プロが教えるマンションリノベーション費用相場|フルリノベーションで後悔しないポイント
- seira murata
- 7月17日
- 読了時間: 42分

マンションリノベーションの費用相場がわからず、計画が進まないとお悩みではありませんか。この記事では、広さ・工事箇所別の費用相場はもちろん、300万円台から1000万円以上まで費用別の豊富な事例写真を交えて、プロが徹底解説します。費用を抑えるコツからフルリノベーションで後悔しないための重要ポイントまで網羅。理想の住まいを実現するための、正確な予算感と具体的な進め方がわかります。
1. まずは結論 マンションリノベーションの費用相場
マンションのリノベーション費用は、工事の範囲によって大きく「フルリノベーション」と「部分リノベーション」の2つに分けられます。まずは、それぞれの費用相場を把握し、ご自身の計画に近いものがどちらなのかを確認してみましょう。
これからご紹介する費用はあくまで目安です。最終的な金額は、使用する建材や設備のグレード、デザインのこだわり、マンションの現状などによって変動します。
1.1 フルリノベーション(スケルトン)の費用相場
フルリノベーションとは、住戸の内装や設備をすべて解体・撤去して、骨組み(スケルトン)の状態から間取りや内装、配管などを全面的に作り直す大規模なリノベーションです。間取りを自由に変更できるため、理想の住まいをゼロから実現したい方に向いています。
費用相場の目安は、1平米(㎡)あたり約10万円~20万円が一般的です。総額では、住まいの広さに応じて以下のようになります。
専有面積 | 費用相場(総額) |
50㎡ | 500万円 ~ 1,000万円 |
60㎡ | 600万円 ~ 1,200万円 |
70㎡ | 700万円 ~ 1,400万円 |
80㎡ | 800万円 ~ 1,600万円 |
この価格差は、主に導入するキッチンやお風呂といった住宅設備のグレード、使用する床材や壁紙などの建材の種類、造作家具の有無などによって生じます。デザインにこだわればこだわるほど、費用は高くなる傾向にあります。
1.2 部分リノベーションの費用相場
部分リノベーションは、キッチンや浴室、リビングなど、特定の箇所だけを改修する工事です。気になる部分だけを新しくできるため、費用を抑えながら住まいの満足度を効率的に高められるのが大きなメリットです。
ここでは、特に要望の多い主要な工事箇所の費用相場をご紹介します。詳しい工事内容や期間については、後の章で詳しく解説します。
工事箇所 | 費用相場 |
キッチン | 50万円 ~ 150万円 |
浴室・お風呂 | 60万円 ~ 150万円 |
トイレ | 20万円 ~ 50万円 |
洗面所 | 20万円 ~ 50万円 |
リビング・ダイニング(12畳程度) | 40万円 ~ 150万円 |
内装(壁紙・床材) | 10万円 ~ 80万円 |
部分リノベーションを複数箇所同時に行うことで、足場代や養生費などをまとめられ、個別に依頼するよりも総額が割安になる場合があります。どこを優先的にリノベーションしたいか、予算と合わせて検討することが重要です。
2. 【広さ別】マンションリノベーションの費用相場をチェック

マンションリノベーションの費用を考える上で、最も基本となるのが住まいの「広さ(専有面積)」です。床や壁の面積、必要な建材の量、工事にかかる手間などが広さに比例して変わるため、費用を概算する重要な指標となります。ここでは、代表的な広さ別にリノベーション費用の相場と、それぞれの広さに適したリノベーションのポイントを詳しく解説します。
ご自身のマンションの広さや、これから購入を検討している物件の広さと照らし合わせながら、具体的な予算計画の参考にしてください。
2.1 50平米台のマンションリノベーション費用相場
50平米台のマンションは、単身者やDINKS(共働きの子供がいない夫婦)に人気の広さです。比較的コンパクトな空間だからこそ、リノベーションによって暮らしやすさを大きく向上させることができます。
リノベーションの種類 | 費用相場 |
部分リノベーション | 200万円~500万円 |
フルリノベーション(スケルトン) | 500万円~900万円 |
50平米台のリノベーションでは、限られた空間をいかに広く、機能的に見せるかが鍵となります。例えば、間仕切り壁を撤去して広々としたワンルームやLDKにしたり、デッドスペースを活用した収納を造作したりすることで、実際の面積以上の開放感を得られます。また、白を基調とした内装や、ガラスの間仕切りなどを採用するのも空間を広く見せるテクニックの一つです。予算に限りがある場合は、キッチンや浴室など、こだわりたい箇所に費用を集中させ、その他の部分は内装の変更に留めるなど、メリハリのある計画を立てるのがおすすめです。
2.2 60平米台のマンションリノベーション費用相場
60平米台は、DINKSからお子様が1人のファミリー層まで、幅広い世帯にフィットする広さです。中古マンション市場でも流通量が多く、リノベーションを前提とした物件探しもしやすいでしょう。
リノベーションの種類 | 費用相場 |
部分リノベーション | 300万円~600万円 |
フルリノベーション(スケルトン) | 600万円~1,100万円 |
60平米台になると、間取りの自由度がぐっと高まります。現在のライフスタイルはもちろん、将来の家族構成の変化も見据えたプランニングが可能になるのが大きなメリットです。例えば、今は広いLDKとして使い、将来は可動式の間仕切りで子供部屋を作れるように設計しておくといった柔軟な対応ができます。また、リビングの一角にワークスペースを設けたり、回遊性のある家事動線を確保したりと、暮らしの質を高めるための工夫を盛り込みやすくなります。
2.3 70平米台のマンションリノベーション費用相場
70平米台は、3LDKの間取りも多く、ファミリー層から特に高い人気を誇る広さです。家族それぞれのプライベートな空間を確保しつつ、ゆとりのある共有スペースを実現できます。
リノベーションの種類 | 費用相場 |
部分リノベーション | 400万円~700万円 |
フルリノベーション(スケルトン) | 700万円~1,300万円 |
この広さのリノベーションでは、家族のコミュニケーションとプライバシーのバランスが重要なテーマになります。例えば、壁付けキッチンを対面式に変更してリビングにいる家族と会話を楽しめるようにしたり、リビング横の和室をなくして一体的な大空間LDKにしたりするケースが人気です。子供の成長に合わせて物が増えることを見越して、ウォークインクローゼットやパントリーなど、大容量の収納を計画的に配置することが、長く快適に暮らすためのポイントと言えるでしょう。
