浴室のバリアフリーリフォーム|工事期間・流れ・費用を完全網羅
- seira murata
- 5 日前
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家族の安全や将来に備え、浴室のバリアフリーリフォームをお考えですか?本記事では、手すり設置や段差解消といった工事内容別の費用相場から、介護保険などの補助金制度、具体的な工事期間と流れ、失敗しない業者の選び方まで専門家が徹底解説。この記事を読めば、費用を抑えつつヒートショックや転倒事故を防ぐ、安全で快適な浴室を実現するための全てが分かります。
1. 浴室のバリアフリーリフォームで実現できること
浴室のバリアフリーリフォームは、単に段差をなくすだけではありません。高齢者や身体が不自由な方はもちろん、家族みんなが将来にわたって安全で快適に入浴できる空間を作るための改修です。具体的にどのようなことが実現できるのか、3つのポイントに分けて解説します。
1.1 ヒートショックを防ぐ暖かい浴室
冬場の入浴で特に注意したいのが、急激な温度変化によって血圧が大きく変動する「ヒートショック」です。暖かいリビングから寒い脱衣所・浴室へ移動することで、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすリスクが高まります。バリアフリーリフォームでは、浴室全体の断熱性を高め、温度差を少なくすることでヒートショックを予防します。
主な対策としては、浴室暖房乾燥機の設置や、壁・床・天井に断熱材を入れる、断熱性の高い窓に交換するといった方法があります。入浴前に浴室内を暖めておくだけで、身体への負担を大幅に軽減でき、一年を通して快適なバスタイムを実現します。
1.2 転倒事故を防ぐ安全な床と手すり
水や石鹸で滑りやすい浴室は、家庭内で最も転倒事故が多い場所の一つです。特に筋力が低下した高齢者にとっては、ささいなことで大きな怪我につながる危険性があります。バリアフリーリフォームでは、床材の変更や手すりの設置によって、転倒リスクを最小限に抑えます。
床材は、水に濡れても滑りにくい表面加工が施された素材や、水はけが良く乾きやすい素材に変更します。また、身体を支えるための手すりは、動作に合わせて適切な場所に取り付けることが重要です。
設置場所 | 主な目的と効果 |
出入り口(縦手すり) | ドアの開閉時に身体を安定させ、安全な出入りをサポートします。 |
洗い場(L字型手すり) | 立ち座りの動作や、洗い場内での移動を補助します。 |
浴槽の横(L字型・横手すり) | 浴槽をまたぐ際の姿勢を安定させ、安全な出入りを助けます。 |
浴槽の中(縦手すり) | 浴槽内での立ち上がりや、姿勢の保持をサポートします。 |
1.3 介助しやすく身体への負担が少ない出入り口と浴槽
ご家族による介助が必要な場合や、車椅子を利用する場合、従来の浴室では介助者・利用者の双方に大きな負担がかかります。バリアフリーリフォームは、こうした負担を軽減し、利用者の自立を促すことにも繋がります。
出入り口の段差を解消するのはもちろん、扉の種類を変更することも有効です。開閉スペースが必要な開き戸から、軽い力で開け閉めできる引き戸や折れ戸に交換することで、介助スペースを確保しやすくなり、万が一浴室で倒れた際にも救助しやすくなります。
また、浴槽は縁の高さが低く、またぎやすいものに交換することで、一人での入浴がしやすくなります。浴槽内に腰掛けられるステップが付いたタイプや、身体を安定させやすい形状のものを選ぶことで、安全かつ楽な姿勢で入浴できます。
2. 【工事内容別】浴室バリアフリーリフォームの費用相場

浴室のバリアフリーリフォームにかかる費用は、工事内容や浴室の広さ、現状、そして使用する製品のグレードによって大きく変動します。ここでは、代表的な工事内容ごとの費用相場を解説します。ご自宅の状況と照らし合わせながら、リフォーム計画の参考にしてください。
2.1 手すりの設置費用
浴室内の転倒事故を防ぐために不可欠な手すりの設置費用は、1本あたり3万円~10万円が相場です。この費用には、手すり本体の価格と取り付け工事費が含まれます。浴槽の出入りを補助する縦手すり、洗い場での立ち座りや姿勢維持を支えるL字型手すりなど、設置場所や形状によって価格は変動します。壁の下地が弱い場合は、補強工事が必要となり追加費用が発生することがあります。
2.2 段差解消の費用
脱衣所と洗い場の間の段差をなくす工事の費用相場は、5万円~20万円程度です。特に在来工法の浴室でよく見られる高い敷居は、つまずきの原因となり大変危険です。工事方法は、洗い場の床をかさ上げして高さを合わせる方法や、浴室の入り口にすのこを設置する簡易な方法、ユニットバスへ交換する方法など多岐にわたります。大掛かりな工事になるほど費用は高くなります。
