失敗しない解体工事の流れとは?見積もりから近隣挨拶、届け出までやるべきことリスト
- seira murata
- 11月13日
- 読了時間: 19分

初めての解体工事、「何から手をつければいいの?」「手続きが複雑で難しそう…」といった不安や疑問を抱えていませんか。業者選びの失敗や近隣トラブルは、誰しも避けたいものです。この記事では、そんなお悩みを解消するため、解体工事の見積もり依頼から工事完了後の手続きまで、やるべきことの全手順を具体的なSTEPに分けて徹底解説します。業者選びで失敗しないための5つのポイント、見積書で必ず確認すべき項目、行政への各種届け出、トラブルを防ぐ近隣挨拶のコツまで、この記事一本で全てがわかります。結論として、解体工事を成功させる鍵は「信頼できる業者を見つけ、計画的に準備を進めること」に尽きます。この記事を最後まで読めば、工事全体の流れを完璧に把握し、安心して解体工事の第一歩を踏み出せるようになるでしょう。
1. 解体工事の全体像と期間の目安
解体工事は、単に建物を壊すだけではありません。業者選びから各種手続き、近隣への配慮、そして工事後の登記申請まで、多くの工程が存在します。初めて解体工事を行う方でも安心して進められるよう、まずは工事全体の流れと、完了までにかかる期間の目安を把握しておきましょう。
1.1 【図解】一般的な木造住宅の解体工事の流れ
解体工事は、大きく分けて「準備期間」「工事期間」「完了後手続き」の3つのフェーズに分かれます。それぞれのフェーズで誰が何を行うのか、一般的な木造住宅を例に全体の流れを確認しましょう。
解体工事の全体的な流れ | ||
フェーズ | 主な作業内容 | 主な担当者 |
STEP1:準備期間 | 解体業者の選定、相見積もり、現地調査、工事請負契約の締結 | 施主・解体業者 |
STEP2:工事着工前 | ライフライン(電気・ガス・水道等)の停止手続き、行政への届け出、アスベスト事前調査、近隣への挨拶 | 施主・解体業者 |
STEP3:工事期間 | 足場・養生シートの設置、内装材の撤去、建物本体の解体、基礎の撤去、廃棄物の分別・搬出、整地 | 解体業者 |
STEP4:工事完了後 | 工事完了の現地立ち会い確認、工事代金の支払い、建物滅失登記の申請 | 施主・解体業者 |
このように、施主様ご自身で行う手続きと、業者が代行する手続きがあります。特にライフラインの停止や建物滅失登記は施主様の義務となるため、忘れないように注意が必要です。どのタイミングで何をすべきか、事前に業者としっかり打ち合わせを行い、スケジュールを共有しておくことが成功の鍵となります。
1.2 解体工事にかかる期間はどれくらい?
解体工事全体の期間は、建物の構造(木造、鉄骨造、RC造)、規模(坪数)、立地条件(前面道路の広さなど)、アスベストの有無によって変動します。ここでは、最も一般的な「木造2階建て30坪程度」の住宅を解体する場合の期間の目安をご紹介します。
【木造30坪】解体工事にかかる期間の目安 | |
工程 | 期間の目安 |
準備期間(業者選定〜契約) | 2週間~1ヶ月程度 |
着工前手続き(届け出・近隣挨拶) | 1週間~2週間程度 |
解体工事期間(着工~整地完了) | 10日~2週間程度 |
完了後手続き(滅失登記など) | 1週間~2週間程度 |
合計期間 | 1ヶ月半~2ヶ月半程度 |
業者探しからすべての手続きが完了するまで、全体で1ヶ月半から2ヶ月半ほど見ておくと良いでしょう。ただし、これはあくまで目安です。例えば、解体する建物にアスベストが使用されていた場合は、除去作業のためにさらに数日から数週間の期間が必要になります。また、複数の業者から相見積もりを取ってじっくり比較検討する場合は、準備期間が長くなる傾向があります。余裕を持ったスケジュールを立てることが、失敗しない解体工事の第一歩です。
2. 【STEP1】解体工事の準備期間 やるべきこと

解体工事の成否は、この準備期間の進め方で決まると言っても過言ではありません。工事が始まってから後悔しないために、業者選びから契約まで、慎重に進めるべき重要なステップです。ここでは、準備期間にやるべきことを具体的に解説します。