2.4 80平米以上のマンションリノベーション費用相場
80平米以上の広さがあれば、かなり自由で多彩なプランニングが可能です。ゆとりのある暮らしを求めるファミリー層や、二世帯での同居を考えている方にも適しています。
リノベーションの種類 | 費用相場 |
部分リノベーション | 500万円~900万円 |
フルリノベーション(スケルトン) | 800万円~1,500万円以上 |
80平米以上のリノベーションでは、LDKや個室の広さを十分に確保した上で、書斎や趣味の部屋、トレーニングスペースといった「+α」の空間を設けることも夢ではありません。玄関横に大容量のシューズインクローゼットを作ったり、アイランドキッチンを中心としたホームパーティー仕様のLDKにしたりと、まさに理想の暮らしを形にできます。費用は高額になる傾向がありますが、その分、建材や設備のグレードにこだわったり、オーダーメイドの家具を造作したりと、住まいへのこだわりを存分に反映できるのが最大の魅力です。ただし、要望が増えるほど費用もかさむため、どこにコストをかけるか、優先順位を明確にしながら計画を進めることが重要になります。
3. 【工事箇所別】部分リノベーションの費用相場と工事期間

マンションリノベーションは、全体を一度に行うフルリノベーションだけでなく、キッチンや浴室など、気になる箇所だけを新しくする「部分リノベーション」も非常に人気があります。ここでは、主要な工事箇所ごとの費用相場と工事期間の目安を、費用を左右するポイントとあわせて詳しく解説します。ご自身の希望するリノベーションの予算感を掴む参考にしてください。
※費用や期間はあくまで目安です。選ぶ設備のグレードや工事の規模、マンションの構造によって変動します。
3.1 キッチンリノベーションの費用相場
キッチンは毎日使う場所だからこそ、使い勝手やデザインにこだわりたい方が多い場所です。設備のグレードやレイアウト変更の有無で費用が大きく変わります。
費用相場 | 工事期間の目安 |
50万円~150万円 | 2日~1週間程度 |
キッチンのリノベーション費用は、主に「キッチンのグレード」と「工事内容」によって決まります。壁付けキッチンを同じ場所で新しいものに交換するだけなら費用は抑えられますが、対面キッチンやアイランドキッチンへのレイアウト変更は、給排水管やガス管、電気配線の移設が伴うため費用が高額になる傾向があります。
3.1.1 価格帯別の主な工事内容
価格帯 | 主な工事内容 |
50万円~80万円 | 既存のキッチンと同じサイズ・位置でのシステムキッチン交換。ベーシックなグレードの製品が中心。 |
80万円~120万円 | ミドルグレードのシステムキッチンへの交換。食洗機や高機能コンロなどのオプション追加や、周辺の壁紙・床材の張り替えも可能に。 |
120万円以上 | 壁付けから対面式へのレイアウト変更や、アイランドキッチンの新設。ハイグレードなキッチンや、オーダーメイドでの造作も視野に入ります。 |
3.2 浴室・お風呂リノベーションの費用相場
一日の疲れを癒やす浴室は、快適性を大きく向上させるリノベーションです。主流は清掃しやすく機能的なユニットバスへの交換ですが、在来工法からの変更は費用が上がります。
費用相場 | 工事期間の目安 |
60万円~150万円 | 2日~1週間程度 |
費用はユニットバス本体の価格に大きく左右されます。浴室乾燥機、ミストサウナ、肩湯、保温性の高い浴槽など、機能性を追求するほど費用は高くなります。また、既存の浴室よりサイズを大きくする場合や、入口のドアを引き戸に変更するなどの工事も追加費用がかかります。
3.2.1 価格帯別の主な工事内容
価格帯 | 主な工事内容 |
60万円~90万円 | 既存と同じサイズのユニットバスへの交換。普及価格帯のベーシックな機能の製品が中心。 |
90万円~120万円 | ミドルグレードのユニットバスへの交換。浴室乾燥暖房機や保温浴槽など、人気のオプションを追加可能。 |
120万円以上 | ハイグレードなユニットバスへの交換や、タイル張りの在来工法からユニットバスへの変更。サイズアップやデザイン性の高い設備の導入も。 |
3.3 トイレリノベーションの費用相場
トイレは比較的小規模な工事で空間の印象を大きく変えられます。便器の交換だけでなく、壁紙や床材を一緒に張り替えるのがおすすめです。
費用相場 | 工事期間の目安 |
15万円~50万円 | 半日~2日程度 |
便器の種類によって価格は大きく異なります。近年人気のタンクレストイレは、デザイン性が高く空間がすっきりしますが、製品価格が高価なことと、手洗い器を別途設置する必要がある場合が多く、総額が高くなる傾向があります。
3.3.1 価格帯別の主な工事内容
価格帯 | 主な工事内容 |
15万円~25万円 | 温水洗浄便座付きの組み合わせ便器への交換。便器本体の交換がメイン。 |
25万円~40万円 | 一体型トイレやタンクレストイレへの交換。壁紙と床(クッションフロア)の張り替えもセットで行うことが多い価格帯。 |
40万円以上 | ハイグレードなタンクレストイレへの交換と、手洗いカウンターや収納棚の新設。デザイン性の高い内装材の利用も可能。 |
3.4 洗面所リノベーションの費用相場
洗面所は、洗面化粧台の交換が中心となります。収納力やデザイン性を重視して選ぶ方が多く、造作洗面台でオリジナリティを出すことも可能です。
費用相場 | 工事期間の目安 |
15万円~50万円 | 半日~3日程度 |
既製品の洗面化粧台は比較的安価で工期も短いですが、カウンターや鏡、収納を自由に組み合わせる造作洗面台は、デザインの自由度が高い分、費用と工期がかかります。また、洗面所の壁紙や床材の張り替え、収納棚の追加なども同時に行うと満足度が高まります。
3.4.1 価格帯別の主な工事内容
価格帯 | 主な工事内容 |
15万円~25万円 | 既存と同サイズの洗面化粧台への交換。ベーシックなグレードの製品が中心。 |
25万円~40万円 | 収納力の高い三面鏡タイプなど、ミドルグレードの洗面化粧台への交換。内装(壁・床)の張り替えも含む。 |
40万円以上 | ハイグレードな洗面化粧台への交換や、カウンターやボウルを自由に選べる造作洗面台の設置。 |
3.5 リビング・ダイニングリノベーションの費用相場
家族が集まるリビング・ダイニングは、間取り変更を伴うなど工事内容が多岐にわたるため、費用も大きく変動します。
費用相場 | 工事期間の目安 |
50万円~300万円以上 | 1週間~1ヶ月程度 |