2.3 滑りにくい床材への変更費用
濡れて滑りやすい浴室の床を、安全性の高い床材に変更するリフォームの費用は5万円~15万円が目安です。既存のタイルの上から滑り止め効果のある浴室用シートを貼る比較的安価な方法から、床材自体を交換する方法まであります。TOTOの「ほっカラリ床」やLIXILの「キレイサーモフロア」など、水はけが良く、冬場でも足裏の冷たさを感じにくい高機能な床材が人気を集めています。
2.4 扉を引き戸や折れ戸へ交換する費用
開閉時にスペースを取らず、軽い力で操作できる扉への交換費用は、10万円~25万円が相場です。一般的な開き戸は、開閉時に体をよける必要があり、車椅子での出入りも困難です。少ないスペースで開閉できる折れ戸や、横にスライドさせる引き戸に交換することで、出入りがスムーズになり介助の負担も軽減されます。扉の交換に伴い、壁の解体や補強が必要な場合は費用が追加でかかります。
2.5 浴槽の交換費用
またぎやすい高さの浴槽に交換するリフォームの費用は、15万円~40万円程度です。昔ながらの深くてまたぎにくい浴槽から、またぎ部分の高さが抑えられた浴槽や、浴槽内にステップがあるタイプに交換します。在来工法の浴室で浴槽のみを交換する場合、周囲の解体や防水工事も必要になるため、ユニットバスの一部として交換するよりも高額になる傾向があります。
2.6 浴室暖房乾燥機の設置費用
冬場のヒートショック対策に有効な浴室暖房乾燥機の設置費用は、10万円~25万円が目安です。既存の換気扇と交換するタイプや、壁に取り付ける後付けタイプなどがあります。暖房機能だけでなく、衣類乾燥や換気、涼風機能を備えた多機能なモデルほど価格は高くなります。設置には、分電盤からの専用回路増設などの電気工事が必要となる場合があります。
2.7 ユニットバス全体の交換費用
浴室全体をバリアフリー仕様のユニットバス(システムバス)に交換する場合、費用は70万円~150万円以上が相場となります。この工事では、手すりの標準装備、段差解消、滑りにくい床、開閉しやすい扉など、バリアフリーに必要な要素をまとめて実現できます。費用には、既存浴室の解体・撤去費、ユニットバス本体価格、設置工事費、給排水・電気工事費などが含まれます。選ぶユニットバスのグレードによって費用は大きく変わります。
ユニットバスのグレード別費用相場 | ||
グレード | 費用相場 | 特徴 |
スタンダード | 70万円~100万円 | 基本的な機能を備えたシンプルなモデル。費用を抑えつつバリアフリー化したい場合におすすめです。 |
ミドルグレード | 100万円~130万円 | デザイン性や清掃性、断熱性などの機能が充実した、最も人気のある価格帯です。 |
ハイグレード | 130万円~ | 最新機能や高級感のある素材を使用。肩湯や調光機能など、入浴の快適性を最大限に高めるモデルです。 |
3. 浴室リフォームで活用できる補助金や助成金制度

浴室のバリアフリーリフォームは、将来の安心な暮らしへの投資ですが、費用が気になるところです。しかし、国や自治体が提供する補助金や助成金、減税制度を活用することで、経済的な負担を大幅に軽減できる可能性があります。ここでは、代表的な3つの制度について、その内容や利用条件を詳しく解説します。
3.1 介護保険の住宅改修費
介護保険制度では、要支援または要介護認定を受けている方が、自宅で安全に暮らし続けるための住宅改修に対して費用の一部が支給されます。浴室のバリアフリーリフォームも対象となる場合が多く、最も利用しやすい制度の一つです。
支給限度額は、要介護度にかかわらず原則として1人あたり20万円までで、そのうち所得に応じて1割から3割が自己負担となります。つまり、最大で18万円の補助が受けられる計算です。改修前にケアマネジャー(介護支援専門員)に相談し、市区町村への申請が必要となります。
介護保険の住宅改修 対象工事の例(浴室関連) | |
工事の種類 | 具体的な工事内容 |
手すりの取り付け | 浴槽の出入り、洗い場での立ち座り、扉の開閉などを補助するための手すりを設置する工事。 |
段差の解消 | 浴室の出入り口の敷居をなくしたり、洗い場と脱衣所の床の高さを合わせたりする工事。すのこの設置なども含まれる。 |
床材の変更 | 滑りやすいタイル床などを、水に濡れても滑りにくい素材の床材に変更する工事。 |
扉の取り替え | 開き戸から、開閉スペースが少なく身体への負担も少ない引き戸や折れ戸、アコーディオンカーテンなどへ交換する工事。 |
その他 | 浴槽の交換(またぎやすい高さの浴槽への変更)、シャワーチェアの設置に伴う水栓金具の交換など。 |
3.2 自治体のリフォーム補助金制度