2.1 まずは解体業者を探し相見積もりを取る
解体工事を依頼する最初のステップは、信頼できる解体業者を探すことです。そして、必ず複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」を行いましょう。最低でも3社程度から見積もりを取得することで、費用の適正価格を把握できるだけでなく、各社の対応や提案内容を比較検討できます。手間はかかりますが、この一手間がトラブルを未然に防ぎ、結果的に費用を抑えることにも繋がります。
2.1.1 良い解体業者の選び方 5つのポイント
数ある解体業者の中から、安心して任せられる優良業者を見極めるための5つのポイントをご紹介します。
1. 必要な許認可を得ているか
解体工事を行うには、建設業法に基づく「建設業許可(解体工事業)」または建設リサイクル法に基づく「解体工事業登録」が必要です。500万円以上の工事は許可、500万円未満は登録が必須となります。これらの許認可がない業者は違法ですので、必ず事前に確認しましょう。
2. 解体工事の実績が豊富か
公式サイトの施工事例などを確認し、依頼したい建物(木造、鉄骨造など)と同様の工事実績が豊富にあるかチェックします。経験豊富な業者は、様々な状況に柔軟に対応できるノウハウを持っています。
3. 担当者の対応が誠実で説明が分かりやすいか
現地調査や問い合わせの際に、こちらの質問に対して丁寧に、そして分かりやすく説明してくれるかは重要な判断基準です。専門用語ばかりでなく、素人にも理解できるように話してくれる担当者は信頼できます。
4. 損害賠償保険に加入しているか
万が一、工事中に隣家を傷つけたり、通行人に怪我をさせてしまったりといった事故に備え、損害賠償保険に加入しているかを確認しましょう。保険加入の有無は、業者のリスク管理意識の高さを示す指標にもなります。
5. 見積書の内容が詳細で明確か
「解体工事一式」といった大雑把な見積書ではなく、各作業項目ごとに費用が細かく記載されているかを確認します。内訳が明確な見積書を提示する業者は、誠実な工事を行う可能性が高いです。
2.1.2 見積書で必ず確認すべき項目
相見積もりで取得した見積書は、金額の安さだけで判断してはいけません。必要な工事項目がすべて含まれているか、追加費用の可能性はないかなど、以下の点を詳細に比較検討することが重要です。
確認項目 | チェックポイント |
建物本体解体工事費 | 木造、鉄骨造、RC造といった建物の構造に応じた解体費用が記載されているか。 |
付帯工事費 | ブロック塀、カーポート、庭木、庭石、浄化槽などの撤去費用が含まれているか。含まれていない場合、別途費用がいくらかかるのかを確認。 |
廃棄物運搬処分費 | 解体で発生した木くず、コンクリートがら、廃プラスチックなどの産業廃棄物を適正に処理するための費用。不法投棄などのトラブルを避けるためにも重要な項目です。 |
仮設工事費 | 工事現場を囲う足場の設置や、粉塵の飛散を防ぐ養生シートの費用。近隣への配慮を示す重要な費用です。 |
諸経費 | 官公庁への届け出代行費用や、重機の回送費など。内訳が不明瞭な場合は、具体的に何に対する費用なのかを質問しましょう。 |
地中埋設物の扱い | 解体工事中に地中から以前の建物の基礎や浄化槽などが出てきた場合の、追加費用の有無やその際の対応について記載があるかを確認。 |
2.2 解体業者との工事請負契約
見積もり内容や担当者の対応に納得できる業者が見つかったら、最終的に工事請負契約を結びます。口約束は絶対に避け、必ず書面で「工事請負契約書」を交わしてください。契約書に署名・捺印する前には、内容を隅々まで確認し、少しでも疑問点があれば必ず業者に質問して解消しておきましょう。
契約書で特に確認すべき主な項目は以下の通りです。
工事の範囲:建物のどこからどこまでを解体するのかが明記されているか。
契約金額と支払い条件:総額はいくらか、着手金・中間金・最終金の割合や支払いのタイミングはいつか。