最も費用に影響するのは間取り変更の有無です。例えば、隣接する和室の壁を撤去してリビングと一体化するような工事は、解体費や床・壁・天井の補修、電気工事などが発生するため費用がかさみます。ただし、マンションの構造上、撤去できない構造壁(耐力壁)もあるため事前の確認が必須です。その他、床暖房の設置、窓を二重サッシにする断熱工事、間接照明や造作家具の設置なども費用を左右する大きな要因です。
3.6 内装(壁紙・床材)リノベーションの費用相場
内装の張り替えは、比較的少ない費用で部屋の印象をがらりと変えることができるコストパフォーマンスの高いリノベーションです。施工面積や選ぶ素材によって費用が決まります。
工事内容 | 費用相場(材料費+工事費) | 工事期間の目安(6畳間程度) |
壁紙(クロス)張り替え | 1,000円~1,800円/㎡ | 1日~2日 |
フローリング張り替え | 5,000円~15,000円/㎡ | 2日~4日 |
クッションフロア張り替え | 2,500円~4,500円/㎡ | 半日~1日 |
壁紙は、シンプルな量産品と、デザイン性や消臭・防汚などの機能性を持つ高機能品で価格が変わります。床材のフローリングは、既存の床の上に新しい床材を張る「重ね張り(上張り)」工法の方が、既存の床を剥がして張り替える「張り替え」工法よりも費用を抑えられます。ただし、床の傷みが激しい場合や、床の高さに制限がある場合は張り替えが必要になります。
4. 【費用別】マンションリノベーションのおしゃれな事例

マンションリノベーションで「いくらで何ができるのか」を具体的にイメージするために、費用別のリノベーション事例をご紹介します。ご自身の予算と照らし合わせながら、理想の住まいづくりの参考にしてください。ここでは、工事内容やデザインのポイントを、まるで写真を見ているかのように詳しく解説します。
4.1 300万円から500万円の費用でできるリノベーション事例
この価格帯は、気になる箇所を重点的に改修する部分リノベーションが中心となります。間取り変更を伴わない内装の一新や、水回り設備の交換で、住まいの印象と機能性を大きく向上させることが可能です。工事範囲を絞り、予算を集中させることで満足度の高いリノベーションが実現します。
【事例1:水回り設備を一新し、清潔感あふれる快適空間へ】
築25年・65平米のマンションで、古くなったキッチン、浴室、トイレ、洗面台の4点をまとめてリノベーションした事例です。最新のシステムキッチンに入れ替えることで、収納力と作業効率が格段にアップ。浴室はユニットバスごと交換し、保温性の高い浴槽と掃除しやすい壁パネルで日々の快適性を高めました。トイレと洗面所も新しい設備に交換し、壁紙とクッションフロアを張り替えることで、まるで新築のような清潔感あふれる空間に生まれ変わりました。
【事例2:和室をなくして広々としたリビングダイニングを実現】
築20年・70平米のマンションで、リビング横の和室をなくして一体化し、開放的なLDK空間を実現した事例です。壁を取り払うことで光が部屋の奥まで届くようになり、家族が自然と集まる明るい空間が生まれました。壁付けだったキッチンを対面式に変更し、リビングで過ごす家族とコミュニケーションを取りながら料理ができるように。リビング全体の壁紙とフローリングも新しく張り替え、約450万円で理想のLDKを手に入れました。
300万円〜500万円でできるリノベーション内容の目安 | |
工事内容 | 詳細 |
水回り | キッチン・浴室・トイレ・洗面台など、水回り設備の全体または部分的な交換 |
内装 | 全面的な壁紙(クロス)の張り替え、フローリングやクッションフロアの張り替え |
間取り変更 | 和室を洋室にする、リビングと隣室の壁を撤去するなど、限定的な間取り変更 |
その他 | 建具(室内ドア)の交換、収納(クローゼットなど)の増設 |
4.2 500万円から800万円の費用でできるリノベーション事例
予算500万円を超えると、内装のフルリニューアルはもちろん、ライフスタイルに合わせた間取り変更も現実的な選択肢に入ってきます。デザイン性の高い素材を選んだり、造作家具を取り入れたりと、オリジナリティあふれる空間づくりが可能になります。部分的なスケルトンリノベーションを行い、配管などを部分的に更新することも検討できる価格帯です。
【事例1:無垢材フローリングとデザインタイルでつくるカフェ風空間】
築30年・60平米のマンションを、デザインにこだわってリノベーションした事例。床材には足触りの良い無垢材のフローリングを採用し、キッチンの壁にはデザイン性の高いサブウェイタイルをあしらいました。リビングにはテレビボードを兼ねた造作の収納棚を設置し、統一感のあるおしゃれな空間を演出。間取りは大きく変更せず、素材とデザインで理想のカフェ風インテリアを実現しました。
【事例2:生活動線を改善する回遊性のある間取りへ】
築28年・75平米の3LDKマンションで、壁を取り払い、ウォークスルークローゼットを設けることで、家の中をぐるりと回れる「回遊動線」を実現した事例です。行き止まりのない間取りは家事効率を上げるだけでなく、空間に広がりと開放感をもたらします。内装も全面的に刷新し、白を基調としたシンプルなデザインに統一。既存の構造を活かしつつ、暮らしやすさを劇的に向上させました。
500万円〜800万円でできるリノベーション内容の目安 | |
工事内容 | 詳細 |
間取り変更 | 複数の部屋を一体化して広いLDKをつくる、ウォークインクローゼットの新設など、より自由度の高い間取り変更 |
内装・建材 | 無垢材フローリング、珪藻土や漆喰の塗り壁、デザインタイルなど、こだわりの素材の採用 |
設備 | デザイン性の高いシステムキッチンやユニットバス、タンクレストイレなど、グレードの高い設備の導入 |
その他 | 造作家具(棚、カウンターなど)の設置、間接照明の導入 |
4.3 800万円から1000万円の費用でできるリノベーション事例
この価格帯になると、内装や設備をすべて解体・撤去して骨組みの状態から作り直す「フルリノベーション(スケルトンリノベーション)」が本格的に可能になります。間取りの自由度が飛躍的に高まり、配管や配線、断熱材なども一新できるため、住宅性能そのものを向上させることもできます。デザイン、素材、機能性のすべてにこだわった住まいづくりが実現します。
【事例1:スケルトンから実現した理想の2LDK+ワークスペース】
築35年・70平米のマンションを一度スケルトン状態に戻し、現代のライフスタイルに合わせて間取りを再構築した事例。細かく仕切られていた3LDKを、広々としたLDKと2つの寝室、そしてリビングの一角にガラスで仕切られたワークスペースを設けた間取りに変更。給排水管やガス管、電気配線もすべて新しくし、見えない部分の安心も確保。床には床暖房を設置し、冬でも快適に過ごせる住まいが完成しました。