お住まいの市区町村が、独自にバリアフリーリフォームに関する補助金や助成金制度を設けている場合があります。「高齢者住宅改修費用助成制度」や「障害者住宅改造費助成」といった名称で実施されていることが多いです。
これらの制度は、介護保険の対象とならない方でも利用できたり、介護保険と併用して自己負担分をさらに軽減できたりするケースがあります。ただし、制度の有無、対象者、補助金額、申請期間などは自治体によって大きく異なるため、注意が必要です。
リフォームを計画する際は、まずお住まいの市区町村のウェブサイトを確認するか、高齢者福祉課や介護保険課などの担当窓口に問い合わせてみましょう。
3.3 減税制度の活用
一定の要件を満たすバリアフリーリフォームを行った場合、所得税や固定資産税が減額される制度を利用できます。補助金とは異なり、支払った税金が戻ってくる、あるいは翌年以降の税金が安くなる仕組みです。利用するには確定申告が必要です。
主なバリアフリーリフォームに関する減税制度 | ||
制度の種類 | 概要 | 主な要件 |
投資型減税 (所得税の控除) | ローンを利用しない自己資金でのリフォームが対象。工事費用の10%がその年の所得税額から控除される。 | ・本人が居住する住宅であること ・工事費用が50万円超であること ・合計所得金額が2,000万円以下であること |
住宅ローン減税 (所得税の控除) | 返済期間10年以上のリフォームローンを利用した場合、年末のローン残高の0.7%が最大13年間、所得税額から控除される。 | ・本人が居住する住宅であること ・合計所得金額が2,000万円以下であること ・床面積が50㎡以上であること |
固定資産税の減額 | 工事完了の翌年度分の家屋にかかる固定資産税が3分の1減額される。 | ・新築後10年以上経過した住宅であること ・工事費用が50万円超であること ・床面積が50㎡以上280㎡以下であること |
これらの制度は適用要件が複雑なため、リフォーム会社の担当者や税務署に相談し、どの制度が利用できるか事前に確認しておくことが重要です。
4. 浴室バリアフリーリフォームの工事期間と流れ

浴室のバリアフリーリフォームを検討する際、全体の流れと必要な期間を事前に把握しておくことは非常に重要です。計画的に進めることで、スムーズなリフォームが実現し、生活への影響も最小限に抑えられます。ここでは、相談から工事完了までの具体的なステップと、工事内容別の期間の目安を詳しく解説します。
4.1 リフォームの相談から工事完了までの流れ
浴室リフォームは、情報収集から始まり、業者との打ち合わせ、契約、そして実際の工事へと進んでいきます。各ステップで確認すべきポイントを理解し、後悔のないリフォームを目指しましょう。
4.1.1 ステップ1 情報収集とリフォーム会社の選定
まず、ご家族でどのようなリフォームが必要かを話し合い、具体的な要望を整理します。例えば、「手すりを付けて立ち座りを楽にしたい」「入口の段差をなくしたい」「冬でも暖かい浴室にしたい」など、目的を明確にすることが大切です。次に、インターネットやカタログで情報を集め、バリアフリーリフォームの実績が豊富なリフォーム会社を2〜3社リストアップします。
4.1.2 ステップ2 現地調査と見積もり依頼
候補のリフォーム会社に連絡を取り、現地調査を依頼します。担当者がご自宅を訪問し、浴室の寸法や構造、配管の位置などを確認した上で、要望に沿ったプランと見積書を作成します。必ず複数の業者から相見積もりを取り、費用だけでなく提案内容や担当者の対応を比較検討することが、最適な業者選びの鍵となります。
4.1.3 ステップ3 契約と着工準備
見積もり内容と提案プランに納得できる会社が見つかったら、工事請負契約を結びます。契約書には、工事内容、金額、工期、支払い条件、保証内容などが明記されています。契約書の内容は隅々まで確認し、疑問点があれば必ず契約前に解消しておきましょう。契約後は、商品の色や仕様の最終決定、工事日程の調整、必要であれば近隣への挨拶など、着工に向けた準備を進めます。
4.1.4 ステップ4 工事開始から完成まで
契約内容に基づき、工事が始まります。工事中は、ほこりや傷を防ぐために、搬入経路や作業スペース周辺に養生が施されます。工事完了後には、担当者と一緒に仕上がりをチェックし、傷や不具合がないかを確認します。問題がなければ引き渡しとなり、新しい設備の使い方の説明などを受けます。この最終確認は、後々のトラブルを避けるためにも非常に重要です。
4.2 工事内容ごとの一般的な期間
浴室リフォームの工事期間は、工事の規模や内容によって大きく異なります。特に、既存の浴室が「在来工法」か「ユニットバス」かによって工期は変動します。以下に、工事内容ごとの一般的な期間の目安をまとめました。
工事内容 | 一般的な期間の目安 | 備考 |