工期:工事の開始日と完了予定日が具体的に記載されているか。
追加工事の取り決め:予期せぬ追加工事が発生した場合の費用負担や連絡方法について定められているか。
近隣対策:近隣への挨拶や工事中の対応について記載があるか。
事故発生時の責任:工事中の事故に対する保険の適用範囲や責任の所在が明確になっているか。
契約解除の条件:万が一、契約を解除する場合の条件や手続きについて記載があるか。
3. 【STEP2】工事着工前の手続きと届け出

解体工事は、ただ建物を壊すだけではありません。工事を安全かつスムーズに進めるために、着工前には様々な手続きや行政への届け出が必要です。これらは施主様ご自身で行うものと、解体業者が代行してくれるものに分かれます。手続きに漏れがあると、工事の遅延や罰則の原因となる可能性もあるため、誰が・いつ・何を行うのかをしっかり把握しておきましょう。
3.1 施主が行うライフラインの停止手続き
電気、ガス、水道、電話、インターネットといったライフラインの停止手続きは、原則として契約者である施主様ご自身で行います。解体する建物に引き込まれている配線や配管を撤去する前に、各供給会社へ連絡し、供給の停止と契約の解除(または一時休止)を依頼してください。
注意点として、工事中の散水や電動工具の使用のために、水道や電気を解体工事完了直前まで使用するケースがあります。どのタイミングで停止・撤去するのが最適か、必ず事前に解体業者と打ち合わせを行いましょう。特にガスの閉栓は、供給会社の担当者による立ち会いが必要な場合がありますので、早めに連絡することをおすすめします。
3.1.1 電気・ガス・水道・電話の連絡先
ライフラインの停止手続きは、以下の連絡先へ依頼します。契約者本人でないと手続きできない場合がほとんどですので、ご注意ください。
ライフラインの種類 | 主な連絡先 | 備考・注意点 |
電気 | ご契約中の電力会社(例:東京電力、関西電力など) | 電線の撤去も依頼します。工事で電気を使う場合があるため、停止日は業者と要相談。 |
ガス | ご契約中のガス会社(例:東京ガス、大阪ガスなど) | 閉栓には立ち会いが必要な場合があります。早めに連絡し、日程を調整しましょう。 |
水道 | 管轄の市区町村の水道局 | 工事中のホコリ飛散防止の散水に利用します。完全に止めるのは工事完了直前が一般的です。 |
電話・インターネット | ご契約中の通信会社(例:NTT、KDDIなど)やプロバイダ | 電柱からの引き込み線の撤去が必要になります。移転の場合は、新居での手続きと同時に進めるとスムーズです。 |
3.2 業者が行う行政への各種届け出
解体工事を行うにあたり、法律で定められたいくつかの届け出を管轄の行政機関へ提出する必要があります。これらの専門的な手続きは、通常、解体業者が施主様からの委任状をもとに代行してくれます。ただし、届け出の義務は施主様にあるため、契約時に業者が適切に代行してくれるか、費用は見積もりに含まれているかを必ず確認してください。
3.2.1 建設リサイクル法の届け出
建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)は、コンクリートや木材などの建設廃棄物を適切に分別・リサイクルすることを義務付けた法律です。床面積の合計が80㎡以上の建物を解体する場合、工事開始の7日前までに、発注者(施主様)が都道府県知事へ届け出る必要があります。前述の通り、通常は業者が手続きを代行します。
3.2.2 道路使用許可申請
工事車両の駐車や重機の搬入・搬出などで、工事現場に面した道路を一時的に使用する際には、管轄の警察署へ「道路使用許可」を申請する必要があります。この申請も、工事の段取りを把握している解体業者が行うのが一般的です。この許可なく道路を使用すると、交通の妨げになるだけでなく、罰則の対象となります。
3.3 アスベスト(石綿)の事前調査
アスベストは、かつて建材に広く使用されていましたが、健康被害を引き起こす有害物質として知られています。そのため、2022年4月からは、建物の規模や構造に関わらず、すべての解体・改修工事でアスベストの有無を事前に調査することが法律で義務化されました。
