初めてのオフィス内装解体|原状回復工事の流れからアスベスト調査まで全手順を徹底解説
- seira murata
- 8月15日
- 読了時間: 22分

オフィスの移転や退去で内装解体が必要になったものの、何から始めればよいか分からずお困りではありませんか。本記事では、原状回復との違いといった基礎知識から、工事の全手順、費用相場、必須のアスベスト調査、優良な業者の選び方まで徹底解説します。オフィス内装解体を成功させる鍵は、信頼できる業者と正しい手順を理解することです。この記事を読めば、初めての方でも安心して工事を進めるための全てが分かります。
1. オフィス内装解体とは?原状回復工事との違いを理解しよう
オフィスの移転や閉鎖に伴い必要となる「内装解体」。しかし、類似した言葉である「原状回復工事」との違いが分からず、何から手をつければ良いか戸惑う担当者の方も少なくありません。適切な工事を進めるためには、まずこれらの言葉の意味と関係性を正しく理解することが第一歩です。この章では、オフィス内装解体の基本について分かりやすく解説します。
1.1 原状回復義務と内装解体工事の関係
オフィスを借りる際には、賃貸借契約書に基づいて「原状回復義務」が発生します。これは、退去時にオフィスを「借りたときの状態」に戻して貸主(オーナー)に返還する義務のことです。入居後に行った内装工事や設置した間仕切り、造作などをすべて撤去し、入居前の状態に戻す必要があります。
そして、この原状回復義務を果たすために行われる具体的な作業が「内装解体工事」です。つまり、内装解体工事は原状回復の一部であり、契約書で定められた状態に戻すための手段と言えます。どこまで元に戻す必要があるか(例えば、入居時の内装が残った状態か、あるいは建物の骨格だけを残すスケルトン状態か)は、すべて賃貸借契約書に記載されているため、工事を検討する前に必ず確認しましょう。
1.2 内装解体の種類 スケルトン工事とA工事・B工事・C工事
オフィス内装解体には、解体の程度や工事の責任範囲によっていくつかの種類があります。業者との打ち合わせをスムーズに進めるためにも、基本的な用語を覚えておきましょう。
まず、解体の程度を表す言葉として「スケルトン工事(スケルトン解体)」があります。これは、建物の構造躯体(柱・梁・床・壁など)以外の内装材や設備をすべて撤去し、コンクリートがむき出しの状態に戻す工事を指します。
また、オフィスビルの工事では、誰が費用を負担し、誰が業者に発注するかに基づいて、工事が「A工事」「B工事」「C工事」の3つに区分されます。原状回復工事は、主に入居時にC工事で設置したものを撤去し、B工事で変更した部分を元に戻す作業が中心となります。この区分を理解していないと、予期せぬ費用負担やトラブルの原因となるため、注意が必要です。
工事区分 | 工事内容の例 | 発注者 | 費用負担者 |
A工事 | ビル共用部(エレベーター、廊下、外壁など)の工事、ビル全体の設備工事 | ビルオーナー(貸主) | ビルオーナー(貸主) |
B工事 | テナント専有部だが、ビル全体の設備(空調、防災、防水など)に関わる工事 | ビルオーナー(貸主) ※業者はオーナー指定 | テナント(借主) |
C工事 | テナント専有部内の内装工事(間仕切り設置、壁紙張替え、造作物の設置など) | テナント(借主) ※業者はテナントが選定 | テナント(借主) |
2. オフィス内装解体工事の全手順 7つのステップで解説

オフィスの内装解体工事は、移転や退去の際に避けては通れない重要なプロセスです。しかし、初めて担当する方にとっては、何から手をつければ良いのか分からず不安に感じることも多いでしょう。ここでは、オフィス内装解体の全手順を7つのステップに分け、計画から引き渡しまでを分かりやすく解説します。
2.1 ステップ1 賃貸借契約書の確認とビル管理会社への連絡
