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今すぐ確認!自宅に潜む「アスベスト建材」の見分け方と安全対策

  • 執筆者の写真: anakano30
    anakano30
  • 7月12日
  • 読了時間: 26分
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ご自宅にアスベスト建材が潜んでいるかもしれない、と不安を感じていませんか?この記事を読めば、あなたの家がアスベスト建材を使用している可能性を、製造時期や場所、目視での確認ポイントから見極める方法がわかります。万が一アスベストが見つかった場合の安全な応急対策から専門業者への依頼、除去・封じ込め・囲い込みの選択肢、費用、補助金、法規制、相談窓口まで、自宅のアスベスト問題に適切に対処するための知識とステップが手に入ります。大切な家族の健康を守るため、今すぐ自宅のアスベストリスクを把握し、適切な対策を講じましょう。


1. はじめに 知っておきたいアスベスト建材の知識

ご自宅に、もしもアスベスト建材が潜んでいるとしたら、あなたはどのように対処しますか?

「アスベスト」という言葉は聞いたことがあっても、具体的にどのような建材に使われているのか、自宅のどこにあるのか、そしてもし見つかった場合にどうすれば良いのか、正確に把握している方は少ないかもしれません。しかし、日本の多くの建物、特に1970年代から1990年代にかけて建設された住宅には、残念ながらアスベスト建材が使用されている可能性が指摘されています。

アスベストは、その優れた耐火性や断熱性、耐久性から「奇跡の鉱物」とも呼ばれ、かつては様々な建築材料に広く利用されていました。しかし、その微細な繊維が空気中に飛散し、吸入されることで深刻な健康被害を引き起こすことが明らかになり、現在では使用が全面的に禁止されています。

「まさか自分の家にはないだろう」と考えるのは危険です。アスベスト建材は、私たちの日常生活に密接に関わる場所にひっそりと存在していることがあります。知らず知らずのうちに、ご家族の健康が脅かされる可能性もゼロではありません。

本記事では、そんなアスベスト建材に関する基礎知識から、ご自宅での見分け方、もし発見した場合の安全対策、そして専門家への相談方法まで、あなたが知るべき情報を網羅的に解説します。

大切なご家族の健康と安全を守るためにも、まずはこの「はじめに」で、アスベスト建材に関する基本的な心構えと、なぜこの知識が必要なのかを理解することから始めましょう。正しい知識こそが、あなたとご家族を守るための最初の、そして最も重要な一歩となるはずです。


2. アスベスト建材とは何か その基礎知識

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ご自宅に潜むアスベスト建材について理解を深めるためには、まずアスベストそのものがどのような物質であり、なぜ建材として広く使用されてきたのか、そしてどのような健康被害を引き起こすのかといった基本的な知識を把握することが不可欠です。

2.1 アスベスト 石綿とは

アスベストとは、天然に存在する繊維状の鉱物であり、その和名が「石綿(いしわた、せきめん)」です。アスベスト繊維は、非常に細かく、肉眼では見えにくいほど微細なものが多く、その特性から「奇跡の鉱物」とも呼ばれていました。

アスベストは、主に以下の優れた特性を持っていたため、多種多様な建材に利用されてきました。

  • 耐熱性・耐火性:高温に強く、燃えにくい

  • 断熱性・保温性:熱を伝えにくい

  • 防音性:音を遮る効果がある

  • 電気絶縁性:電気を通しにくい

  • 耐薬品性:酸やアルカリに強い

  • 引張強度:非常に丈夫で、引っ張りに強い

  • 加工性:様々な形に加工しやすい

  • 経済性:安価で大量に入手可能

アスベストにはいくつかの種類がありますが、建材として使用された主なものは以下の3種類です。

種類

特徴

別名

主な用途(過去)