【事例2:住宅性能を向上させた快適でエコな住まい】
築25年・80平米のマンションで、デザイン性だけでなく住宅性能の向上にもこだわったフルリノベーション事例。壁や床に断熱材を追加し、窓はすべて断熱性・遮音性の高い二重サッシに交換。これにより、冷暖房効率が大幅にアップし、光熱費の削減と結露の防止にも繋がりました。内装には調湿効果のある自然素材をふんだんに使い、一年中快適で健康的に暮らせる上質な住環境を手に入れました。
800万円〜1000万円でできるリノベーション内容の目安 | |
工事内容 | 詳細 |
フルリノベーション | 内装・設備をすべて解体するスケルトンからのリノベーション |
インフラ更新 | 給排水管、ガス管、電気配線といったインフラ設備の全面的な更新 |
住宅性能向上 | 壁・床への断熱材の追加、二重サッシへの交換、床暖房の設置など |
自由な間取り | ライフスタイルに合わせた完全自由設計の間取り(玄関土間の拡張、水回りの大幅な移動など) |
4.4 1000万円以上の費用でできるフルリノベーション事例
1000万円以上の予算があれば、デザイン、素材、設備、性能のすべてにおいて妥協のない、最高級のリノベーションが実現可能です。海外製のハイグレードな設備や、天然石などの高級建材、複雑なデザインや照明計画、フルオーダーの造作家具など、あらゆる要望を形にできます。まさに「理想の住まい」を追求するための価格帯です。
【事例1:ホテルのようなラグジュアリー空間を自宅で実現】
築15年・95平米のタワーマンションを、ホテルのスイートルームをイメージしてフルリノベーションした事例。床には光沢の美しい大理石調タイルを敷き詰め、壁や天井には間接照明を多用して上質な光の空間を演出。キッチンは友人を招いてパーティーができる大型のアイランドキッチンをオーダーメイドで製作。浴室はガラス張りのデザインで、大型のジェットバスを導入。まさに非日常を日常にする、ラグジュアリーな住まいが完成しました。
【事例2:将来を見据えたバリアフリー仕様の二世帯住宅】
築40年・110平米の広いマンションを、親世帯と子世帯が快適に暮らせる二世帯住宅へフルリノベーションした事例。玄関を共有としつつ、キッチンや浴室、トイレなどの水回りはそれぞれに設置してプライバシーを確保。床の段差をすべてなくし、廊下やトイレには手すりを設置するなど、徹底したバリアフリー設計を施しました。将来にわたって安心して暮らせる、家族の繋がりを育む住まいへと生まれ変わりました。
1000万円以上でできるリノベーション内容の目安 | |
工事内容 | 詳細 |
最高級の仕様 | 海外製の高級キッチン、オーダーメイドのバスルーム、天然石や無垢材などの最高級建材の使用 |
デザイン | 著名な建築家やデザイナーによる設計、複雑なデザインや照明計画の実現 |
付加価値 | ホームシアター、ワインセラー、サウナ、防音室などの趣味の空間の創出 |
大規模な変更 | 二世帯住宅への変更、大幅な階層移動を伴う水回り設備の移設など、構造に踏み込んだ工事 |
※ここで紹介した費用や工事内容はあくまで一例です。実際の費用は、マンションの状況、選ぶ建材や設備のグレード、依頼するリノベーション会社によって変動します。
5. マンションリノベーション費用の詳しい内訳を解説

マンションリノベーションにかかる費用は、単に工事にかかるお金だけではありません。見積書を見たときに「思ったより高い」と感じることがないよう、費用の全体像を正しく理解しておくことが大切です。リノベーション費用は、大きく分けて「本体工事費」「設計デザイン料」「諸経費」の3つで構成されています。それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
5.1 本体工事費
本体工事費とは、リノベーション工事そのものにかかる費用のことで、総費用の約70%~80%を占める最も大きなウェイトを持つ項目です。解体から内装の仕上げ、設備の設置まで、住まいを新しく作り変えるための直接的な作業費用がここに含まれます。
具体的な工事内容は多岐にわたりますが、主な項目は以下の通りです。
工事項目 | 内容の例 |
仮設工事費 | 工事期間中の養生(床や壁の保護)、資材の搬入・搬出、共用部分の清掃などにかかる費用。 |
解体工事費 | 既存の間仕切り壁、床、天井、キッチン、浴室などを撤去し、廃材を処分するための費用。 |
木工事費 | 間仕切り壁や天井の下地作り、床組み、造作家具の製作など、大工工事にかかる費用。 |
内装仕上げ工事費 | 壁紙(クロス)の張り替え、塗装、フローリングやクッションフロアなどの床材施工、タイル貼りなど、内装の最終的な仕上げにかかる費用。 |
建具工事費 | 室内のドア、クローゼットの扉、窓のサッシやガラスの交換などにかかる費用。 |
電気設備工事費 | 配線の移動や増設、コンセント・スイッチの追加、照明器具の設置などにかかる費用。 |
給排水ガス設備工事費 | キッチンや浴室、トイレなどの水回りの配管移動や交換、ガス管の移設などにかかる費用。 |
住宅設備機器費 | システムキッチン、ユニットバス、トイレ、洗面化粧台などの設備機器本体の費用。 |
これらの項目は、見積書で詳細に記載されます。どこにどれくらいの費用がかかっているのかを把握するために、各項目の内容をしっかり確認しましょう。
5.2 設計デザイン料
設計デザイン料は、リノベーションのプランニングや設計、デザインを依頼する際に発生する費用です。建築士やデザイナーが、お客様の要望をヒアリングし、理想の住まいを形にするための図面作成やデザイン提案、工事が設計通りに進んでいるかを確認する「工事監理」などを行います。
費用の相場は、一般的に総工事費の10%~15%程度が目安とされています。例えば、総工事費が800万円の場合、設計デザイン料は80万円~120万円程度となります。
依頼する会社によって、この費用の扱いは異なります。
設計事務所やデザイナーに依頼する場合:
工事費とは別に「設計監理料」として請求されるのが一般的です。デザイン性の高い空間を求める場合や、複雑な設計を要する場合に適しています。
設計施工一貫のリノベーション会社に依頼する場合:
設計から施工までを一つの会社が担当します。設計料が本体工事費に含まれているケースや、「デザイン料」「プランニング料」といった項目で見積書に記載されるケースがあります。
設計デザイン料は、単なる手数料ではありません。プロの知識と経験によって、暮らしやすさやデザイン性、資産価値を大きく向上させるための重要な投資です。満足度の高いリノベーションを実現するためには、この費用を惜しまず、信頼できるパートナーに依頼することが鍵となります。