内装解体工事の第一歩は、入居時に締結した賃貸借契約書の内容を再確認することから始まります。特に「原状回復義務」に関する条項は重要で、どこまで解体・修繕する必要があるのか(原状回復の範囲)が定められています。
確認すべき主なポイントは以下の通りです。
原状回復の範囲(スケルトン渡し、入居時状態への復旧など)
工事区分の指定(A工事・B工事・C工事の区分)
解体業者の指定の有無
工事可能な曜日や時間帯の制限
契約書の内容を確認したら、速やかにビル管理会社へ退去の意向と内装解体工事を行う旨を連絡しましょう。この段階で工事のルールや手続きの流れ、必要書類などをヒアリングしておくことで、後の工程がスムーズに進みます。
2.2 ステップ2 内装解体業者への見積もり依頼と比較検討
次に、内装解体工事を依頼する業者を選定します。ビル管理会社から指定業者がある場合はその業者に依頼しますが、指定がない場合は複数の業者から見積もりを取り、比較検討することが一般的です。
最低でも3社程度の業者から相見積もりを取得することをお勧めします。費用だけでなく、実績や担当者の対応、提案内容などを総合的に比較することで、信頼できるパートナーを見つけることができます。見積もり依頼の際は、賃貸借契約書で確認した原状回復の範囲や工事条件を正確に伝えることが、精度の高い見積もりを得るための鍵となります。
2.3 ステップ3 現地調査と打ち合わせ
見積もりを依頼した業者と日程を調整し、現地調査を実施します。現地調査では、業者の担当者が実際にオフィスの状況を確認し、より正確な見積もりを作成します。
現地調査で確認される主な項目は以下の通りです。
解体範囲と対象物の確認(壁、床、天井、造作家具など)
天井裏や壁の内部構造
搬出経路の確認(エレベーターの有無、養生の範囲)
アスベスト含有建材の有無の目視確認
この際、オフィスの図面(建築図、設備図など)を準備しておくと、打ち合わせが円滑に進みます。解体範囲について不明な点や要望があれば、この時点で担当者にしっかりと伝え、認識の齟齬がないようにしましょう。
2.4 ステップ4 契約と工事スケジュールの確定
見積もり内容と現地調査の結果を基に、依頼する業者を1社に絞り込み、正式に契約を締結します。契約書にサインする前には、工事内容、金額、工期、支払い条件、保証内容などの項目を隅々まで確認し、疑問点は必ず解消しておきましょう。
契約後は、退去日から逆算して詳細な工事スケジュールを確定させます。ビル管理会社が指定する工事可能な時間帯や、他テナントの迷惑にならない時間帯を考慮して、無理のない工程を組むことが重要です。ライフライン(電気、ガス、水道、通信回線)の停止手続きのタイミングについても、この段階で確認しておくと安心です。
2.5 ステップ5 関係各所への届出と近隣への挨拶
内装解体工事の規模や内容によっては、行政への届出が必要になる場合があります。これらの手続きは解体業者が代行してくれることがほとんどですが、発注者としてどのような届出が必要か把握しておくことが大切です。
主な届出には以下のようなものがあります。
届出の種類 | 概要 | 届出義務者 |
建設リサイクル法に基づく届出 | 床面積の合計が80㎡以上の解体工事で必要。 | 発注者(業者代行が一般的) |
石綿障害予防規則に基づく届出 | アスベスト含有建材の除去作業を行う場合に必要。 | 元請業者 |
道路使用許可申請 | 工事車両を公道に駐車する場合や、資材の搬出入で道路を一時的に使用する場合に必要。 | 元請業者 |
また、工事中の騒音や振動で迷惑をかける可能性があるため、同じフロアや上下階のテナントへの事前挨拶は必須です。ビル管理会社と相談の上、工事スケジュールを記載した挨拶状と粗品を持参して、工事開始の1週間前までには済ませておきましょう。丁寧な対応が、後のトラブルを未然に防ぎます。
2.6 ステップ6 内装解体工事の実施と産業廃棄物処理