クリソタイル

最も多く使用された種類で、白色アスベストとも呼ばれる。柔軟な繊維が特徴。

白石綿

スレート、セメント製品、ブレーキライニング、ガスケットなど

アモサイト

茶色アスベストとも呼ばれる。繊維が直線的で脆い。

茶石綿

保温材、断熱材、耐火被覆材など

クロシドライト

青色アスベストとも呼ばれる。最も毒性が高いとされ、針状の繊維が特徴。

青石綿

吹付けアスベスト、保温材、耐酸性製品など

これらのアスベストは、その特性から、セメントに混ぜて強度を高めたり、吹き付けて断熱・耐火材としたりするなど、建築物の様々な部位に利用されてきました。


2.2 なぜアスベスト建材が使われたのか

アスベストが建材として広く普及した背景には、その卓越した性能と経済性が挙げられます。

第二次世界大戦後の高度経済成長期において、日本国内では住宅や公共施設、工場などの建設が急速に進みました。この時期、アスベストは「夢の新素材」として注目され、その耐熱性、耐火性、断熱性、防音性、耐久性、そして何よりも非常に安価であるという特性が、建設コストを抑えつつ建物の性能を高める上で非常に都合が良かったのです。

特に、火災に強い建材として、また結露防止や保温材としても重宝され、あらゆる種類の建築物に大量に導入されました。例えば、鉄骨の耐火被覆材として吹き付けられたり、屋根材や外壁材、内装材、配管の保温材など、多岐にわたる建材にアスベストが含有されていました。

しかし、その後にアスベストの健康被害が明らかになり、1970年代から徐々に規制が始まり、2006年には原則としてアスベストの製造、輸入、使用が全面的に禁止されるに至りました。それまでの間に、多くの建物にアスベスト建材が使用されてしまったため、現在もその対策が課題となっています。


2.3 アスベスト建材の健康被害と危険性

アスベストの最も深刻な問題は、その微細な繊維を吸入することによる健康被害です。アスベスト繊維は非常に細かいため、一度吸い込んでしまうと、肺の奥深くにまで到達し、そのまま体外に排出されずに留まり続けることがあります。これにより、長い潜伏期間を経て様々な重篤な疾患を引き起こす可能性があります。

主なアスベスト関連疾患は以下の通りです。

  • 中皮腫(ちゅうひしゅ):肺や消化器などを覆う膜(胸膜、腹膜、心膜など)に発生する悪性腫瘍です。アスベスト曝露との関連性が非常に強く、潜伏期間は30~50年と極めて長いです。

  • 肺がん:肺に発生するがんで、アスベスト曝露によって発症リスクが高まります。喫煙との相乗効果も指摘されています。潜伏期間は15~40年です。

  • 石綿肺(せきめんはい):アスベスト繊維を大量に吸入することで、肺が線維化し、呼吸機能が低下する疾患です。潜伏期間は10年以上です。

  • びまん性胸膜肥厚(びまんせい きょうまくひこう):肺を覆う胸膜が広範囲に厚くなり、呼吸機能が低下する疾患です。

  • 良性石綿胸水(りょうせいせきめんきょうすい):胸膜に炎症が起こり、胸水が溜まる疾患です。

これらの疾患は、アスベスト繊維を吸入してから症状が出るまでに非常に長い潜伏期間があることが特徴です。そのため、過去にアスベストに曝露した自覚がなくても、数十年後に発症するケースが少なくありません。

アスベスト建材が危険となるのは、その繊維が空気中に飛散する可能性がある場合です。通常の状態であれば、アスベストが建材中に固着しているため、直ちに健康被害が生じることは稀です。しかし、建材が劣化したり、破損したり、あるいは解体工事やリフォーム工事などで切断、研磨、破壊されたりする際に、アスベスト繊維が空気中に大量に飛散し、それを吸入してしまうリスクが高まります。

特に、吹き付けアスベストのように繊維がむき出しの状態になっているものや、劣化が著しい建材は、わずかな振動や風でも繊維が飛散しやすいため、極めて危険性が高いとされています。ご自宅にアスベスト建材が潜んでいる可能性がある場合、その状態を正しく評価し、適切な対策を講じることが、ご自身やご家族の健康を守る上で最も重要となります。


3. 自宅に潜むアスベスト建材の見分け方と確認ポイント

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ご自宅にアスベスト建材が潜んでいるかどうかを確認することは、ご家族の健康と安全を守る上で非常に重要です。しかし、アスベストは肉眼で容易に識別できるものではなく、素人判断には限界があります。ここでは、ご自身でできる初期的な確認方法と、より確実な判断のための専門家による調査の重要性について解説します。