5.3 諸経費
諸経費は、本体工事費や設計デザイン料以外に発生する、リノベーションプロジェクト全体を円滑に進めるために必要な費用の総称です。見落としがちな項目も多いため、あらかじめ予算に組み込んでおくことが非常に重要です。
総費用の5%~10%程度を目安に考えておくと良いでしょう。主な諸経費には以下のようなものがあります。
項目 | 内容 |
現場管理費 | 工事現場の管理や事務手続き、会社運営に必要な経費。本体工事費の一律割合(例:10%~20%)で計上されることが多いです。 |
確認申請費用 | 大規模な間取り変更など、建築基準法に基づく建築確認申請が必要な場合に発生する行政への申請手数料や代行費用。 |
登記費用 | 増築などで建物の床面積が変わる場合に必要となる表示変更登記の費用。司法書士への報酬が含まれます。 |
各種保険料 | 工事期間中の火災や事故に備える工事保険(建設工事保険)などの費用。 |
駐車場代・交通費 | 工事車両の駐車場代や、職人さんの現場までの交通費など。 |
仮住まい・引越し費用 | 大規模なリノベーションの場合に必要となる、工事期間中の仮住まいの家賃や、2回分の引越し費用。 |
家具・家電購入費 | 新しい住まいに合わせて購入するカーテン、照明器具、家具、家電などの費用。 |
消費税 | ここまでに挙げたすべての費用(非課税項目を除く)に対してかかる税金。 |
特に、仮住まいや引越しの費用は数十万円単位でかかることもあり、予算計画から漏れると資金繰りが苦しくなる原因になります。フルリノベーションを検討する際は、必ずこれらの費用も考慮に入れた上で、余裕を持った資金計画を立てましょう。
6. マンションリノベーション費用を左右する要因とは

マンションリノベーションの費用は、ご自身の希望や物件の状況によって大きく変動します。画一的な定価が存在しないため、何にどれくらいの費用がかかるのか、その要因を正しく理解しておくことが予算計画の第一歩です。ここでは、リノベーション費用を左右する3つの大きな要因について、詳しく解説していきます。
6.1 工事の範囲とデザイン
リノベーション費用に最も大きな影響を与えるのが「工事の範囲」です。どこまで手を入れるかによって、必要な工事の種類と規模が変わり、費用も全く異なります。
例えば、内装や設備をすべて解体して一から作り直す「フルリノベーション(スケルトンリノベーション)」は、工事範囲が広いため費用が高額になる傾向があります。一方で、キッチンや浴室など、気になる箇所だけを新しくする「部分リノベーション」であれば、費用を限定的に抑えることが可能です。
また、間取り変更の有無も重要なポイントです。壁を撤去したり新設したりする工事はもちろん、キッチンや浴室といった水回りの位置を移動させる場合は、給排水管やガス管、電気配線、換気ダクトの移設工事が伴うため、費用が大幅にアップします。特に、床や壁の内部に隠れている配管を大きく動かす工事は、数十万円から百万円以上の追加費用がかかることも珍しくありません。
さらに、デザインへのこだわりも費用を左右します。例えば、以下のようなデザイン性の高い設計は、一般的なリノベーションに比べて費用が高くなる要因となります。
空間に合わせて造作するオーダーメイドの棚やカウンター
壁の一部をへこませて飾り棚にする「ニッチ」の設置
天井や壁に光を当てて空間を演出する「間接照明」の導入
室内窓やデザイン性の高い建具の採用
理想の空間を実現するためにはデザイン性も大切ですが、こだわりたい部分とシンプルに仕上げる部分のメリハリをつけることが、予算内で満足度の高いリノベーションを成功させる鍵となります。
6.2 設備や建材のグレード
リノベーション費用は、選ぶ「設備」や「建材」のグレードによっても大きく変わります。同じキッチン交換でも、選ぶメーカーやシリーズ、搭載する機能によって価格は2倍以上になることもあります。
住宅設備(キッチン、ユニットバス、トイレ、洗面化粧台など)は、各メーカーから価格帯の異なる様々なグレードの商品が展開されています。高価格帯のものは、デザイン性が高いだけでなく、最新機能や高品質な素材が使われていることが一般的です。
また、空間の印象を決定づける床材や壁材といった建材も、素材によって価格が大きく異なります。例えば、床材であれば複合フローリングよりも無垢フローリング、壁材であればビニールクロスよりも珪藻土やタイルの方が高価になります。下記の表は、代表的な建材のグレードと価格帯の目安です。
建材の種類と価格帯の目安(材料費+工事費/平米単価) | |||
箇所 | グレード(種類) | 価格帯の目安(平米あたり) | 特徴 |
床材 | クッションフロア | 2,500円~4,500円 | 安価で耐水性が高い。デザインが豊富。 |
複合フローリング | 8,000円~15,000円 | 一般的によく使われる。傷に強くメンテナンスが容易。 | |
無垢フローリング | 12,000円~25,000円 | 天然木の風合いが魅力。調湿効果があるが、傷つきやすく手入れが必要。 | |
壁材 | ビニールクロス(量産品) | 1,000円~1,500円 | 最も安価で施工が早い。デザインや機能性が豊富。 |
ビニールクロス(1000番台) | 1,500円~2,000円 | 量産品よりデザイン性や耐久性が高い。 | |
塗り壁(珪藻土・漆喰など) | 5,000円~10,000円 | 調湿・消臭効果がある。左官職人による手作業のため高価。 |
どこにどのグレードの設備や建材を使うかを慎重に検討することが、予算管理において非常に重要です。ショールームで実物を確認し、機能や質感、価格のバランスを考えて選ぶことをおすすめします。
6.3 マンションの構造と築年数
見落としがちですが、リノベーションを行うマンション自体の「構造」や「築年数」も、費用や工事内容に大きく影響します。
マンションの構造には、主に「ラーメン構造」と「壁式構造」の2種類があります。柱と梁で建物を支えるラーメン構造は、室内の壁を撤去しやすく間取り変更の自由度が高い一方、壁で建物を支える壁式構造は、構造上取り払えない壁(構造壁)があるため、間取り変更に大きな制約があります。希望する間取り変更が、そもそも物件の構造上可能なのかを事前に確認する必要があります。
また、築年数が古い物件ほど、目に見えない部分の劣化が進んでいる可能性があり、想定外の追加工事費用が発生するリスクが高まります。
配管の劣化:築25年以上経過した物件では、給排水管が寿命を迎えている場合があります。専有部分の配管交換には、20万円~50万円程度の追加費用がかかることがあります。
