知らないと損!アスベスト撤去業者の選び方と費用を安くするコツを専門家が伝授
- seira murata
- 9月18日
- 読了時間: 20分

建物の解体やリフォームでアスベストの撤去が必要になり、業者選びにお困りではありませんか?この記事では、失敗しないアスベスト撤去業者の選び方7つのポイントから、費用相場、補助金で安くするコツまで専門家が徹底解説します。安全な工事には、法律で定められた許可と豊富な実績を持つ専門業者を選ぶことが最も重要です。悪質な業者の手口も紹介するので、安心して依頼できる優良業者を見つける知識が身につきます。
1. アスベスト撤去はなぜ専門業者への依頼が必須なのか
「少しだけだから自分で剥がしてしまおう」「費用が安いから」といった安易な理由で、アスベストの知識がない業者やDIYでの撤去を考えるのは絶対にやめてください。アスベストの除去は、専門的な知識と技術、そして厳格な法規制に則った手順が不可欠な工事です。不適切な方法で撤去作業を行うと、目に見えないアスベスト繊維が周囲に飛散し、作業者自身だけでなく、ご家族や近隣住民にまで深刻な健康被害を及ぼす危険性があります。大切な家族と地域社会の安全を守るためにも、必ず専門の業者に依頼しなければなりません。
1.1 アスベストの危険性と健康被害
アスベスト(石綿)は、その安価さや耐久性から「奇跡の鉱物」と呼ばれ、過去に多くの建材に使用されてきました。しかし、その正体は極めて細い繊維状の鉱物であり、「静かな時限爆弾」とも呼ばれるほどの高い発がん性を持っています。髪の毛の5,000分の1ほどしかない微細な繊維は、飛散しても目に見えず、知らないうちに呼吸によって体内に吸い込んでしまいます。一度吸い込むと体外に排出されにくく、肺の組織に長く留まり、20年~50年という非常に長い潜伏期間を経て、以下のような命に関わる深刻な病気を引き起こす原因となります。
アスベストが原因で発症する代表的な疾患 | ||
疾患名 | 主な症状 | 潜伏期間の目安 |
悪性中皮腫 | 胸の痛み、息切れ、咳、胸水がたまる | 20年~50年 |
肺がん | 咳、痰、血痰、呼吸困難、発熱 | 15年~40年 |
石綿(アスベスト)肺 | 息切れ、呼吸困難、咳 | 15年~20年 |
びまん性胸膜肥厚 | 呼吸困難、胸の痛み | 30年~40年 |
これらの病気は初期症状が現れにくく、気づいた時にはかなり進行しているケースが少なくありません。だからこそ、アスベストの飛散を未然に防ぐ専門的な撤去工事が極めて重要なのです。
1.2 アスベストに関する法律と規制
アスベストの危険性から、現在ではその取り扱いが法律によって厳しく規制されています。主に「大気汚染防止法」と「石綿障害予防規則(石綿則)」に基づき、アスベストの除去作業を行う際には、様々な義務が定められています。これらの法律は、作業員の安全確保と、周辺環境へのアスベスト飛散防止を目的としています。
アスベスト撤去に関する主な法律と規制内容 | |
法律・規則名 | 主な規制内容 |
大気汚染防止法 | ・すべての建材を対象としたアスベスト含有の事前調査の義務化 ・特定建築材料(吹付け材など)の除去等作業における作業基準の遵守 ・都道府県等への作業計画の届出義務 ・作業結果の記録と保存 |
石綿障害予防規則(石綿則) | ・労働者のアスベストばく露防止措置 ・石綿作業主任者の選任 ・作業計画の作成と労働基準監督署への届出義務 ・特別教育の実施、保護具の使用義務 ・作業場の隔離(負圧化)、湿潤化措置 |
これらの複雑な手続きや専門的な作業基準を遵守せずに工事を行うことは、法律違反となります。違反した場合は作業を行った業者だけでなく、工事を依頼した施主(発注者)にも厳しい罰則(懲役や罰金)が科される可能性があるため、法律を遵守する信頼できる専門業者を選ぶことが不可欠です。
2. 失敗しないアスベスト撤去業者の選び方7つのポイント

アスベスト撤去は専門性が高く、法律で厳しく規制されている工事です。業者選びに失敗すると、健康被害や近隣トラブル、高額な追加費用など、取り返しのつかない事態を招きかねません。ここでは、信頼できる優良な業者を見極めるための7つの重要なポイントを詳しく解説します。複数の業者を比較検討する際のチェックリストとしてご活用ください。
2.1 ポイント1 都道府県の許可や登録を確認する