3.1 まずは製造時期から確認する

ご自宅が建てられた時期や、大規模な改修が行われた時期を確認することは、アスベスト建材が使用されている可能性を探る上で最初のステップとなります。日本では、アスベストの使用が段階的に規制され、最終的に全面禁止に至りました。

  • 1970年代から1990年代前半:この時期に建てられた建物は、アスベスト建材が多用されている可能性が特に高いです。高度経済成長期において、安価で耐久性、耐火性、断熱性に優れたアスベストが建材として広く普及していました。

  • 2004年10月1日以降:アスベストを重量の0.1%を超えて含有する製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が原則禁止されました。

  • 2006年9月1日以降:アスベストをその重量の0.1%を超えて含有する全ての製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が全面的に禁止されました。

したがって、2006年9月以前に建てられた建物や、それ以前に改修された箇所がある場合は、アスベスト建材が使用されているリスクがあると考えられます。特に、1970年代から1990年代前半に竣工した建物は、より注意深く確認する必要があります。建築図面や竣工図が残っていれば、使用されている建材の種類が記載されている場合もありますので、確認してみましょう。


3.2 アスベスト建材が使われやすい場所と種類

アスベスト建材は、その優れた特性から建物の様々な場所で利用されてきました。特に、耐火性や断熱性が求められる箇所、あるいは強度や軽量性が重視される箇所に多く見られます。以下に、一般住宅でアスベスト建材が使われやすい場所と、具体的な建材の種類、その特徴をまとめました。

場所

主なアスベスト建材の種類

特徴・注意点

屋根

スレート瓦(コロニアル、カラーベストなど)

セメントにアスベストを混ぜて強度を高めた瓦。多くが波形または平形。塗装の剥がれやひび割れがあると飛散リスクが高まる

波形スレート

工場や倉庫の屋根によく見られるが、一般住宅の車庫や物置の屋根にも使用されることがある。


外壁

窯業系サイディング(一部)

セメント質と繊維質を主原料とする外壁材。初期の製品にはアスベストが混入しているものがある。

スレート板

屋根材と同様に、外壁材としても使用されることがある。


モルタル外壁の下地材(ラスボード)

モルタル壁の補強材としてアスベスト含有のラスボードが使われていることがある。


天井

ロックウール吸音板(一部)

吸音・断熱目的で使われる天井材。表面に穴が開いているものや、繊維が見えるものがある。

石膏ボード(一部)

耐火性向上のため、初期の石膏ボードにはアスベストが含有されている場合がある。


吹付けアスベスト

耐火・断熱・吸音目的で天井や壁に直接吹付けられたもの。最も飛散しやすいアスベスト建材。ボロボロと崩れやすい。


石膏ボード(一部)

天井と同様に、壁材としても使用されることがある。

ケイカル板(珪酸カルシウム板)

耐火性・断熱性に優れる。浴室や台所の壁、軒天などに使われることが多い。


ビニル床タイル、クッションフロア(一部)

床材の裏打ち材や接着剤にアスベストが使われていることがある。

レベル調整材(アスベスト含有)

床の不陸調整に使用されるモルタル状の材料。


設備周辺・配管

アスベスト含有保温材

ボイラー、給湯器、配管などに巻かれた保温材。白い綿状や灰色の固形物。

アスベスト含有パッキン、ガスケット

配管の接続部や機器の隙間を埋めるために使用される。


その他

ジョイントシート

ボードの継ぎ目に使用される補強材。

これらの建材は、アスベストを含有している可能性があるというだけであり、必ずしも含有しているわけではありません。同じ種類の建材でも、製造時期やメーカーによって含有の有無が異なります。安易に触ったり、切断したりしないようにしてください。


3.3 目視でアスベスト建材を見分けるポイント

素人による目視での判断は非常に難しく、あくまで可能性を探るための参考情報に過ぎません。しかし、以下のような特徴が見られる場合は、アスベスト建材である可能性を疑い、専門家への相談を検討するきっかけになります。