いよいよ内装解体工事の開始です。工事は一般的に以下の流れで進められます。
養生:共用部(エレベーター、廊下など)や解体しない部分を、傷や汚れから守るためにシートやボードで保護します。
内装材の撤去:天井、壁、床の順に内装材を解体・撤去していきます。
分別・搬出:解体で発生した廃材を木くず、金属くず、石膏ボードなどに分別し、トラックで搬出します。
清掃:解体工事で発生した粉塵などを清掃し、現場をきれいにします。
解体工事で発生した廃棄物は「産業廃棄物」として、法律に基づき適正に処理されなければなりません。不法投棄などのトラブルを避けるためにも、業者がマニフェスト(産業廃棄物管理票)を適切に発行・運用しているかを確認することが重要です。
2.7 ステップ7 工事完了の確認と引き渡し
工事が完了したら、発注者、解体業者、ビル管理会社の三者立ち会いのもと、最終確認を行います。契約書や仕様書通りに工事が完了しているか、傷や汚れが残っていないかなどを細かくチェックします。
特に以下の点を確認しましょう。
契約で定めた原状回復の範囲がすべて完了しているか
床・壁・天井などに不要な傷や汚れがないか
廃棄物が残置されていないか
清掃は行き届いているか
すべての確認が完了し、問題がなければ工事完了となり、ビル管理会社へオフィスを明け渡します。最後に、解体業者から産業廃棄物が適正に処理されたことを証明するマニフェストの写し(E票)を受け取り、大切に保管してください。これで内装解体工事に関するすべての工程が終了となります。
3. オフィス内装解体の費用相場 坪単価と内訳を解説

オフィス移転や閉鎖に伴う内装解体工事で、最も気になるのが「費用」ではないでしょうか。ここでは、オフィス内装解体の費用相場を坪単価や内訳を交えながら詳しく解説します。事前に相場感を把握しておくことで、業者から提示された見積もりが適正かどうかを判断する材料になります。
3.1 坪単価で見る費用相場
オフィス内装解体の費用は、解体範囲や建物の構造によって大きく変動しますが、一般的には坪単価で算出されます。解体範囲は、壁や床の表層部分のみを解体する「原状回復工事」と、建物の骨組み(躯体)以外をすべて解体する「スケルトン工事」に大別されます。
以下に、解体の種類ごとの坪単価の目安をまとめました。ただし、これはあくまで一般的な相場であり、アスベストの有無、搬出経路、夜間工事の必要性などの条件によって費用は変動します。
解体の種類別 坪単価の目安 | ||
解体の種類 | 坪単価の目安 | 主な工事内容 |
内装・表層解体(原状回復) | 1万円~3万円程度 | 床材、壁紙(クロス)、天井材、軽微な造作物の撤去など |
スケルトン解体 | 3万円~8万円程度 | 内装材に加え、壁や天井の下地、間仕切り壁、電気配線、空調設備、給排水管などの撤去 |
正確な費用を知るためには、必ず複数の解体業者から見積もりを取り、比較検討することが重要です。
3.2 オフィス内装解体費用の主な内訳
内装解体費用の見積書は、主に「解体工事費」「産業廃棄物処理費」「諸経費」の3つの項目で構成されています。それぞれの内容を理解することで、見積もりの透明性が高まり、業者との交渉もスムーズに進められます。
3.2.1 解体工事費(仮設・養生費含む)
解体工事費は、実際に内装材や設備を解体・撤去する作業員の費用や、工事に必要な準備費用が含まれます。これは総額の大部分を占める中心的な費用です。
内装材の解体・撤去費:壁、天井、床などを解体する人件費や手間賃です。
造作物・設備の撤去費:パーテーション、造作家具、照明器具、空調設備などを撤去する費用です。
仮設費:工事用の足場や仮設電気・水道などを設置する費用です。
養生費:エレベーターや廊下といった共用部分や、残置物を傷つけないように保護するためのシートやボードを設置する費用です。ビル管理会社から養生の仕様を指定されることもあります。