事前調査は、有資格者が設計図書等の書面と現地での目視によって行います。そこでアスベスト含有の有無が判断できない場合は、建材の一部を採取して専門機関で分析します。調査の結果、一定量以上のアスベスト含有が確認された場合は、行政への届け出や、法律に定められた厳格な基準に則った除去作業が必要となります。この調査から報告、除去作業までの一連の流れは、専門的な知識と技術を要するため、信頼できる解体業者に任せることが極めて重要です。
4. 【STEP3】近隣挨拶と工事開始

解体工事の契約が完了し、行政への届け出が済んだら、いよいよ工事開始の準備に入ります。このステップで最も重要なのが「近隣挨拶」です。工事中は騒音や振動、粉塵の飛散などで、どうしても近隣住民の方々にご迷惑をおかけしてしまいます。事前の丁寧な挨拶が、後のトラブルを未然に防ぐ鍵となります。ここでは、近隣挨拶から実際の工事の流れまでを詳しく解説します。
4.1 トラブルを防ぐための近隣挨拶
解体工事を円滑に進めるためには、近隣住民の理解と協力が不可欠です。工事開始前に施主と業者が一緒に挨拶に伺い、工事内容や期間について誠意をもって説明することが、良好な関係を築く第一歩となります。
4.1.1 挨拶に伺う範囲と適切なタイミング
挨拶に伺う範囲とタイミングは、今後のご近所付き合いにも影響する重要なポイントです。一般的には以下の範囲とタイミングが推奨されています。
項目 | 目安とポイント |
挨拶の範囲 | 一般的に「向こう三軒両隣」と言われる、自宅の両隣、真裏の3軒、道路を挟んだ向かいの3軒が基本です。工事車両の通行ルートや駐車場所になる道路沿いのお宅にも挨拶しておくと、より丁寧です。 |
挨拶のタイミング | 工事開始の1週間〜10日前が理想的です。遅くとも工事の2〜3日前までには済ませましょう。業者の担当者と一緒に伺うことで、専門的な質問にもその場で答えてもらえるため、住民の方に安心感を与えられます。 |
4.1.2 挨拶時に用意するもの(粗品・挨拶状)
挨拶に伺う際は、手ぶらではなく粗品と挨拶状を持参するのがマナーです。不在の場合も想定し、挨拶状はポストに入れられるように準備しておきましょう。
用意するもの | 内容とポイント |
粗品 | 500円~1,000円程度の、後に残らない消耗品が好まれます。タオル、洗剤、ゴミ袋、地域指定のゴミ袋、ラップなどが定番です。のし紙をかけ、表書きは「御挨拶」、名入れは「施主の苗字」とします。 |
挨拶状(工事のお知らせ) | 工事の概要を記した書面です。以下の項目を記載しましょう。
|
4.2 解体工事中の作業の流れ
近隣への挨拶が完了したら、いよいよ工事が始まります。一般的な木造住宅の場合、以下の流れで作業が進められます。
4.2.1 足場の設置と養生シートの張り付け
まず初めに、建物の周囲に足場を組み立てます。そして、その足場を覆うようにして防音・防塵効果のある養生シートを張り巡らせます。これは、工事中に発生する騒音を軽減し、粉塵やホコリ、廃材の破片などが近隣に飛散するのを防ぐための非常に重要な工程です。
4.2.2 内装材の撤去(手作業)
重機を入れる前に、建物内部の内装材を手作業で撤去していきます。畳、建具、窓ガラス、石膏ボード、断熱材などを分別しながら丁寧に取り外します。建設リサイクル法に基づき、木材やプラスチック、石膏などを適切に分別することが義務付けられています。
4.2.3 建物本体の解体(重機作業)
内装材の撤去が終わると、いよいよ重機(油圧ショベルなど)を使って建物本体の解体作業に入ります。屋根、壁、柱、梁といった構造部分を上から下へと順番に解体していきます。この際、粉塵の飛散を抑えるために、水をまきながら(散水しながら)作業を進めるのが一般的です。
4.2.4 基礎の撤去と地中埋設物の確認