3.3.1 特徴的な外観や質感

  • 繊維状の物質が見える:特に破損箇所や切断面から、白っぽい、あるいは灰色の繊維が露出している場合。

  • 脆い、ボロボロと崩れる:吹付けアスベストなどは、経年劣化により表面が剥がれたり、触ると簡単に崩れたりすることがあります。

  • 特定のパターンや色合い:古いスレート材やサイディングには、独特の模様や色合いが見られることがあります。

  • 表面のざらつきや粉っぽさ:アスベスト含有建材は、表面がざらついていたり、粉を吹いたような状態になっていることがあります。


3.3.2 製品の表示や刻印

建材の裏側や見えにくい場所に、メーカー名、製品名、型番などが記載されている場合があります。これらの情報を基に、インターネットで検索することで、アスベスト含有の有無に関する情報を得られることがあります。ただし、古い建材にはアスベスト含有の表示がないことがほとんどです。また、表示を確認するために建材を剥がしたり、無理に動かしたりすることは、アスベストの飛散リスクを高めるため絶対に避けてください


3.3.3 破損や劣化の状況

建材にひび割れ、欠け、剥がれなどの破損が見られる場合、内部のアスベスト繊維が露出している可能性があります。特に、その破損箇所から粉じんが確認できる場合は、非常に危険な状態であるため、絶対に近づかず、触れないようにしてください。


3.4 素人判断の限界と専門家による調査の重要性

上記で述べた目視での確認方法は、あくまでアスベスト建材の可能性を探るための初期的な目安に過ぎません。なぜなら、アスベスト繊維は非常に細かく、肉眼では見分けがつかないからです。また、アスベストは他の建材と混ざって使用されていることが多く、見た目だけで判断することは極めて困難です。

素人判断による誤った認識は、無用な不安を招いたり、逆に危険な建材を見過ごしたりするリスクがあります。特に、アスベスト建材を誤って破損させてしまうと、飛散したアスベスト繊維を吸い込み、健康被害につながる恐れがあります。

ご自宅にアスベスト建材が使用されている疑いがある場合や、正確な情報を知りたい場合は、必ずアスベスト調査の専門業者に依頼することが最も重要です。専門業者による調査では、以下のようなプロセスで正確な判断が行われます。


3.4.1 専門家による調査方法

  1. 目視調査:専門知識を持つ調査員が、建物の構造や使用されている建材の種類、劣化状況などを詳細に確認します。

  2. サンプリング調査:アスベスト含有の疑いがある建材の一部を、飛散防止措置を講じた上で採取します。

  3. 分析調査:採取した建材サンプルを専門の分析機関に送り、X線回折装置や偏光顕微鏡などを用いてアスベストの有無や種類、含有率を正確に分析します。

これらの専門的な調査を通じて、ご自宅のアスベストリスクを正確に把握し、適切な対策を講じることが可能になります。ご自身やご家族の安全のためにも、少しでも不安を感じたら、迷わず専門家へ相談するようにしてください。


4. アスベスト建材が見つかった場合の安全対策と対応

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4.1 絶対にやってはいけないこと

ご自宅にアスベスト建材が見つかった、あるいはその可能性がある場合、最も重要なのはアスベスト繊維の飛散を絶対に防ぐことです。アスベスト繊維は非常に細かく、一度空気中に飛散すると長時間浮遊し、吸い込むことで健康被害のリスクが高まります。そのため、以下の行為は絶対に避けてください。

  • アスベスト建材に触れる、削る、切る、穴を開けるなどの加工をすること: 物理的な刺激は、建材内部のアスベスト繊維を剥離させ、飛散させる直接的な原因となります。

  • 掃除機で吸い取る、ほうきで掃くなどの清掃を行うこと: 一般的な掃除機やほうきは、アスベスト繊維をさらに巻き上げ、広範囲に飛散させてしまいます。特に掃除機の排気口からは、吸い込んだ繊維がそのまま排出される可能性があり非常に危険です。

  • 高圧洗浄機を使用すること: 高圧の水流は建材を破壊し、大量のアスベスト繊維を広範囲に飛散させるリスクがあります。

  • 素人判断で解体・除去作業を行うこと: アスベストの除去作業には専門的な知識、技術、専用の防護具、適切な飛散防止措置、廃棄方法が必要です。これらを欠いた状態での作業は、作業者本人だけでなく、家族や近隣住民にも深刻な健康被害をもたらす可能性があります。