下地の損傷:壁や床を解体した際に、下地材の腐食や歪みが見つかることがあります。下地の補修や交換が必要となり、数万円~数十万円の費用が追加で発生します。
断熱性能の不足:古いマンションでは断熱材が入っていなかったり、性能が低かったりすることがあります。快適な住環境のために断熱材を追加・交換する場合、工事範囲によりますが20万円~100万円程度の費用がかかります。
アスベスト(石綿)の有無:2006年9月以前に着工された建物には、アスベスト含有建材が使用されている可能性があります。アスベストの調査や除去工事が必要になった場合、数十万円から百万円以上の高額な費用が別途発生するため、特に注意が必要です。
これらの要因は、解体してみないと正確な状況が分からないケースも少なくありません。そのため、特に築古マンションをリノベーションする際は、予期せぬ事態に備えて、工事費全体の10%~20%程度の予備費を確保しておくと安心です。
7. 賢くコストダウン マンションリノベーション費用を抑えるコツ

理想の住まいを叶えるマンションリノベーション。しかし、こだわりを詰め込むほど費用は膨らみがちです。ここでは、計画段階から知っておきたい、リノベーション費用を賢く抑えるための4つのコツを具体的に解説します。少しの工夫で予算にメリハリをつけ、満足度の高いリノベーションを実現しましょう。
7.1 工事の優先順位を決めてメリハリをつける
リノベーションで最も重要なのは、予算配分の「選択と集中」です。「絶対に譲れない部分」と「妥協できる部分」を事前に家族で話し合い、工事の優先順位を明確にしておきましょう。すべての要望を最高グレードで実現しようとすると、予算はあっという間にオーバーしてしまいます。
例えば、以下のように優先順位を整理してみるのがおすすめです。
お金をかけるべき部分(優先度:高)
毎日使うキッチンやユニットバスなどの水まわり設備
断熱材や内窓(インナーサッシ)の設置など、住宅性能の向上に関わる工事
家族が多くの時間を過ごすリビングの内装デザイン
配管や配線など、後からでは変更が難しいインフラ部分
コストを調整しやすい部分(優先度:中~低)
寝室や子ども部屋など、プライベートな空間の内装材のグレード
* ドアなどの建具(既存のものを塗装やシートでリメイクする手も)
造作家具ではなく、既製品やIKEAなどの家具で代用する
照明器具やカーテンレールなどのアクセサリー類
こだわりたい箇所にはしっかりと予算をかけ、そうでない部分はコストを抑える。このメリハリが、予算内で満足度の高いリノベーションを成功させる鍵となります。
7.2 既存のものを活かせる部分は再利用する
「フルリノベーション」と聞くと、すべてを解体して新しく作り直すイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。まだ使える部分や状態の良い部分を活かすことで、解体費用や新しい建材・設備の費用を大幅に削減できます。
例えば、以下のような視点で再利用できる部分がないかチェックしてみましょう。
床材(フローリング):傷が少なく状態が良ければ、クリーニングやワックスがけで輝きを取り戻せます。上から新しい床材を重ね張り(レイヤー工法)する方法なら、解体費用がかからず工期も短縮できます。
建具(ドア・クローゼット扉):大きな破損がなければ、塗装し直したり、上からダイノックシートなどの化粧フィルムを貼ったりするだけで、新品同様の見た目に生まれ変わらせることが可能です。
間取り:既存の間取りを活かすことで、壁の解体・造作費用や電気配線の変更費用などを抑えられます。
各種設備:キッチンや洗面台なども、本体はまだ使える状態であれば、水栓金具やコンロ、扉の面材だけを交換する「部分交換」でコストを抑えつつイメージを一新できます。
リノベーション会社との打ち合わせの際に、「この部分は活かせますか?」と積極的に相談してみることをおすすめします。
7.3 複数のリノベーション会社から相見積もりを取る
リノベーション費用や提案内容は、依頼する会社によって大きく異なります。そのため、必ず複数の会社から見積もりを取り、内容を比較検討する「相見積もり」を行いましょう。最低でも3社程度から話を聞くことで、ご自身の希望するリノベーションの適正な費用相場が見えてきます。
相見積もりを取る際には、以下の点に注意してください。
同じ条件で見積もりを依頼する:希望する間取り、使いたい設備や建材のグレードなど、各社に伝える要望を統一しましょう。条件が異なると、金額の単純比較ができなくなってしまいます。
金額だけで判断しない:提示された金額の安さだけで決めるのは危険です。なぜその金額になるのか、見積もりの内訳は詳細か(「〇〇工事一式」ばかりでないか)、提案されているプランの質、担当者との相性、アフターサービスや保証の内容まで含めて総合的に判断することが重要です。
会社の得意分野を見極める:デザイン性の高いリノベーションが得意な会社、住宅性能の向上を重視する会社、コストを抑えたリノベーションが得意な会社など、それぞれに特色があります。ご自身の希望に合った会社を選ぶことが、成功への近道です。
手間はかかりますが、相見積もりは適正価格を知り、信頼できるパートナーを見つけるための最も確実な方法です。
7.4 補助金や減税制度を活用する
リノベーションの内容によっては、国や地方自治体が実施している補助金・助成金制度や、税金の優遇措置(減税)を利用できる場合があります。これらの制度をうまく活用すれば、数十万円単位で費用負担を軽減できる可能性があります。工事の契約前に申請が必要な制度も多いため、計画段階で利用できるものがないか確認しておくことが大切です。
対象となる工事の代表例と、関連する制度を下の表にまとめました。
リノベーションで利用できる可能性がある補助金・減税制度の例 | ||
対象となる工事の種類 | 主な制度の例 | 概要 |
省エネリフォーム |
| 断熱改修(窓・壁・床など)、高効率給湯器の設置、節水型トイレへの交換などが対象。光熱費削減にも繋がります。 |
バリアフリーリフォーム |
| 手すりの設置、段差の解消、通路幅の拡張、引き戸への変更など、高齢者や要介護者が安全に暮らすための改修が対象です。 |
耐震リフォーム |
| 旧耐震基準(1981年5月31日以前)のマンションで、現行の耐震基準に適合させるための補強工事が対象となります。 |
長期優良住宅化リフォーム |
| 住宅の性能向上(耐震性、省エネ性など)と維持管理のしやすさを高めるためのリフォームが対象。複数の工事を組み合わせる必要があります。 |
これらの制度には、それぞれ予算の上限や申請期間、所得制限などの細かい要件が定められています。利用を検討する場合は、まずはお住まいの自治体のホームページを確認したり、制度の活用実績が豊富なリノベーション会社に相談したりすることをおすすめします。