建物本体をすべて解体し終えたら、地面に残っているコンクリートの基礎を重機で掘り起こし、撤去します。この工程で、過去の工事で埋められた浄化槽や井戸、コンクリート片などの「地中埋設物」が発見されることがあります。地中埋設物の撤去は、当初の見積もりに含まれていないケースが多く、追加費用が発生する可能性があるため注意が必要です。
4.2.5 廃棄物の分別と搬出
解体工事で発生した木くず、コンクリートガラ、金属くずなどの産業廃棄物を、品目ごとに細かく分別します。分別された廃棄物は、ダンプトラックでそれぞれの中間処理施設や最終処分場へと運搬されます。業者が適正な処理を行っているかを確認するためにも、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の写しをもらっておくと安心です。
4.2.6 土地の整地(更地化)
すべての廃棄物を搬出し終えたら、最後に土地を平らにならす「整地」作業を行います。重機を使って地面を均し、細かなコンクリート片や石などを取り除いて、きれいな更地の状態に仕上げます。この整地作業をもって、現場での全工程が完了となります。
5. 【STEP4】解体工事完了後の手続き

解体工事が無事に完了しても、まだ施主としてやるべき重要な手続きが残っています。トラブルなく全ての工程を終えるために、工事完了後の流れを正確に把握しておきましょう。特に法的な手続きには期限があるため注意が必要です。
5.1 工事完了の現地立ち会い確認
工事が完了したら、必ず解体業者の担当者と一緒に現地で立ち会い確認を行います。これは、契約書通りの工事が行われたか、最終的な状態を自分の目で確かめるための非常に重要な工程です。
立ち会い時には、以下のポイントを重点的に確認しましょう。
解体すべき建物や基礎、外構(ブロック塀・フェンス等)が全て撤去されているか
地中にコンクリートガラなどの埋設物が残っていないか
土地が契約通りに整地されているか(砕石敷き、真砂土舗装など)
廃棄物やゴミが敷地内に残置されていないか
近隣の建物や道路に損傷がないか
もし契約内容と異なる点や、気になる箇所があれば、その場で担当者に伝え、是正を依頼します。全ての確認が完了し、納得できる状態になるまで、安易に承諾しないことが大切です。
5.2 法務局への建物滅失登記の申請
建物を取り壊した場合、その建物が存在しなくなったことを法務局の登記簿に記録するための「建物滅失登記」を申請する義務があります。この手続きは、建物の解体後1ヶ月以内に行わなければならないと法律で定められています。
この登記を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があるほか、存在しない建物に対して固定資産税が課され続ける、土地の売却ができないといった様々な不利益が生じます。申請はご自身で行うことも可能ですが、手続きが複雑なため、一般的には土地家屋調査士に依頼します。
5.2.1 建物滅失登記に必要な書類一覧
建物滅失登記の申請には、主に以下の書類が必要です。解体業者から受け取る書類もあるため、工事完了時に必ず揃っているか確認しましょう。
書類名 | 入手先・作成者 | 備考 |
登記申請書 | 法務局または法務局のウェブサイト | 申請者本人が作成します。土地家屋調査士に依頼する場合は不要です。 |
取毀(とりこわし)証明書 | 解体業者 | 解体業者が建物を解体したことを証明する書類です。 |
解体業者の印鑑証明書 | 解体業者 | 取毀証明書に押印された印鑑が本物であることを証明します。 |
解体業者の代表者事項証明書または登記事項証明書 | 解体業者 | 法人の場合に必要です。 |
案内図 | 申請者本人 | 登記対象の建物の所在地がわかる地図(住宅地図のコピーなど)です。 |
委任状 | 申請者本人 | 土地家屋調査士などの代理人に申請を依頼する場合に必要です。 |
5.3 工事代金の支払い
現地での立ち会い確認が完了し、工事内容に問題がないことを確認した後、工事代金の残金を支払います。通常、解体業者から請求書が発行されますので、契約書に記載された支払い方法(銀行振込が一般的)で期日までに支払いましょう。