アスベスト建材は、適切な知識と対策なしに扱うと極めて危険です。専門家による正確な判断と適切な処置を待つことが、ご自身とご家族の安全を守る唯一の方法です。


4.2 アスベスト飛散を防ぐための応急対策

アスベスト建材の存在が疑われる、または確認された場合でも、すぐに専門業者による本格的な対策が取れないことがあります。そのような場合に、一時的にアスベストの飛散を最小限に抑えるための応急対策を講じることが重要です。ただし、これらはあくまで一時的な措置であり、根本的な解決にはなりません。

  • 静かにその場を離れる: まずはアスベスト建材のある場所から速やかに、そして静かに離れてください。不要な動きは空気の流れを作り、繊維を巻き上げる可能性があります。

  • 立ち入り禁止措置を講じる: 該当箇所に人が近づかないよう、ロープやテープで囲い、「立ち入り禁止」などの表示を設置します。特に小さなお子様やペットが近づかないよう注意してください。

  • 換気を止める: 換気扇やエアコンを止め、窓やドアを閉めることで、アスベスト繊維が他の部屋や屋外に広がるのを防ぎます。

  • むやみに触らない: 損傷したアスベスト建材には絶対に触れないでください。

  • ビニールシートなどで覆う: 損傷箇所や粉塵が確認できる場合は、厚手のビニールシートや養生シートで静かに覆い、テープでしっかりと固定して飛散を抑制します。この際、空気中に粉塵を巻き上げないよう、ゆっくりと慎重に作業してください。

  • 濡れ雑巾で拭く(粉塵がある場合): もし床などにアスベストの粉塵が落ちているように見える場合は、乾いた状態での清掃は厳禁です。静かに濡らした雑巾やウェットシートで拭き取ります。拭き取った雑巾はビニール袋に入れ、口をしっかり縛って密閉し、専門業者に処理を依頼するまで保管してください。

  • 使い捨ての防護具を着用する: やむを得ず応急処置を行う場合は、使い捨ての防護服、手袋、そして防じんマスク(国家検定区分DS2以上のもの)を着用し、作業後はこれらを適切に処分してください。

これらの応急対策は、あくまで専門業者による本格的な調査や対策が始まるまでの間に、アスベストの飛散リスクを一時的に低減させるためのものです。応急対策後は速やかに専門業者に連絡し、指示を仰ぐようにしてください。


4.3 アスベスト専門業者への相談と依頼

アスベスト建材が見つかった、あるいはその可能性が高い場合、最も重要かつ確実な対応はアスベスト専門業者に相談し、適切な調査と対策を依頼することです。専門業者でなければ、アスベストの正確な種類や含有状況の判断、そして安全かつ確実に除去・処理を行うことはできません。


4.3.1 専門業者の役割と選定のポイント

アスベスト専門業者は、以下のような一連のプロセスを安全かつ適切に実施します。

  • 事前調査・分析: 建材のサンプリングを行い、アスベストの有無や種類、含有率を専門機関で分析します。

  • 対策計画の立案: 調査結果に基づき、最も適切な除去・封じ込め・囲い込み工法や作業計画を提案します。

  • 届出・申請代行: 労働基準監督署や自治体への各種届出・申請を代行します。

  • 安全な施工: 飛散防止対策を徹底した上で、専門の技術者が除去・封じ込め・囲い込み作業を行います。

  • 最終確認・廃棄: 作業後の清掃やアスベスト繊維の残留確認を行い、アスベスト廃棄物を法令に基づき適正に処理します。

信頼できる専門業者を選ぶためには、以下の点を確認しましょう。

確認ポイント

詳細

実績と経験

アスベスト調査・除去の実績が豊富か、類似の建材や構造での経験があるかを確認しましょう。

資格・許可

「特定建築物石綿含有建材調査者」の資格を持つ調査員が在籍しているか、「石綿作業主任者」が現場に配置されるかを確認しましょう。また、建設業許可や産業廃棄物収集運搬業許可など、必要な許認可を得ているかも重要です。