3.2.2 産業廃棄物処理費
解体工事によって発生した石膏ボード、木くず、金属くず、ガラスなどの産業廃棄物を、法律に則って適正に処分するための費用です。廃棄物の種類と量によって費用が算出されます。不法投棄などのトラブルを避けるため、業者が「産業廃棄物収集運搬業許可」を保有しているか、マニフェスト(産業廃棄物管理票)を発行してくれるかを必ず確認しましょう。
3.2.3 諸経費
現場管理費や事務手数料、書類作成費、近隣への挨拶回りにかかる費用など、工事全体を管理・運営するために必要な経費です。一般的に、工事費総額の5%~10%程度が目安とされています。見積書に「諸経費一式」としか記載されていない場合は、どのような費用が含まれているのか内訳を確認することをお勧めします。
3.3 オフィス内装解体の費用を安く抑える3つのコツ
適正価格で質の高い工事を行うためには、費用を抑える工夫も大切です。ここでは、誰でも実践できる3つのコツをご紹介します。
複数の業者から相見積もりを取る
最も基本的かつ重要なポイントです。最低でも3社から見積もりを取得し、金額だけでなく、工事内容や担当者の対応などを総合的に比較検討しましょう。業者によって得意な工事や価格設定が異なるため、相見積もりを取ることで適正な市場価格を把握できます。
不要なオフィス家具・備品を事前に処分する
解体業者にオフィス家具やOA機器の処分を依頼すると、産業廃棄物として扱われ費用が高くなる場合があります。事前にリサイクルショップや不用品買取業者に売却したり、専門の回収業者に依頼したりすることで、廃棄物の量を減らし、処分費用を削減できる可能性があります。
分離発注を検討する
解体工事、電気設備の撤去工事、廃棄物処理などをそれぞれ専門の業者に直接発注する方法です。元請け業者の中間マージンを削減できるため、総額を抑えられる可能性があります。ただし、各業者との調整や管理をすべて自分で行う必要があり、手間と専門知識が求められるため、スケジュールに余裕がある場合に検討すると良いでしょう。
4. 【重要】オフィス内装解体で必須のアスベスト調査とは

オフィス内装解体を進める上で、現在最も重要視されているのがアスベスト(石綿)の事前調査です。法改正により、解体・改修工事におけるアスベスト調査は発注者の責務となりました。知らなかったでは済まされない重要な工程ですので、ここでしっかりと理解しておきましょう。
4.1 アスベスト(石綿)調査の義務化について
2022年4月1日から、大気汚染防止法および石綿障害予防規則の改正により、建物の解体・改修工事を行う際には、アスベストの有無を事前に調査することが原則として義務付けられました。これは、オフィスの内装解体工事も例外ではありません。工事の規模や請負金額の大小にかかわらず、すべての工事が対象となります。
この法改正は、解体工事に伴うアスベストの飛散を防止し、作業員や周辺環境への健康被害を防ぐことを目的としています。調査の結果は、解体業者が作業員に周知するとともに、現場への掲示が義務付けられています。また、床面積の合計が80㎡以上の解体工事などの場合は、調査結果を電子システムで国(労働基準監督署および地方公共団体)へ報告する必要があります。
事前調査を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合には、発注者や元請業者に厳しい罰則が科される可能性があるため、必ず実施しなければなりません。
4.2 アスベスト調査の流れと費用
アスベストの事前調査は、専門的な知識を持つ「建築物石綿含有建材調査者」などの資格者が行う必要があります。調査は主に3つのステップで進められます。
書面調査:設計図書や竣工図、過去の改修履歴などの書類を確認し、アスベスト含有建材が使用されている可能性を調査します。