追加工事が発生した場合は、その費用が請求書に含まれています。内訳をしっかりと確認し、不明な点があれば支払う前に必ず業者に問い合わせてください。支払い完了後は、後のトラブル防止や税務上の証明のためにも、必ず領収書を受け取り大切に保管しておきましょう。
6. 解体工事の費用を安く抑えるコツ

解体工事は決して安い買い物ではありません。しかし、いくつかのポイントを押さえることで、費用を賢く節約することが可能です。ここでは、誰でも実践できる具体的なコスト削減方法を2つご紹介します。
6.1 補助金・助成金制度を活用する
近年、全国的に増加している空き家問題への対策として、多くの自治体が解体工事に関する補助金や助成金制度を設けています。条件に合致すれば、工事費用の一部が補助されるため、必ず確認しましょう。
補助金の名称や条件は自治体によって様々ですが、主に以下のようなものがあります。
老朽危険家屋解体撤去補助金
空き家解体費用補助金
建て替え建設費補助金
アスベスト除去等費用補助金
これらの制度は、倒壊の危険性がある、景観を損ねているなど、特定の条件を満たす建物を対象としています。申請には期限や予算の上限があるため、解体工事を計画し始めた段階で、お住まいの市区町村の役所(建築指導課、都市計画課など)の窓口や公式ホームページで確認することが重要です。多くの場合、工事の契約前に申請が必要となる点にも注意してください。
6.2 不用品や家財は自分で処分する
家の中に残っている家具や家電、衣類などの不用品(残置物)の処分も、費用を抑えるための大きなポイントです。解体業者に家財道具の処分をまとめて依頼することも可能ですが、その場合、これらは「産業廃棄物」として扱われるため、処分費用が割高になる傾向があります。
工事が始まる前に自分で不用品を処分しておくことで、解体業者が処分する廃棄物の量を減らし、結果的に費用を削減できます。庭木や庭石、ブロック塀なども同様です。主な処分方法は以下の通りです。
処分方法 | メリット | デメリット |
自治体の粗大ごみ回収 | 費用が非常に安い。 | 収集日が決まっている。自分で搬出する必要がある。 |
リサイクルショップ・フリマアプリ | 売却できれば収入になる。 | 状態の良いものに限られる。手間がかかる。 |
不用品回収業者に依頼 | まとめて一度に処分できる。搬出も任せられる。 | 費用がかかる。無許可の悪徳業者に注意が必要。 |
時間と手間はかかりますが、計画的に自分で処分を進めることが、最終的な工事費用の節約に直結します。
7. まとめ
本記事では、失敗しないための解体工事の全手順を、準備から工事完了後の手続きまで詳しく解説しました。解体工事は、単に建物を壊すだけでなく、業者選定、行政への届け出、近隣への配慮など、多岐にわたる作業と手続きが必要です。
成功の鍵は、事前の準備にあります。複数の解体業者から相見積もりを取り、サービス内容や費用を比較検討することが、適正価格で信頼できる業者を見つけるための最も重要なステップです。また、工事請負契約を結ぶ際は、見積書の内容を細部まで確認し、追加費用の有無などを明確にしておきましょう。
工事着工前には、施主様ご自身で行う電気・ガス・水道などのライフラインの停止手続きと、業者が代行する建設リサイクル法に基づく届け出など、役割分担を正しく理解しておく必要があります。特にアスベスト調査は法律で義務付けられており、安全な工事に不可欠です。
工事中のトラブルを未然に防ぐためには、丁寧な近隣挨拶が欠かせません。工事完了後には、必ず現地で立ち会い確認を行い、法務局への「建物滅失登記」を忘れずに行いましょう。この登記を怠ると、存在しない建物に固定資産税が課され続ける可能性があるため注意が必要です。
解体工事は大きな費用がかかりますが、自治体の補助金制度を活用したり、家財道具を事前に自分で処分したりすることで、費用を抑えることも可能です。この記事でご紹介した流れとポイントを参考に、一つひとつのステップを確実に進め、後悔のない解体工事を実現してください。

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