見積もりの透明性

詳細な見積もりを提示し、費用内訳が明確かを確認しましょう。不明瞭な項目が多い業者は避けるべきです。

説明の丁寧さ

アスベストに関するリスク、作業内容、費用、工期などについて、素人にも分かりやすく丁寧に説明してくれるかを確認しましょう。

アフターフォロー

作業後の清掃や確認、万が一の事態への対応など、アフターフォロー体制が整っているかを確認しましょう。

複数の業者から見積もりを取り、比較検討することで、適正な価格で信頼できる業者を見つけることができます。


4.4 アスベスト除去 封じ込め 囲い込みの選択肢

アスベスト対策には、主に「除去」「封じ込め」「囲い込み」の3つの工法があります。それぞれの工法にはメリット・デメリットがあり、建材の種類、劣化状況、建物の使用状況、予算、将来の計画などを考慮して、専門家と相談の上で最適な方法を選択することが重要です。


4.4.1 除去工法(アスベスト撤去)

  • 概要: アスベスト含有建材を完全に撤去し、建物の敷地外へ搬出する工法です。最も確実なアスベスト対策であり、将来にわたるアスベストの飛散リスクをゼロにできます。

  • メリット: 根本的な解決となり、アスベストによる健康被害のリスクが完全に排除されます。将来の改修や解体時にもアスベスト対策を考慮する必要がなくなります。

  • デメリット: 他の工法に比べて費用が高額になりがちです。また、工事期間が長く、作業中は建物の使用が制限されることがあります。飛散防止対策を厳重に行う必要があります。

  • 適しているケース: 建材の劣化が著しく、飛散リスクが高い場合。建物の解体予定がある場合。将来的にアスベストに関する懸念を完全に排除したい場合。


4.4.2 封じ込め工法(アスベスト固化)

  • 概要: アスベスト含有建材の表面に特殊な薬剤を塗布して固め、アスベスト繊維の飛散を抑制する工法です。アスベスト自体は残りますが、繊維が空気中に放出されるのを防ぎます。

  • メリット: 除去工法に比べて費用が安価で、工期も短く済みます。建材を撤去しないため、建物の構造に影響を与えにくいです。

  • デメリット: アスベスト自体は建物内に残るため、将来的に建材が劣化したり、物理的な衝撃を受けたりすると、再び飛散するリスクがあります。定期的な点検やメンテナンスが必要です。

  • 適しているケース: アスベスト建材の劣化が比較的軽度で、すぐに除去が難しい場合。予算や工期に制約がある場合。


4.4.3 囲い込み工法(アスベスト被覆)

  • 概要: アスベスト含有建材を、新たな建材(石膏ボード、金属板など)で覆い隠す工法です。アスベスト繊維の飛散を物理的に遮断します。

  • メリット: 除去工法に比べて費用が安価で、工期も短く済みます。建材を撤去しないため、建物の構造に影響を与えにくいです。

  • デメリット: アスベスト自体は建物内に残るため、将来的に覆った建材が劣化したり、物理的な衝撃を受けたりすると、再び飛散するリスクがあります。建物の重量が増加する可能性があり、建物の構造計算に影響を与える場合があります。定期的な点検やメンテナンスが必要です。

  • 適しているケース: アスベスト建材の劣化が比較的軽度で、すぐに除去が難しい場合。予算や工期に制約がある場合。建物の外観や機能を変えずにアスベスト対策を行いたい場合。

各工法の選択は、専門家による詳細な現地調査と診断に基づいて行われるべきです。安易な自己判断は避け、必ずアスベスト専門業者と十分に相談してください


4.5 アスベスト対策にかかる費用と補助金制度

アスベスト対策にかかる費用は、建材の種類、アスベストの量、劣化状況、建物の規模、選択する工法(除去、封じ込め、囲い込み)、作業の難易度などによって大きく変動します。一般的に高額になる傾向があるため、事前の情報収集と計画が重要です。


4.5.1 アスベスト対策費用の目安

以下の費用はあくまで目安であり、個別の状況によって大きく異なります。

項目

費用の目安

備考

アスベスト事前調査費用

数万円~十数万円程度

建物の規模や調査範囲による。分析費用も含む。

アスベスト除去費用(吹き付けアスベスト)

