる専門業者を見極めるための重要なポイントを解説します。
7.1 アスベスト関連の許可や資格を確認する
アスベストの撤去工事を行うには、法律で定められた許可や資格が必要です。契約前に必ず以下の点を確認し、必要な許可・資格を保有している業者を選びましょう。特に、作業現場には「石綿作業主任者」という国家資格を持つ者を配置することが義務付けられています。
許可・資格の種類 | 内容 |
建設業許可(建築工事業、屋根工事業など) | 500万円以上の工事を請け負う場合に必須となる都道府県知事または国土交通大臣からの許可です。 |
解体工事業登録 | 500万円未満の解体工事を行う場合に必要となる都道府県知事への登録です。 |
石綿作業主任者 | アスベスト除去作業の現場で、作業員の指揮監督や保護具の使用状況の監視などを行う国家資格者。現場への配置が法律で義務付けられています。 |
特別管理産業廃棄物管理責任者 | 撤去したアスベストを「特別管理産業廃棄物」として、収集・運搬・処分するまでを適正に管理するための資格です。 |
これらの情報は、業者のウェブサイトや会社案内で確認できるほか、見積もりを依頼する際に直接提示を求めるのが確実です。口頭での説明だけでなく、許可証や資格者証のコピーを提示してもらうとより安心です。
7.2 複数業者からの相見積もりが不可欠
アスベスト屋根の工事費用は、業者によって大きく異なる場合があります。適正な価格とサービス内容を見極めるために、必ず2~3社から相見積もりを取得しましょう。単に総額を比較するだけでなく、見積書の内容を細かくチェックすることが重要です。
見積書のチェック項目 | 確認するポイント |
工事内容の内訳 | 「屋根工事一式」ではなく、「足場設置」「既存スレート撤去」「アスベスト処分費」「新規屋根材」「施工費」など項目が詳細に記載されているか。 |
アスベスト対策費 | 作業員の保護具、養生、湿潤化作業、飛散抑制剤の散布など、法に定められた飛散防止対策に関する項目と費用が明記されているか。 |
廃棄物処理費 | 撤去したアスベスト含有スレートの処分費用が「特別管理産業廃棄物処理費」として適正に計上されているか。 |
諸経費 | 現場管理費や保険料(賠償責任保険など)の内容が明確か。万が一の事故に備えた保険加入の有無は必ず確認しましょう。 |
保証内容 | 工事後の保証(アフターフォロー)の有無や期間、内容が書面に記載されているか。 |
極端に安い見積もりには注意が必要です。必要な安全対策や適正な廃棄物処理を怠ることでコストを削減している悪質な業者の可能性があります。見積もりの内容について不明な点があれば、担当者に納得がいくまで質問し、丁寧かつ明確に回答してくれる業者を選びましょう。
8. まとめ
アスベスト含有スレート屋根の改修は、費用や工期を抑えられるカバー工法と、建物の耐震性向上や将来の安心につながる撤去(葺き替え)工法があります。どちらを選ぶべきかは、ご自宅の状況や何を優先するかによって異なります。この記事で解説したメリット・デメリットや費用を参考に、ご自身の希望に合う工法を検討しましょう。最終的な判断は、アスベスト処理の専門知識を持つ複数の業者に相談し、見積もりを取った上で慎重に決定することが重要です。
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