手すりの設置 | 半日~1日 | 壁の補強が必要な場合は、工期が長くなることがあります。 |
段差解消・床材の変更 | 1日~2日 | 出入口の敷居撤去や、滑りにくい床材への張り替え工事です。 |
扉の交換(開き戸から引き戸など) | 1日~2日 | 壁の解体や補修を伴う場合は、期間が延びることがあります。 |
浴槽のみの交換 | 2日~4日 | 在来工法の浴室の場合、防水工事などで工期が長くなる傾向があります。 |
浴室暖房乾燥機の設置 | 半日~1日 | 換気扇のタイプや電気配線の状況によって作業時間が変わります。 |
ユニットバスからユニットバスへの交換 | 3日~5日 | 解体から設置まで比較的スムーズに進むことが多い工事です。 |
在来工法からユニットバスへの交換 | 5日~1週間程度 | 解体、土間コンクリートの打設、給排水管工事などが必要なため、工期は長くなります。 |
※上記の期間はあくまで目安です。建物の構造や現場の状況、オプション工事の有無によって変動する可能性がありますので、正確な工期は必ずリフォーム会社にご確認ください。
5. 失敗しない浴室リフォーム業者の選び方

浴室のバリアフリーリフォームは、ご家族の安全と快適な暮らしに直結する重要な工事です。専門的な知識や技術が求められるため、業者選びが成功のカギを握ります。ここでは、安心して任せられるリフォーム業者を選ぶための3つの重要なポイントを解説します。
5.1 バリアフリーリフォームの実績が豊富か
まず確認したいのが、バリアフリーリフォームの実績です。単に設備を新しくするだけでなく、利用者の身体状況や生活動線を深く理解した上で、最適なプランを提案できる業者を選ぶ必要があります。
業者の公式ウェブサイトで、浴室のバリアフリーリフォームに関する具体的な施工事例を確認しましょう。ビフォーアフターの写真だけでなく、どのような課題を解決するために、どのような工事を行ったのかが詳しく解説されているかをチェックしてください。また、介護保険の住宅改修制度を利用した実績が豊富かどうかも、信頼できる業者を見極めるための一つの指標となります。
5.2 福祉住環境コーディネーターが在籍しているか
福祉住環境コーディネーターは、高齢者や障がいを持つ方々が安全で快適に暮らせる住環境を提案する専門家です。この資格を持つスタッフが在籍しているリフォーム会社は、より専門的な視点からのアドバイスが期待できます。
福祉住環境コーディネーターは、医療・福祉・建築の幅広い知識を持っています。そのため、現在の身体状況だけでなく、将来的な変化も見据えた最適なリフォームプランを提案してくれます。また、介護保険の住宅改修費をはじめとする補助金制度の申請手続きについても詳しいため、スムーズなサポートが受けられる点も大きなメリットです。
5.3 複数の業者から相見積もりを取る
リフォーム業者を決める際には、必ず複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」を行いましょう。これは単に費用を比較するためだけではありません。提案内容や担当者の対応などを総合的に比較検討し、最も信頼できるパートナーを見つけるために不可欠なプロセスです。
最低でも3社程度から見積もりを取り、それぞれの内容をじっくり比較することをおすすめします。安さだけで選んでしまうと、後から追加費用が発生したり、工事の質が低かったりするリスクがあります。下記の表を参考に、各項目を慎重にチェックしましょう。
相見積もり比較チェックリスト | |
チェック項目 | 確認するポイント |
見積もり金額と内訳 | 工事内容や部材の単価、数量などが詳細に記載されているか。「一式」などの曖昧な表現が多くないかを確認します。 |
提案内容の具体性 | こちらの要望が正確に反映されているか。なぜそのプランや製品を推奨するのか、専門的な根拠に基づいた説明があるかを確認します。 |
担当者の専門知識と対応 | 質問に対して的確に答えられるか。こちらの不安や疑問に寄り添い、丁寧に対応してくれるかを見極めます。 |
保証・アフターサービス | 工事後の保証期間や内容、定期点検の有無など、アフターフォロー体制が整っているかを確認します。 |
6. まとめ
浴室のバリアフリーリフォームは、ヒートショックや転倒事故のリスクを減らし、家族全員が安心して使える空間を作るために不可欠です。工事費用は手すりの設置からユニットバス全体の交換まで様々ですが、介護保険や自治体の補助金制度を活用すれば負担を軽減できます。リフォームを成功させる最も重要な結論は、バリアフリー工事の実績が豊富で、専門知識を持つ業者を複数比較検討することです。本記事を参考に、安全で快適な浴室リフォームを実現しましょう。
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