1平方メートルあたり2万円~8万円程度

最も高額になる傾向がある。作業環境の隔離や厳重な飛散防止対策が必要なため。

アスベスト除去費用(アスベスト含有成形板)

1平方メートルあたり3千円~1万円程度

波形スレート、サイディング材、Pタイルなど。比較的安価だが、量が多いと高額に。

アスベスト封じ込め・囲い込み費用

除去費用の約3割~7割程度

アスベストを撤去しないため、除去よりは安価だが、長期的なメンテナンス費用も考慮する必要がある。

その他費用

足場設置費用、仮設費用、産業廃棄物処理費用、清掃費用など

対策費用に加えて発生する。特に廃棄物処理費用は高額になる傾向がある。

正確な費用を知るためには、必ず複数の専門業者から詳細な見積もりを取ることが不可欠です。


4.5.2 アスベスト対策に関する補助金制度

アスベスト対策は個人の負担が大きいため、国や地方自治体(都道府県・市区町村)が補助金制度を設けている場合があります。これらの補助金は、アスベストの事前調査費用や除去・改修費用の一部を補助するものです。


4.5.2.1 補助金制度の主な特徴
  • 対象となる建物: 主に個人の住宅や中小企業の建物が対象となることが多いです。共同住宅や特定用途の建物に限定される場合もあります。

  • 補助対象となる費用: アスベスト含有建材の調査費用、除去費用、封じ込め・囲い込み費用などが対象となります。

  • 補助率・上限額: 費用の一部(例:1/3、1/2など)や、上限額が定められていることがほとんどです。

  • 申請条件: 事前調査の実施、専門業者による施工、所定の要件を満たす建物であることなど、細かな条件が設定されています。

  • 申請期間: 予算には限りがあり、申請期間が定められていることが多いため、早めの情報収集と申請準備が必要です。


4.5.2.2 補助金情報の入手先
  • 各地方自治体(都道府県・市区町村)の担当窓口: 環境部局や建築指導課などが担当していることが多いです。各自治体のウェブサイトで「アスベスト補助金」「石綿補助金」などのキーワードで検索してみてください。

  • 環境省のウェブサイト: アスベストに関する国の政策や情報が掲載されています。

  • 国土交通省のウェブサイト: 建築物のアスベスト対策に関する情報が掲載されています。

  • アスベスト専門業者: 補助金制度に詳しい業者であれば、情報提供や申請手続きのアドバイスをしてくれる場合があります。

補助金制度は自治体によって内容が大きく異なります。ご自身がお住まいの自治体の制度を必ず確認し、申請条件や必要書類、申請期間などを事前に把握しておくことが重要です。不明な点があれば、遠慮なく自治体の担当窓口に問い合わせましょう。


5. アスベストに関する法規制と相談窓口

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アスベスト建材の存在が明らかになった場合、または解体・改修工事を計画する際には、関係する法規制を理解し、適切な窓口に相談することが極めて重要です。アスベストに関する法規制は、国民の健康保護と環境保全のために年々強化されており、違反した場合には罰則が科されることもあります。


5.1 アスベスト関連の主な法規制と義務

日本におけるアスベスト関連の法規制は多岐にわたり、建築物の解体・改修工事を行う事業者だけでなく、建物の所有者にも義務が課せられています。特に重要なのは、2022年4月1日から施行されたアスベスト含有建材の事前調査の義務化です。これにより、一定規模以上の建築物等の解体・改修工事を行う際には、工事の大小にかかわらず、アスベストの有無を事前に調査することが義務付けられました。

主な法規制と、それぞれが定める義務は以下の通りです。

法規制名

主な目的と義務

対象

大気汚染防止法

アスベスト飛散による周辺環境への汚染防止。

特定建築材料(アスベスト含有建材)の除去等工事を行う際の事前の届出義務、作業基準の遵守、作業中の飛散防止対策、解体等工事の事前調査結果の掲示義務など。

解体・改修工事の事業者、建物の所有者

労働安全衛生法


(石綿障害予防規則)

