残業80時間が半分に!ある現場監督が実践した労働時間改善の全手法を公開
- seira murata
- 9月12日
- 読了時間: 14分

「残業続きでプライベートがない…」そんな悩みを抱える現場監督の方へ。本記事では、実際に残業80時間を半分に削減した現場監督が実践した、労働時間改善の全手法を公開します。長時間労働の原因となる書類作成などを効率化する個人テクニックから、チームや会社全体で取り組むべき具体的な改善策まで網羅。この記事を読めば、きつい現場から解放され、生産性と私生活の充実を手に入れる方法がわかります。
1. なぜ現場監督の労働時間は長くなるのか?4つの根本原因
「現場監督の仕事はきつい」「残業が多くて帰れない」といった声は、建設業界で働く多くの人が一度は耳にしたことがあるでしょう。労働時間を改善しようにも、まずはその原因を正しく理解しなければ、的確な対策は打てません。ここでは、現場監督の労働時間が長くなる構造的な4つの原因を深掘りします。
1.1 原因1 膨大な量の書類作成と写真整理
現場監督の業務は、現場の巡回や職人への指示出しだけではありません。むしろ、一日の大半をデスクワークである書類作成と写真整理に費やしているケースが非常に多いのが実情です。工事の着工から竣工まで、安全管理、品質管理、工程管理に関わる無数の書類を作成し、関係各所に提出する必要があります。
具体的には、以下のような書類が挙げられます。
書類カテゴリ | 主な書類の例 |
施工計画関連 | 施工計画書、施工要領書、作業手順書 |
安全管理関連 | 新規入場者教育資料、安全ミーティング報告書、ヒヤリハット報告書 |
品質・工程管理関連 | 施工体制台帳、工事写真台帳、コンクリート打設記録、各種検査記録 |
竣工関連 | 完成図書、引渡書類、保証書 |
これらに加え、日々の業務報告や打ち合わせの議事録作成も発生します。特に工事写真は、各工程の証拠として数百枚、大規模な現場では数千枚に及ぶことも珍しくありません。黒板を準備し、撮影、PCへの取り込み、仕分け、台帳への貼り付けといった一連の作業は、膨大な時間を要するのです。
1.2 原因2 関係者との頻繁な打ち合わせと調整業務
現場監督は、プロジェクトを円滑に進めるための「司令塔」であり、多岐にわたる関係者との調整役を担います。施主(発注者)、設計事務所、自社の担当者、そして数十社に及ぶこともある専門工事の協力会社(職人)など、常に多くのステークホルダーとのコミュニケーションが求められます。
朝は職人たちとの朝礼や作業内容の打ち合わせ、日中は施主や設計者との定例会議、そして夕方には翌日の段取りや協力会社との工程調整会議。このように、打ち合わせや調整業務が一日中、途切れることなく発生します。特に、現場作業が終わる夕方以降に会議が設定されることも多く、結果として拘束時間が長くなる傾向にあります。関係者それぞれの立場や要望を汲み取り、合意形成を図るプロセスは、精神的にも時間的にも大きな負担となります。
1.3 原因3 急な仕様変更や手戻りによる段取りの乱れ
建設現場は「生き物」とよく言われます。天候の変化はもちろん、図面だけではわからなかった現場の状況や、施主からの急な要望による仕様変更など、予期せぬトラブルは日常茶飯事です。こうした計画外の事態が発生すると、それまで組んでいた段取りが白紙に戻り、大幅な手戻り作業が発生します。
例えば、壁の仕上げ材が変更になれば、材料の再発注、職人の再手配、関連する工程の見直しなど、多方面に影響が及びます。一つひとつの変更は小さくても、連鎖的に調整業務が増加し、その対応に追われることで残業が常態化してしまうのです。現場監督は、こうした不確実性を乗り越え、工期内に工事を完了させるという大きなプレッシャーの中で、日々奮闘しています。
1.4 原因4 建設業界特有の長時間労働を是とする文化
これまで挙げた3つの原因に加え、建設業界に根強く残る旧態依然とした文化も、長時間労働の温床となっています。「工期は絶対。間に合わせるためには残業も休日出勤も厭わない」という精神論や、「先輩や上司が帰るまで若手は帰れない」といった同調圧力が、今なお多くの現場で見受けられます。
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、業界全体で働き方改革が急務となっていますが、長年染み付いた文化をすぐに変えるのは容易ではありません。「残業している=頑張っている」という評価軸が依然として存在し、労働時間改善の心理的な障壁となっていることも、見過ごせない大きな原因の一つです。
2. 明日から実践できる現場監督の労働時間改善テクニック 個人編