現地調査(目視):書面調査で把握できなかった部分について、実際に現地で建材を目視で確認します。建材の品名や製造年などからアスベストの有無を判断します。
分析調査:書面調査や現地調査でアスベストの有無が判断できない場合に、現地で建材の一部をサンプルとして採取し、専門の分析機関で含有の有無を分析します。
調査にかかる費用は、オフィスの規模や構造、調査内容によって変動します。以下に費用の目安をまとめました。
アスベスト調査の費用相場 | ||
調査の種類 | 費用相場(目安) | 備考 |
書面調査・現地調査 | 30,000円~100,000円程度 | 建物の規模や図面の有無によって変動します。 |
分析調査(1検体あたり) | 30,000円~50,000円程度 | 分析が必要な建材の数(検体数)によって総額が変わります。 |
正確な費用は解体業者からの見積もりで確認することが重要です。複数の業者から見積もりを取り、調査内容と費用を比較検討しましょう。
4.3 アスベストが発見された場合の対応
事前調査の結果、アスベスト含有建材が発見された場合は、法令に定められた適切な方法で除去工事を行う必要があります。アスベストの除去作業は、その飛散性のリスクレベルに応じて厳重な飛散防止対策が求められ、専門の知識と技術を持つ業者でなければ対応できません。
アスベスト含有建材は、その飛散リスクに応じて「レベル1(発じん性が著しく高い)」、「レベル2(発じん性が高い)」、「レベル3(発じん性が比較的低い)」の3段階に分類されます。オフィス内装でよく見られる壁の石膏ボードや床のPタイルなどは、比較的リスクの低いレベル3に該当することが多いですが、適切な処置は必須です。
除去工事を行う場合、以下のような対応が必要となり、当初の内装解体費用に加えて追加費用が発生します。
アスベスト除去工事計画の作成と行政への届出
作業場所の隔離養生(シートなどで作業区画を密閉する)
専門作業員による除去作業
除去したアスベストの適切な梱包
特別管理産業廃棄物としての収集運搬・最終処分
アスベスト除去費用は、レベルや建材の種類、量、作業場所の状況によって大きく異なります。万が一アスベストが発見された場合に備え、解体業者と除去工事の進め方や費用について事前に協議しておくことが大切です。
5. 失敗しないオフィス内装解体業者の選び方 5つのポイント

オフィスの内装解体は、専門的な知識と技術が求められる工事です。業者選びを誤ると、予期せぬ追加費用や工期の遅延、ビル管理会社とのトラブルなど、様々な問題に発展しかねません。ここでは、安心して工事を任せられる信頼できる業者を選ぶための5つの重要なポイントを解説します。複数の業者を比較検討する際のチェックリストとしてご活用ください。
5.1 建設業許可や解体工事業登録を確認する
内装解体工事を行うには、法律で定められた許可や登録が必要です。無許可・無登録の業者に依頼すると違法工事となり、万が一の事故の際に保険が適用されないなどの重大なリスクがあります。必ず以下のいずれかの資格を保有しているかを確認しましょう。
資格の種類 | 対象となる工事 | 根拠法 |
建設業許可 (解体工事業など) | 請負金額が500万円(税込)以上の解体工事 | 建設業法 |
解体工事業登録 | 請負金額が500万円(税込)未満の解体工事 | 建設リサイクル法 |
業者のウェブサイトに許可番号や登録番号が記載されているかを確認し、国土交通省の検索システムなどで実在する情報か照合することをおすすめします。
5.2 産業廃棄物収集運搬業許可を持っているか
オフィス内装解体では、壁材、床材、パーテーション、什器など、多種多様な産業廃棄物が発生します。解体業者がこれらの廃棄物を自社で運搬・処理する場合、「産業廃棄物収集運搬業許可」が必要です。この許可は、廃棄物を排出するエリアと、中間処理施設や最終処分場があるエリアの両方で取得している必要があります。