アスベスト撤去工事を行うには、法律に基づいた許可や登録が必須です。無許可の業者は違法であり、絶対に関わってはいけません。必ず以下の許可・登録の有無を確認しましょう。
2.1.1 解体工事業登録と産業廃棄物収集運搬業許可
アスベスト撤去工事は、建物の解体や改修に伴うことが多いため、「解体工事業登録」が必要です。さらに、撤去したアスベストは特別管理産業廃棄物に該当するため、それを適切に運搬・処理するための「産業廃棄物収集運搬業許可(石綿含有産業廃棄物を含む)」も不可欠です。見積もりを依頼する際に、これらの許可証の写しを提示してもらい、許可番号や有効期限を必ず確認しましょう。
2.2 ポイント2 アスベスト撤去工事の実績が豊富か
アスベスト撤去は、建物の構造やアスベストのレベル(発じん性)によって工事の難易度が大きく異なります。そのため、業者の実績、特に自身が依頼する工事と類似した条件での施工実績が豊富かどうかは非常に重要な判断基準となります。
業者のホームページで施工事例を確認したり、直接問い合わせて過去の工事経歴書や写真などを見せてもらうと良いでしょう。実績豊富な業者は、様々な状況に対応できるノウハウを持っており、安全かつ効率的な工事が期待できます。
2.3 ポイント3 石綿作業主任者などの有資格者が在籍しているか
アスベスト撤去作業は、専門的な知識と技術を持つ有資格者が監督・実行することが法律で義務付けられています。資格を持つ専門家が在籍していることは、安全管理体制が整っている証です。特に以下の資格者がいるかを確認してください。
資格名 | 役割 |
石綿作業主任者 | アスベスト除去作業現場で、作業員への指揮・監督、保護具の使用状況の監視などを行う責任者。現場に必ず配置しなければなりません。 |
特別管理産業廃棄物管理責任者 | 撤去したアスベストを特別管理産業廃棄物として、適正に保管・処理するための管理を行う責任者。 |
これらの資格者証の提示を求めることで、業者の信頼性を確かめることができます。
2.4 ポイント4 見積書の内訳が明確で分かりやすいか
複数の業者から見積もりを取り、内容を比較検討することは基本です。その際、総額だけを見るのではなく、「何に」「いくら」かかるのか、内訳が詳細かつ明確に記載されているか'mark>をチェックしましょう。「工事一式」といった曖昧な表記が多い見積書は要注意です。優良な業者は、以下のような項目を分かりやすく記載してくれます。
事前調査費用
届出書類作成費用
仮設足場、養生費用
除去作業費用(レベル別)
廃棄物運搬・処分費用
完了後の測定費用
諸経費
2.4.1 追加料金の有無を必ず確認
見積もりを確認する際、最もトラブルになりやすいのが追加料金です。「どのような場合に追加料金が発生するのか」を契約前に必ず書面で確認しましょう。「予期せぬアスベストが発見された場合」など、具体的な条件と、その際の料金算出方法を明確にしておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。
2.5 ポイント5 損害賠償責任保険に加入しているか
どれだけ優良な業者でも、工事にアクシデントはつきものです。万が一、作業中にアスベストを飛散させてしまったり、近隣の建物を破損させてしまったりした場合に備え、業者が損害賠償責任保険に加入しているかを確認することは、施主自身のリスク管理として非常に重要です。
保険への加入は任意ですが、誠実な業者であれば万が一に備えて加入しているはずです。保険証券のコピーを提示してもらい、補償内容や保険金額を確認しておくとさらに安心です。
2.6 ポイント6 近隣住民への配慮や説明を丁寧に行うか
アスベスト撤去工事は、近隣住民に不安を与える可能性があります。そのため、工事内容や安全対策について、事前に近隣へ丁寧な説明を行ってくれる業者を選びましょう。
「どのような挨拶回りをしてくれるのか」「説明用の資料は用意してくれるのか」といった点を契約前に確認してください。近隣への配慮を怠る業者は、作業そのものも雑である可能性が高く、トラブルの原因となります。
2.7 ポイント7 担当者の対応が誠実で信頼できるか
最終的には、人と人との信頼関係が重要になります。問い合わせや現地調査の際に、担当者の対応をよく観察しましょう。