会社の制度やチームの協力がなくても、まずは自分一人の意識と工夫で始められる労働時間改善テクニ
ックがあります。日々の業務に追われる中で「何から手をつければいいかわからない」と感じている方こそ、ここで紹介する個人のスキルアップ術から試してみてください。小さな改善の積み重ねが、やがて大きな時間の余裕を生み出します。
2.1 タスク管理術で一日の業務を可視化する
現場監督の仕事は、書類作成、現場巡回、打ち合わせ、安全管理など多岐にわたります。さらに、急なトラブル対応なども発生するため、常に複数のタスクを抱えている状態です。これらの業務を頭の中だけで管理しようとすると、抜け漏れが発生したり、優先順位を誤ったりして、結果的に非効率な働き方につながってしまいます。
そこでおすすめなのが、「重要度」と「緊急度」の2軸でタスクを4つに分類する「アイゼンハワー・マトリクス」です。手帳や付箋、または「Trello」や「Todoist」といったタスク管理ツールを使い、毎朝その日の業務を書き出して分類する習慣をつけましょう。自分が今何をすべきかが明確になり、目の前の作業に集中できるようになります。
2.2 PCスキル向上で書類作成の時間を短縮
現場から事務所に戻ってからの作業で、最も多くの時間を占めるのが書類作成です。この時間をいかに短縮できるかが、残業を減らすための大きな鍵となります。ここでは、すぐに効果が実感できる2つのPCスキルを紹介します。
2.2.1 よく使う書類はテンプレート化する
日報や週間工程表、安全ミーティングの議事録など、定期的に作成する書類は多いはずです。これらを毎回ゼロから作成するのは非常に非効率です。一度、完璧なフォーマットを作成し、WordやExcelのテンプレートとして保存しておきましょう。次回からは、日付や具体的な内容を更新するだけで書類が完成するため、作成時間を大幅に削減できます。また、書式が統一されることで、誰が見ても分かりやすい書類になるというメリットもあります。
2.2.2 Excelのショートカットキーと関数を覚える
マウスを何度もクリックする作業は、意外と時間をロスしています。よく使う操作はショートカットキーを覚え、手計算している部分は関数を使って自動化することで、作業スピードは劇的に向上します。すべてを覚える必要はありません。まずは以下のものから意識して使ってみてください。
覚えておきたいExcelショートカットキー | |
ショートカットキー | 操作内容 |
Ctrl + S | 上書き保存 |
Ctrl + C | コピー |
Ctrl + V | 貼り付け |
Ctrl + Z | 元に戻す |
Ctrl + 1 | セルの書式設定ダイアログを開く |
F2 | セルを編集モードにする |
また、簡単な計算やデータ集計には関数が必須です。電卓を叩く代わりに、関数を活用する癖をつけましょう。
現場で役立つExcel関数 | |
関数 | 用途 |
SUM | 合計値を計算する |
AVERAGE | 平均値を計算する |
IF | 条件によって表示する値を変える(例:検査結果の合否判定) |
VLOOKUP | 表から特定のデータを見つけ出す(例:部材リストから単価を検索) |
COUNTIF | 指定した条件に合うセルの数を数える(例:工程の進捗状況を把握) |
2.3 スマホアプリを活用した写真管理の効率化
工事写真の整理は、現場監督の業務の中でも特に時間のかかる作業の一つです。デジカメで撮影し、事務所のPCに取り込み、フォルダ分けをして、黒板の情報を元にファイル名を変更する…この一連の流れを、施工管理アプリを導入することで劇的に効率化できます。
「蔵衛門(くらえもん)」や「ミライ工事」といったアプリを使えば、スマホやタブレットで電子小黒板付きの写真を撮影し、その場で工種ごとに自動で仕分けることができます。これにより、事務所に戻ってから写真整理に費やしていた時間をほぼゼロにすることも可能です。移動時間や休憩時間などのスキマ時間を有効活用して写真整理を終わらせ、定時退社を目指しましょう。
3. チームで取り組む現場の労働時間改善アプローチ 組織編

現場監督個人の努力だけでは、労働時間の削減に限界があります。残業を根本的に減らすためには、現場チーム、ひいては組織全体で生産性向上に取り組む視点が不可欠です。ここでは、チームで実践できる具体的なアプローチを紹介します。これらの取り組みは、単なる時間短縮だけでなく、コミュニケーションの質を高め、若手社員の定着にも繋がる重要なステップです。
3.1 情報共有ツール導入によるコミュニケーションの円滑化