万が一、無許可の業者が不法投棄を行った場合、廃棄物を排出した依頼主(テナント)も責任を問われる可能性があります。見積もり依頼時や契約前に、必ず許可証の写しを提示してもらい、有効期限や許可範囲を確認しましょう。
5.3 実績が豊富でオフィス解体に詳しいか
一言で解体工事といっても、戸建て住宅の解体とオフィスの内装解体では、求められる知識やノウハウが大きく異なります。オフィス解体特有の事情に精通している業者を選びましょう。
確認すべきポイントは以下の通りです。
オフィスビルの施工実績が豊富か(ウェブサイトの施工事例を確認)
アスベスト調査や除去工事に対応できるか
OAフロアや複雑な電気配線の撤去経験があるか
ビル管理会社との折衝や各種申請手続きに慣れているか
近隣テナントへ配慮した騒音・振動対策のノウハウがあるか
特に、入居しているビルと同様の規模や構造のオフィスでの解体実績がある業者は、工事をスムーズに進めるための知見が期待できます。
5.4 見積書の内容が明確で分かりやすいか
複数の業者から見積もり(相見積もり)を取ることは必須ですが、単に総額の安さだけで判断するのは危険です。見積書の内容が詳細かつ明確であるかを確認しましょう。
チェックすべき項目は以下の通りです。
内訳の明確さ:「解体工事一式」のように大雑把な記載ではなく、「仮設・養生費」「天井解体費」「壁解体費」「床解体費」など、項目ごとに費用が記載されているか。
廃棄物処理費:廃棄物の種類(石膏ボード、ガラス、金属くず等)と量、単価が明記されているか。
諸経費:現場管理費や書類作成費など、諸経費の内訳が分かるか。
追加費用の可能性:アスベストが発見された場合など、追加費用が発生しうるケースについて言及があるか。
不明な点や曖昧な項目については、契約前に必ず質問し、納得できる説明を受けましょう。誠実な業者であれば、丁寧に解説してくれます。
5.5 担当者の対応が丁寧で信頼できるか
工事期間中、最もコミュニケーションを取るのは業者の担当者です。担当者の対応品質は、工事全体の満足度を大きく左右します。専門的な知識はもちろん、人柄やコミュニケーション能力も重要な選定基準です。
現地調査や打ち合わせの際に、以下の点を確認しましょう。
質問に対して専門用語を多用せず、分かりやすく説明してくれるか。
メールや電話へのレスポンスが迅速かつ丁寧か。
こちらの要望や懸念点を親身にヒアリングしてくれるか。
ビル側のルールや制約を理解し、遵守する姿勢があるか。
工事のリスクやデメリットについても正直に伝えてくれるか。
「この人になら安心して任せられる」と思える担当者を見つけることが、オフィス内装解体を成功させるための鍵となります。
6. オフィス内装解体でよくあるトラブルと注意点

オフィス内装解体は、計画通りに進まないと予期せぬトラブルに発展することがあります。特に「ビル管理会社」「近隣テナント」「費用」に関する問題は頻発しがちです。ここでは、よくあるトラブル事例とその対策を解説し、スムーズな退去を実現するための注意点を学びましょう。
6.1 ビル管理会社との連携不足によるトラブル
オフィスビルの内装解体は、自社と解体業者だけで完結するものではありません。建物の所有者であるビルオーナーや、その代理人であるビル管理会社との密な連携が不可欠です。この連携が不足すると、工事の中断や追加費用といった深刻な事態を招きかねません。
最も多いトラブルは、原状回復の範囲や仕様に関する認識の齟齬です。賃貸借契約書に記載された原状回復義務の解釈が、借主と貸主で異なっているケースが原因となります。例えば、「入居時の状態に戻す」という認識で工事を進めたところ、ビル管理会社から「指定業者によるクリーニングが必須」「配線の撤去方法がビルの規定と違う」といった指摘を受け、やり直し工事が発生することがあります。