専門用語ばかりでなく、素人にも分かりやすく説明してくれるか
質問に対して、曖昧にせず的確に答えてくれるか
不安を煽るような言動はないか
レスポンスが早く、約束を守るか
親身になって相談に乗り、誠実な対応をしてくれる担当者がいる業者であれば、安心して大切な工事を任せることができるでしょう。
3. 要注意!悪質なアスベスト撤去業者の特徴と手口

アスベスト撤去を依頼する際、最も避けなければならないのが悪質な業者との契約です。知識がないまま依頼してしまうと、不適切な工事による健康被害の拡大や、高額な追加請求、近隣トラブルなど、深刻な問題に発展しかねません。ここでは、悪質な業者に共通する特徴と手口を具体的に解説します。
3.1 大幅な値引きや即決を迫る業者
「キャンペーン中なので今だけ半額です」「今日契約してくれれば特別に安くします」といった言葉で契約を急かす業者には注意が必要です。アスベストの撤去工事は、作業員の安全確保やアスベストの飛散防止措置など、法律で定められた手順を遵守する必要があり、極端な値引きはできません。安さの裏には、必要な工程を省く手抜き工事や、除去したアスベストの不法投棄といった違法行為が隠されている危険性があります。
優良な業者は、顧客がじっくり検討する時間を与えてくれます。甘い言葉で即決を迫る業者は、まず疑ってかかるべきでしょう。
3.2 現地調査をせずに見積もりを出す業者
電話やメールだけで「一式〇〇万円です」といった概算の見積もりを提示する業者も危険です。アスベストの撤去費用は、建物の構造、アスベストのレベルや使用されている面積、作業環境、搬出経路など、様々な要因で大きく変動します。そのため、正確な費用を算出するには、専門家による綿密な現地調査が不可欠です。
現地調査をせずに提出された見積もりは、後から「想定外の作業が必要になった」などと理由をつけ、高額な追加費用を請求されるトラブルの原因になります。必ず現地調査を行った上で、詳細な内訳が記載された見積書を提出する業者を選びましょう。
3.3 許可や資格を提示できない業者
アスベストの撤去工事を行うには、国や都道府県から特定の許可や登録を得る必要があり、現場には有資格者を配置することが法律で義務付けられています。これらの許可証や資格者証の提示を求めた際に、ごまかしたり、提示を拒んだりする業者は、無許可・無資格で営業している違法業者の可能性が極めて高いです。違法業者に依頼した場合、不適切な工事が行われるだけでなく、万が一事故が起きた際に依頼主が責任を問われるケースもあります。
契約前には、以下の許可や資格を保有しているか、必ず書面で確認させてもらいましょう。
許可・資格の種類 | 概要 |
解体工事業登録 | 解体工事を行うために必要な都道府県への登録です。 |
産業廃棄物収集運搬業許可 | 撤去したアスベスト(産業廃棄物)を収集・運搬するために必要な許可です。 |
石綿作業主任者 | アスベスト除去作業の現場で、作業員への指揮や監督を行うための国家資格です。 |
特別管理産業廃棄物管理責任者 | 毒性の強い廃石綿(レベル1・2)を扱う事業所に設置が義務付けられている国家資格です。 |
これらの許可や資格は、会社のウェブサイトに掲載されていたり、問い合わせればすぐに提示してくれたりするのが一般的です。誠実に対応してくれない場合は、その業者との契約は見送るのが賢明です。
4. アスベスト撤去の費用相場と内訳

アスベスト撤去工事の費用は、アスベストの飛散リスクを示す「レベル」や建物の状況によって大きく変動します。費用を把握するためには、まず費用の内訳とレベルごとの相場を知ることが重要です。主な内訳は、事前調査費、除去工事費(養生、撤去作業)、廃棄物処理費、そして各種届出費用などから構成されます。
4.1 アスベストのレベル別 撤去費用の目安
アスベスト建材は、発じん性(飛散のしやすさ)に応じてレベル1からレベル3に分類されます。レベルの数字が小さいほど危険性が高く、厳重な対策が必要になるため、撤去費用も高額になる傾向があります。
以下は、アスベストのレベルごとの撤去費用の目安をまとめた表です。ただし、これはあくまで一般的な相場であり、現場の状況によって費用は変動します。
アスベストレベル | 主な建材例 | 撤去費用の目安(1㎡あたり) | 備考 |