8. フルリノベーションで後悔しないための重要ポイント

マンションのフルリノベーションは、理想の住まいを実現できる素晴らしい機会ですが、数百万円から一千万円以上もの費用がかかる大きなプロジェクトです。計画段階での準備や確認を怠ると、「思ったより費用がかさんだ」「希望の間取りにできなかった」といった後悔につながりかねません。ここでは、理想の住まいづくりを成功させるために、契約前に必ず押さえておきたい4つの重要ポイントを詳しく解説します。
8.1 中古マンション購入費用とリノベーション費用を総額で考える
中古マンションを購入してリノベーションを行う場合、最も重要なのが資金計画です。「物件価格」と「リノベーション費用」を別々に考えてしまうと、総額が予算を大幅に超えてしまう失敗に陥りがちです。
物件探しを始める段階から、リノベーション費用を含めた「総予算」を明確に設定しましょう。例えば、総予算が4,000万円の場合、「物件価格3,000万円+リノベーション費用1,000万円」や「物件価格3,500万円+リノベーション費用500万円」のように、物件とリノベーションの費用配分を柔軟に考えることが大切です。
この資金計画をスムーズに進めるためには、物件探しとリノベーションの会社探しを並行して行うか、物件探しから設計・施工までを一貫してサポートしてくれる「ワンストップリノベーション会社」に相談するのがおすすめです。物件の専門家と建築の専門家が連携し、購入したい物件で希望のリノベーションが実現可能か、総額はいくらになるのかを的確に判断してくれます。
また、物件購入にかかる仲介手数料や登記費用、各種税金、ローン手数料といった「諸費用」も忘れずに予算に組み込んでおく必要があります。一般的に諸費用は物件価格の6%〜9%程度が目安となります。「物件価格+リノベーション費用+諸費用」のすべてを合わせた総額で資金計画を立てることが、後悔しないための第一歩です。
8.2 マンションの管理規約を事前に必ず確認する
マンションは一戸建てと異なり、多くの人が共同で生活する集合住宅です。そのため、リノベーションにはマンションごとに定められた「管理規約」による制限が伴います。この確認を怠ると、契約後に希望の工事ができないことが発覚するケースもあるため、必ず中古マンションの売買契約前に確認しましょう。
リノベーションで変更できるのは、自分自身が所有する「専有部分」のみです。玄関ドアや窓サッシ、バルコニーなどは「共用部分」にあたるため、原則として個人で交換や変更はできません。管理規約で特に確認すべき主なポイントは以下の通りです。
床材の規定:フローリングの遮音等級(例:L-45以下)が定められていることがほとんどです。規約違反の床材を使用すると、階下への騒音トラブルの原因となります。
水まわりの移動:キッチンや浴室、トイレなどの水まわり設備は、排水管の勾配やPS(パイプスペース)の位置によって移動範囲が制限される場合があります。
電気容量:マンション全体で使える電気容量に上限があり、各住戸で増やせる容量が決まっている場合があります。IHクッキングヒーターや床暖房など、消費電力の大きい設備を導入したい場合は特に注意が必要です。
- 構造上の制約:壁式構造のマンションでは、構造体である壁(耐力壁)は撤去できません。間取りを大きく変更したい場合は、ラーメン構造のマンションを選ぶ必要があります。
工事可能な日時:工事ができる曜日や時間帯、資材の搬入ルールなどが細かく定められています。近隣住民への配慮のためにも遵守が必須です。
これらの内容は、不動産会社やリノベーション会社を通じて「管理規約」や「使用細則」を取り寄せ、専門家と一緒に確認することが不可欠です。
8.3 信頼できるリノベーション会社を選ぶ
リノベーションの満足度は、パートナーとなるリノベーション会社の質に大きく左右されます。デザイン性や費用はもちろん重要ですが、それ以上に担当者との相性や提案力、工事の品質を見極めることが成功の鍵となります。会社選びで失敗しないために、以下のチェックポイントを参考に複数の会社を比較検討しましょう。
8.3.1 会社選びのチェックポイント
最低でも2〜3社に相談し、相見積もりを取ることをお勧めします。各社の提案や見積もり、担当者の対応を比較することで、ご自身に最も合った信頼できるパートナーが見つかります。
チェック項目 | 確認するべきポイント |
実績・施工事例 | 自社の希望するデザインテイスト(ナチュラル、モダン、インダストリアルなど)と合っているかを確認します。特に、マンションリノベーションの実績が豊富かどうかは重要な指標です。ホームページや施工事例集で、過去のプロジェクトを詳しくチェックしましょう。 |
担当者との相性 | 要望を丁寧にヒアリングし、専門家として的確なアドバイスをくれるか、質問に対して誠実に答えてくれるかなど、コミュニケーションの取りやすさを確認します。レスポンスの速さや人柄も含め、長く付き合える相手かを見極めましょう。 |
提案力と設計力 | こちらの要望をそのまま形にするだけでなく、より良くするためのアイデアや、予算内で希望を叶えるための代替案などを提案してくれるかどうかが重要です。潜在的なニーズを汲み取り、プロならではの視点でプランを練ってくれる会社を選びましょう。 |
見積もりの透明性 | 「工事一式」といった曖昧な記載が多い見積もりは要注意です。どのような工事に、どのメーカーのどのグレードの建材・設備が使われ、それぞれにいくらかかるのかが詳細に記載されているかを確認します。不明な点があれば遠慮なく質問し、納得できるまで説明を求めましょう。 |
保証・アフターサービス | 工事中の万が一の事故に備える保険への加入はもちろん、引き渡し後の保証制度(瑕疵保証など)や定期点検といったアフターフォローの内容と期間を確認します。長く安心して住むために、保証体制の充実は欠かせません。 |
8.4 完成までのスケジュールを把握する
フルリノベーションは、相談を開始してから完成・引き渡しまで、一般的に半年から1年近くかかる長期的なプロジェクトです。全体の流れと各工程にかかる期間をあらかじめ把握し、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
一般的なスケジュールの目安は以下の通りです。
情報収集・相談(1〜2ヶ月):インターネットや雑誌で情報収集し、リノベーション会社に相談を開始します。
会社選定・現地調査(1〜2ヶ月):複数の会社と面談し、依頼先を絞り込みます。購入物件が決まっていれば、現地調査も行います。
プランニング・設計・見積もり(2〜3ヶ月):詳細な間取りやデザイン、仕様を決定し、最終的な見積もりを作成します。最も時間と労力がかかる工程です。