このような事態を避けるため、必ず工事着工前にビル管理会社、解体業者、自社の三者で打ち合わせを行いましょう。その際、賃貸借契約書やビル指定の工事区分表、原状回復ガイドラインなどの資料を元に、以下の点について書面で確認・合意することが重要です。
原状回復工事の具体的な範囲と仕様
工事可能な曜日や時間帯
搬入・搬出経路やエレベーターの使用ルール
共用部分の養生方法
ビル側指定業者の有無とその範囲
6.2 近隣テナントへの配慮不足によるクレーム
解体工事には、騒音、振動、粉塵、臭いがつきものです。同じビル内で業務を行っている他のテナントへの配慮を怠ると、クレームが発生し、工事の遅延や企業イメージの低下につながる恐れがあります。
特に、壁や床を壊す際の大きな音や振動は、隣接するフロアや上下階のテナントの業務に直接的な影響を与えます。「会議中に工事の騒音で声が聞こえない」「精密機器を扱う部屋で振動が気になる」といったクレームは代表的な例です。また、廊下やエレベーターなどの共用部分の養生が不十分で、床を傷つけたり汚したりしてしまうトラブルも少なくありません。
トラブル防止の鍵は、丁寧な事前説明と徹底した現場管理にあります。工事開始の1週間〜2週間前には、解体業者の担当者と共に近隣テナントへ挨拶回りを行い、工事の概要、期間、作業時間、連絡先を明記した書面を渡しましょう。工事中は、防音シートや養生の徹底、定期的な共用部の清掃など、業者に具体的な対策を講じてもらうことが不可欠です。万が一クレームが発生した際に、迅速かつ誠実に対応できる体制を業者と事前に協議しておくことも大切です。
6.3 追加費用の発生に関するトラブル
「最終的な請求額が、最初の見積もりより大幅に高くなってしまった」という金銭的なトラブルは、発注者にとって最も避けたい事態の一つです。追加費用が発生する原因の多くは、見積もり時の現地調査では把握しきれなかった問題が、工事開始後に発覚することにあります。
例えば、壁や天井を解体した後にアスベスト含有建材が見つかった場合、法令に基づいた除去作業が必要となり、別途高額な費用が発生します。また、床下に想定外の配管やコンクリートブロックが埋まっていた、契約範囲外だと思っていた残置物の撤去をビル側から指示された、といったケースも追加費用の原因となります。
契約前に見積書の内容を精査し、追加費用が発生しうる条件を書面で確認しておくことが最も重要です。「解体工事一式」のような曖昧な記載ではなく、何にいくらかかるのかが詳細に記載された見積書を提出する業者を選びましょう。以下の表を参考に、追加費用が発生する可能性のある項目と、その対策を事前に業者と話し合っておくことを強く推奨します。
追加費用が発生する主なケース | トラブルを避けるための対策 |
アスベスト含有建材の発見 | 事前のアスベスト調査の有無と、発見された場合の対応・費用について契約前に確認する。 |
現地調査で確認できなかった地中埋設物や隠蔽配線の撤去 | 図面と現地状況が異なる可能性を伝え、予期せぬ障害物が見つかった場合の対応と費用感を事前に協議する。 |
産業廃棄物量の想定超え | 廃棄物の種類ごとの単価と、数量が増減した場合の精算方法を確認しておく。 |
残置物の撤去 | 撤去する物としない物をリスト化し、業者と共有する。契約範囲外の残置物撤去費用の単価を確認する。 |
ビル管理会社からの仕様変更指示 | 追加・変更工事が発生した場合の協議方法や承認プロセスを契約書に明記する。 |
7. まとめ
本記事では、オフィス内装解体の全手順を、原状回復との違いから費用相場、アスベスト調査まで解説しました。オフィス移転に伴う内装解体は、賃貸借契約書に基づき原状回復義務を果たすための重要な工事です。成功の鍵は、信頼できる解体業者を選び、ビル管理会社と密に連携することにあります。特にアスベスト調査は法律で義務化されており、必ず実施しなくてはなりません。この記事を参考に、計画的に準備を進め、スムーズなオフィス退去を実現しましょう。

コメント