レベル1 (発じん性が著しく高い) | 吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウールなど | 20,000円~85,000円 | 隔離養生、負圧除じん装置の設置など、最も厳重な管理が必要。 |
レベル2 (発じん性が高い) | 保温材、耐火被覆材、断熱材など | 10,000円~60,000円 | レベル1に準じた飛散防止対策が必要。配管に巻き付けられている場合など、形状が複雑なことが多い。 |
レベル3 (発じん性が比較的低い) | スレート屋根材、サイディング、Pタイルなど | 2,000円~20,000円 | 硬い板状の建材が多く、破砕・切断しないよう手作業で丁寧に撤去する。 |
4.1.1 レベル1 吹付け材の費用相場
レベル1は、綿状の石綿が吹き付けられているため、わずかな振動でも飛散するリスクが最も高い状態です。そのため、作業場所をシートで完全に隔離し、内部の気圧を下げてアスベストが外部に漏れないようにする「負圧隔離養生」という厳重な対策が必須となります。作業員も専用の防護服や呼吸用保護具を着用する必要があり、これらの高度な安全対策と専門技術が求められるため、費用は最も高額になります。
4.1.2 レベル2 保温材や耐火被覆材の費用相場
レベル2は、主に配管の保温材や建物の柱・梁の耐火被覆材として使用されています。レベル1ほどではありませんが、脆く崩れやすいため発じん性は高いとされています。レベル1と同様に作業場の隔離や湿潤化などの措置が必要となり、費用も比較的高めです。特に、複雑な形状の配管に巻き付けられている場合は、手作業での丁寧な除去が求められ、作業時間も長くなる傾向があります。
4.1.3 レベル3 スレート屋根など成形板の費用相場
レベル3は、セメントなどで固められた硬い板状の建材(スレート、サイディング、ビニル床タイルなど)が該当します。そのままの状態ではアスベストが飛散するリスクは低いですが、割ったり砕いたりすると飛散する危険性があるため、原則として手作業で丁寧に取り外します。他のレベルに比べて大掛かりな隔離養生は不要な場合が多く、費用は比較的安価に抑えられます。
4.2 費用を左右する要因とは
アスベスト撤去の最終的な費用は、レベル別の単価だけでなく、以下のような様々な要因によって変動します。
工事の規模と面積:撤去するアスベスト建材の面積や量が多いほど総額は上がりますが、面積あたりの単価は割安になることがあります。
建物の立地と周辺環境:トラックが入れない狭い道路に面している、隣家との距離が近い、高所作業で足場の設置が必要など、作業の難易度が上がる場合は追加費用が発生します。
除去方法:アスベストの状態によっては、除去だけでなく、薬剤で固めて封じ込める「封じ込め工法」や、板材で覆ってしまう「囲い込み工法」が選択される場合があり、工法によって費用は異なります。
廃棄物の処理量:撤去したアスベスト建材は、特別管理産業廃棄物として厳重に処分する必要があります。この量が多いほど、運搬・処分費用は増加します。
諸経費:上記以外にも、事前調査費用、行政への書類作成・届出代行費用、機材の運搬費、現場管理費などが別途必要です。
正確な費用を知るためには、必ず複数の専門業者に現地調査を依頼し、詳細な見積書を比較検討することが不可欠です。
5. アスベスト撤去費用を安くするコツは補助金の活用

高額になりがちなアスベストの撤去費用ですが、その経済的負担を軽減するために国や地方自治体が補助金・助成金制度を設けています。これらの制度を賢く活用することが、費用を抑える最も効果的な方法です。解体やリフォームを検討している方は、まずはお住まいの地域で利用できる制度がないか確認してみましょう。
5.1 国や地方自治体のアスベスト除去に関する補助金制度
アスベスト除去に関する補助金制度は、国が主体となるものと、各地方自治体(都道府県や市区町村)が独自に設けているものがあります。代表的なものとして、国土交通省の「住宅・建築物アスベスト改修事業」があり、多くの自治体の制度がこれを基にしています。
ただし、制度の有無や名称、補助対象、補助率、上限額などは自治体によって大きく異なります。以下に一般的な補助金制度の概要をまとめました。
項目 | 内容の例 |
補助対象となる事業 |
|
補助対象となる建築物 |
※吹付けアスベスト(レベル1)やアスベスト含有保温材(レベル2)が対象となる場合が多いです。 |