アスベストばく露による労働者の健康被害防止。

アスベスト含有建材の除去等作業における作業計画の策定、作業主任者の選任、特別教育の実施、保護具の使用、作業場所の隔離、廃棄物の適正処理など。

解体・改修工事の事業者

建築基準法

アスベスト含有建材の使用制限(過去)。

アスベスト除去等工事における建築物の解体工事の届出(一定規模以上)など。

建物の所有者、解体工事の事業者

廃棄物の処理及び清掃に関する法律


(廃棄物処理法)

アスベスト廃棄物の適正な処理と不法投棄の防止。

アスベスト含有廃棄物の特別管理産業廃棄物としての適切な分別、梱包、運搬、処分方法の遵守。

アスベスト廃棄物を排出する事業者

特に、建築物等の解体・改修工事を行う際には、工事規模や請負金額にかかわらず、アスベストの事前調査が義務付けられています。この調査は、厚生労働大臣が定める講習を修了した「石綿含有建材調査者」が行うことが原則とされており、その結果は工事現場に掲示する義務があります。違反した場合には、罰則が科せられる可能性もありますので、必ず専門家による調査を実施してください。


5.2 どこに相談すればよいか

アスベストに関する疑問や問題が生じた場合、適切な相談窓口を選ぶことが重要です。状況に応じて、相談すべき機関が異なります。


5.2.1 自治体(市区町村、都道府県)

各自治体には、アスベストに関する相談窓口が設けられています。主に、環境部局や建築指導課が担当していることが多いです。

  • 解体・改修工事の届出: 大気汚染防止法に基づく特定建築材料の除去等工事の届出に関する相談や手続き。

  • 地域の条例: 自治体独自の条例や補助金制度に関する情報提供。

  • 一般の健康相談: 地域住民向けのアスベストに関する健康相談窓口を紹介。


5.2.2 労働基準監督署

労働基準監督署は、労働者の安全と健康を守るための機関です。主に、アスベスト除去作業を行う事業者や労働者からの相談を受け付けています。

  • 石綿障害予防規則に関する指導: 作業計画の策定、作業主任者の選任、特別教育の実施など、作業現場におけるアスベスト対策に関する相談。

  • 労働者の健康管理: アスベストばく露の可能性がある労働者の健康診断や健康管理に関する相談。


5.2.3 環境省・国土交通省

国の機関である環境省や国土交通省は、アスベストに関する政策立案や情報提供を行っています。直接的な個別の相談は難しい場合もありますが、公式ウェブサイトで最新の法規制やガイドライン、Q&Aなどの情報を提供しています。

  • 環境省: 大気汚染防止法に関する情報、アスベスト廃棄物の処理に関する情報。

  • 国土交通省: 建築基準法に関する情報、建築物のアスベスト対策に関する情報。


5.2.4 アスベスト専門業者団体・専門家

アスベストの調査や除去、対策工事を専門とする業者や、それらの団体も重要な相談先です。

  • 日本アスベスト調査診断協会(JADA): 石綿含有建材調査者の登録情報や、調査に関する相談。

  • 一般社団法人日本解体工事協会など: 信頼できる解体業者やアスベスト除去業者の紹介。

  • 建築士事務所、リフォーム会社: 建物のアスベスト調査や改修計画に関する専門的なアドバイス。

これらの専門家は、具体的な建物の状況に応じた調査方法、対策工法の提案、費用見積もりなど、実践的な情報を提供してくれます。


5.2.5 健康相談窓口

アスベストによる健康被害が懸念される場合や、健康診断を受けたい場合は、以下の窓口に相談できます。

  • 労災病院・地域保健センター: アスベスト関連疾患の診断や治療、健康管理に関する相談。

  • 労災補償相談窓口: アスベスト関連疾患による労災認定や補償に関する相談。

ご自身の状況に合わせて、適切な窓口を選び、早めに相談することが、安全と健康を守る上で最も重要です。


6. まとめ

アスベスト建材は、かつて広く使われ、現在も多くの建物に潜む危険性があります。その見分け方やリスクを知ることは重要ですが、目視だけでは判断が難しく、安易な自己判断は危険を伴います。ご自宅にアスベスト建材の可能性があると感じたら、決して触ったり、解体したりせず、速やかに専門業者や行政の相談窓口に連絡することが、ご自身とご家族の健康を守るための最善策です。適切な調査と対策を通じて、安心で安全な住環境を確保しましょう。

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