工事請負契約・ローン手続き(約1ヶ月):プランと見積もりに合意したら工事請負契約を締結。並行してリフォームローンの本審査・契約手続きを進めます。
着工〜工事完了(2〜4ヶ月):マンション管理組合への工事申請後、いよいよ着工です。解体後に予期せぬ問題(構造体の劣化など)が見つかり、工期が延長される可能性も考慮しておきましょう。
完成・引き渡し・アフターサービス:工事完了後、施主検査を経て引き渡しとなります。
特に、プランニングの段階では決めるべきことが非常に多く、悩んでしまいがちです。また、人気の会社では着工まで数ヶ月待ちというケースも少なくありません。現在の住まいの退去時期や、お子様の進学・進級のタイミングなども考慮し、すべての工程にバッファを持たせた無理のない計画を立てましょう。
9. マンションリノベーションで使えるローンと補助金制度

マンションリノベーションにはまとまった費用が必要ですが、自己資金だけで全てを賄うのは簡単なことではありません。そこで活用したいのが、各種ローンや補助金・助成金制度です。これらを賢く利用することで、資金的な負担を大幅に軽減し、理想の住まいづくりを実現できます。ここでは、リノベーションで使える代表的なローンと、返済不要で受け取れるお得な補助金制度について詳しく解説します。
9.1 リフォームローンの種類と特徴
リノベーション費用を借り入れる際の選択肢は、主に「リフォームローン」と「住宅ローン(リフォーム一体型)」の2つです。それぞれにメリット・デメリットがあるため、ご自身の状況に合わせて最適なものを選びましょう。
9.1.1 リフォームローン(単体型)
リフォーム工事費用のみを借り入れるローンです。既に住宅ローンを完済している方や、住宅ローンとは別に借りたい方向けの選択肢となります。担保が不要な「無担保型」と、不動産を担保に入れる「有担保型」があります。
無担保型ローン: 手続きが比較的簡単で審査もスピーディーなのが魅力です。ただし、金利は高めで借入可能額は数百万円程度と少なめ、返済期間も短い傾向にあります。小規模な部分リノベーションに向いています。
有担保型ローン: 自宅などを担保に入れるため、無担保型に比べて低金利で高額の借入が可能です。返済期間も長く設定できますが、抵当権設定などの手続きが必要で、審査にも時間がかかります。
9.1.2 住宅ローン(リフォーム一体型)
これから中古マンションを購入してリノベーションを行う場合に最もおすすめの方法です。物件の購入費用とリノベーション費用をまとめて一つの住宅ローンとして借り入れることができます。
最大のメリットは、リフォームローン単体で組むよりも金利が大幅に低く、返済期間も最長35年など長く設定できる点です。月々の返済負担を抑えながら、大規模なフルリノベーションを実現しやすくなります。ただし、物件の担保価値と個人の信用情報に基づく厳格な審査があり、手続きも複雑になるため、リノベーション会社や金融機関としっかり連携して進める必要があります。
9.1.3 ローンの種類別比較表
種類 | 金利 | 借入可能額 | 返済期間 | 担保 | 向いているケース |
リフォームローン(無担保型) | 高め(年2%~5%程度) | 少なめ(~1,000万円程度) | 短め(~15年程度) | 原則不要 | 部分リノベーション、手続きを早く済ませたい場合 |
リフォームローン(有担保型) | 比較的低め(年1%~3%程度) | 多め(数千万円単位も可) | 長め(~20年程度) | 必要 | 大規模リノベーション、住宅ローン完済済みの場合 |
住宅ローン(リフォーム一体型) | 低い(年0.3%~2%程度) | 多い(物件価格+工事費) | 長い(最長35年) | 必要 | 中古マンション購入と同時にフルリノベーションする場合 |
※金利や条件は金融機関や個人の審査内容によって異なります。あくまで目安としてご参照ください。
9.2 国や自治体の補助金・助成金制度
リノベーションの内容によっては、国や地方自治体から返済不要の補助金・助成金を受けられる可能性があります。これらは予算が限られており、申請期間も決まっているため、早めに情報を集めて準備することが重要です。
多くの制度では、リノベーション会社との契約や工事の着工前に申請が必要となるため、計画段階で利用できる制度がないか必ず確認しましょう。
9.2.1 国の代表的な補助金制度
国が主導する制度は、省エネ、耐震、バリアフリーといった社会的な課題解決に貢献するリノベーションを対象としています。以下に代表的な制度をご紹介します。
子育てエコホーム支援事業(※後継事業含む): 省エネ性能を高めるリフォーム(断熱改修や高効率給湯器の設置など)や、子育て世帯向けの改修(家事負担軽減設備の設置など)に対して補助金が交付されます。若者・子育て世帯は補助額が引き上げられる場合があります。
長期優良住宅化リフォーム推進事業: 住宅の寿命を延ばすための性能向上リフォーム(耐震改修、省エネ改修、劣化対策など)を支援する制度です。補助額が大きい分、求められる性能基準や手続きの要件が厳格なのが特徴です。
介護保険における住宅改修費の支給: 要支援・要介護認定を受けている方が、手すりの設置や段差の解消、洋式便器への取替えといったバリアフリー工事を行う場合に、費用の一部(上限20万円のうち最大9割)が支給されます。
9.2.2 自治体独自の補助金・助成金制度
国だけでなく、お住まいの市区町村が独自に補助金・助成金制度を設けているケースも少なくありません。内容は自治体によって様々ですが、以下のような例があります。
耐震診断・耐震改修工事への助成
省エネ設備(太陽光発電、高断熱窓など)の導入補助
三世代同居・近居のためのリフォーム支援
地域の木材利用を促進するためのリフォーム補助
お住まいの自治体のホームページで「住宅 リフォーム 補助金」などのキーワードで検索するか、役所の担当窓口に問い合わせてみましょう。 補助金に詳しいリノベーション会社であれば、利用可能な制度の調査や申請手続きのサポートをしてくれることもありますので、会社選びの際に相談してみるのも良い方法です。
10. まとめ
マンションリノベーションの費用は、工事範囲や設備のグレードで大きく変動します。理想の住まいを予算内で実現するためには、まず総予算を決め、工事の優先順位をつけることが重要です。後悔しないためには、複数のリノベーション会社から相見積もりを取り、信頼できるパートナーを見つけることが成功の鍵となります。本記事を参考に、計画的なリノベーションを進めましょう。

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