現場監督の業務時間を圧迫する大きな要因の一つが、電話やFAX、対面での「言った言わない」問題や、担当者不在による待ち時間です。ITツールを導入し、情報共有の仕組みをアップデートすることで、これらの非効率なコミュニケーションを劇的に改善できます。
3.1.1 ビジネスチャット(LINE WORKSなど)の活用
LINE WORKSやSlackといったビジネスチャットツールは、もはや現場の必需品です。電話と違って相手の時間を奪わず、記録が残るため、関係者間の迅速かつ正確な情報伝達を実現します。現場ごとや協力会社ごとにグループを作成すれば、写真や図面ファイルの共有も簡単に行え、業務中断のストレスから解放されます。
3.1.2 施工管理アプリ(ANDPADなど)での一元管理
ANDPADやKANNAに代表される施工管理アプリは、現場のあらゆる情報を一元管理するための強力なツールです。図面、工程表、写真、各種書類などをクラウド上で共有することで、関係者全員がいつでもどこでも最新の情報にアクセスできます。これにより、情報の属人化を防ぎ、ペーパーレス化を推進することで、事務所での書類整理時間を大幅に削減できます。
3.2 朝礼と夕礼の進め方を見直して会議時間を削減
毎日の朝礼や夕礼が、目的もなくただ集まるだけの形骸化した時間になっていませんか。会議の進め方を見直すだけで、貴重な時間を有効活用できます。大切なのは「目的の明確化」と「時間厳守」です。
朝礼・夕礼の改善例 | ||
項目 | 改善前(よくある例) | 改善後(目指す姿) |
目的 | とりあえず集まって報告する | 「作業内容と危険予知の確認」「進捗と翌日の段取り共有」など目的を絞る |
進め方 | 司会者が一方的に話す。雑談が多い。 | アジェンダを事前に共有し、要点のみを報告。タイムキーパーを置く。 |
時間 | 30分以上かかることも多い | 15分以内を徹底する |
情報共有 | 口頭での報告が中心 | 詳細はチャットや施工管理アプリで報告し、会議では決定事項や重要連絡のみを共有 |
このように会議のルールを定めることで、ダラダラとした時間をなくし、メリハリのあるコミュニケーションが可能になります。
3.3 協力会社との連携を強化し手戻りを防ぐ
急な仕様変更や連絡ミスによる「手戻り」は、現場監督だけでなく、職人や協力会社の時間と労力をも奪う最大の生産性阻害要因です。手戻りを防ぐ鍵は、事前の綿密な情報共有にあります。
工事開始前のキックオフミーティングで関係者全員の目線を合わせることはもちろん、施工管理アプリなどを活用して、協力会社ともリアルタイムで図面や工程を共有する体制を構築しましょう。コミュニケーションの齟齬をなくし、信頼関係を築くことが、結果的に現場全体のスムーズな進行と労働時間の削減に直結します。
4. 会社を動かす抜本的な労働時間改善策

個人の努力だけでは、現場監督の労働時間削減には限界があります。長時間労働が常態化した環境を根本から変えるには、会社全体を巻き込んだ組織的なアプローチが不可欠です。ここでは、経営層に働きかけ、会社を動かすための具体的な改善策を3つの視点から解説します。
4.1 建設DXツールの導入を提案する
アナログな業務プロセスが残業の大きな原因となっている場合、建設DX(デジタルトランスフォーメーション)ツールの導入は極めて効果的です。最新のITツールを活用することで、これまで多大な時間を要していた作業を自動化・効率化し、生産性を飛躍的に向上させることができます。会社に導入を提案する際は、具体的な費用対効果を示すことが重要です。削減できる人件費や工期短縮のメリットを提示し、経営層の理解を得ましょう。
代表的な建設DXツールと導入メリット | ||
ツールの種類 | 主な機能 | 導入による改善効果 |
施工管理アプリ (ANDPAD, KANNAなど) | 図面管理、工程表共有、写真整理、チャット機能、日報作成 | 関係者間の情報共有を円滑化し、移動時間や確認作業を大幅に削減。ペーパーレス化も促進。 |
ドローン | 測量、進捗状況の空撮、安全点検 | 従来数日かかっていた測量作業を数時間に短縮。高所など危険な場所の点検も安全に行える。 |
勤怠管理システム (KING OF TIMEなど) | GPSによる打刻、労働時間集計、残業管理 | 労働時間の実態を正確に把握し、サービス残業を防止。労務管理のコンプライアンスを強化。 |
4.2 働き方改革関連法に基づいた労務環境の整備を求める
2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。これは、個人の問題ではなく、会社として遵守すべき法的な義務です。法令遵守は企業の社会的責任であり、違反した場合は罰則のリスクがあることを根拠に、労務環境の整備を強く求めましょう。具体的には、36協定の見直しや、勤怠管理システムの導入による正確な労働時間の把握、サービス残業の撲滅などを会社に働きかけることが重要です。健全な労務環境は、従業員の定着率向上や採用競争力の強化にも直結します。
4.3 週休2日制の実現に向けた工程管理
「建設業界だから週休2日は無理だ」という考え方は、もはや通用しません。優秀な人材を確保し、業界全体のイメージを向上させるためにも、週休2日制の実現は急務です。これを達成するためには、会社として週休2日を前提とした工期設定と工程管理の仕組みを構築する必要があります。具体的には、以下の取り組みを会社に提案しましょう。
適正工期の確保:発注者との交渉段階で、週休2日を考慮した余裕のある工期を設定する。
工程表の見直し:4週8休などを念頭に、あらかじめ休日を組み込んだ工程表を作成・運用する。
協力会社との連携強化:週休2日制への理解を求め、休日取得に向けたスケジュール調整に協力してもらう体制を築く。
これらの抜本的な改革は、一人の現場監督の力だけでは実現が困難です。しかし、現状の課題と具体的な解決策、そして改善によって会社が得られるメリットを論理的に提示することで、経営層を動かすきっかけを作ることができます。
5. 労働時間を改善して得られた3つのメリット

長時間労働の改善は、単に「休みが増える」というだけではありません。現場監督としてのキャリア、そして人生そのものに大きなプラスの影響をもたらします。ここでは、私が実際に労働時間の改善に取り組んだ結果、得られた3つの大きなメリットをご紹介します。
5.1 プライベートの充実と心身の健康
何よりも大きな変化は、自分自身の時間と健康を取り戻せたことです。以前は仕事に追われ、帰宅後は寝るだけという毎日でしたが、今では生活の質が格段に向上しました。
具体的には、平日の夜に家族と食卓を囲めるようになり、週末には子供の行事に参加したり、趣味の釣りに没頭したりする時間が生まれました。十分な睡眠とリフレッシュの時間を確保できるようになったことで、慢性的な疲労感がなくなり、精神的なストレスも大幅に軽減されました。心身の健康は、質の高い仕事をするための最も重要な基盤であると改めて実感しています。
5.2 業務の質と生産性の向上
意外に思われるかもしれませんが、労働時間を減らしたことで、むしろ仕事の質と生産性は向上しました。時間に追われていた頃は、焦りから確認作業が疎かになり、手戻りやミスが発生しがちでした。しかし、時間に余裕が生まれたことで、一つ一つの業務に集中して取り組めるようになったのです。
特に、施工計画や段取りをじっくりと考える時間が確保できたことで、現場での手戻りが激減しました。「時間をかけたから良いものができる」という固定観念から脱却し、限られた時間で最大の成果を出す意識が芽生えたことが、生産性向上に直結しました。
労働時間改善による業務変化の一例 | ||
項目 | 改善前(残業80時間/月) | 改善後(残業40時間/月) |
書類の差し戻し | 週に1〜2回 | 月に1回程度 |
現場での手戻り発生 | 月に数回発生 | ほぼゼロに |
日中の集中力 | 夕方には低下しがち | 終業まで持続 |
休日出勤 | 毎週土曜は出勤 | 月1〜2回程度に減少 |
5.3 後輩や部下からの信頼獲得
自らが効率的に働き、定時で帰る姿を見せることは、チーム全体に良い影響を与えます。以前は「上司が帰らないと帰りづらい」という雰囲気が現場にありましたが、私が率先して働き方を変えたことで、若手社員も気兼ねなく退勤できるようになりました。
また、時間に余裕ができたことで、後輩や部下の相談に乗ったり、指導したりする時間も増えました。個々の業務進捗を細やかに把握し、的確なフォローができるようになった結果、チーム全体のスキルアップと信頼関係の構築につながりました。自らの働き方改革は、次世代の技術者を育成し、建設業界全体の未来を明るくする第一歩にもなるのです。
6. まとめ
現場監督の労働時間が長くなる原因は、膨大な書類作成や頻繁な調整業務など多岐にわたります。しかし、個人のPCスキル向上やタスク管理術、そしてLINE WORKSやANDPADといったツールを活用したチームでの情報共有によって、労働環境は大きく改善できます。明日からできる小さな工夫を積み重ね、会社全体を巻き込むことで労働時間を削減し、生産性の向上と働きがいのある職場環境を実現しましょう。
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