補助率・補助限度額 |
※自治体や建物の用途によって大きく異なります。 |
これらの補助金制度は、年度ごとに予算が定められており、申請額が予算の上限に達した時点で受付が終了してしまいます。そのため、利用を検討している場合は、できるだけ早い段階で建物の所在地を管轄する市区町村の窓口(建築指導課、環境保全課など)に問い合わせ、情報収集を始めることが重要です。
5.2 補助金を利用する際の注意点
補助金制度は費用負担を大きく軽減できる一方で、利用するにはいくつかの重要な注意点があります。申請してから後悔しないよう、以下のポイントを必ず押さえておきましょう。
5.2.1 必ず工事の契約・着工前に申請する
最も重要な注意点は、補助金の申請は必ず工事の契約や着工前に行う必要があるということです。すでに始まっている工事や、完了してしまった工事は原則として補助の対象外となります。業者に見積もりを依頼する段階で、補助金の利用を検討していることを伝え、申請手続きに協力してもらえるか確認しておきましょう。
5.2.2 申請要件や対象が細かく定められている
補助金を受け取るには、所得制限、建物の用途、対象となるアスベスト建材の種類、税金の滞納がないことなど、自治体ごとに細かな要件が定められています。また、補助金の対象となる業者が、その自治体に登録された業者に限られる場合もあります。申請を検討する際は、まずご自身が要件を満たしているか、募集要項をよく確認することが不可欠です。
5.2.3 申請から交付決定まで時間がかかる
補助金の申請書類は複雑なものが多く、提出してから交付が決定されるまでには一定の審査期間が必要です。すぐに工事を始めたい場合でも、交付決定を待たずに着工すると補助金が受けられなくなるため、全体のスケジュールには余裕を持たせておきましょう。
6. 問い合わせから工事完了までの流れ

アスベスト撤去工事は、専門的な知識と厳格な手順が求められます。安心して工事を任せるためにも、問い合わせから工事完了までの一連の流れを把握しておくことが重要です。ここでは、一般的な7つのステップに分けて、それぞれの段階で何が行われるのかを具体的に解説します。
6.1 ステップ1 アスベストの事前調査
アスベスト撤去の第一歩は、建物にアスベストが使用されているか、どこに、どのレベルのものが、どのくらい使われているかを正確に把握する「事前調査」です。2022年4月からは、建物の解体・改修工事を行う際に、規模の大小にかかわらずアスベストの事前調査とその結果の報告が法律で義務化されています。
調査は、「建築物石綿含有建材調査者」などの専門資格を持つ者が行います。まずは設計図書などの資料で確認し、その後、現地での目視調査を実施。必要に応じて建材の一部を採取し、専門の分析機関でアスベストの有無や種類を確定させます。この調査結果が、後の撤去計画や見積もりの基礎となる非常に重要な工程です。
6.2 ステップ2 撤去業者の選定と見積もり依頼
事前調査の結果報告書をもとに、複数の専門業者に連絡を取り、見積もりを依頼します。この際、最低でも3社程度から相見積もりを取ることをお勧めします。1社だけの見積もりでは、その金額が適正かどうかを判断するのが難しいためです。
見積もりを依頼する際は、事前調査報告書を提示し、工事の範囲や希望する工期などを正確に伝えましょう。業者選定の詳しいポイントは別の章で解説しますが、見積書の詳細さや担当者の対応を比較検討することが、信頼できる業者を見つけるカギとなります。
6.3 ステップ3 行政への届出
アスベスト撤去工事を開始する前には、法律に基づき、労働基準監督署や都道府県・市町村などの行政機関へ必要な届出を行わなければなりません。届出は工事の発注者(施主)の義務ですが、通常は施工業者が代行してくれます。ただし、書類には発注者の署名・捺印が必要になる場合があります。
必要な届出は、アスベストのレベル(発じん性の高さ)によって異なります。特にレベル1やレベル2の除去工事では、工事開始の14日前までに届出を完了させる必要があるため、スケジュールには余裕を持たせましょう。
主な届出書類と提出先 | ||
アスベストレベル | 主な届出書類 | 主な提出先 |
レベル1・レベル2 | 工事計画届 特定粉じん排出等作業実施届出書 | 所轄の労働基準監督署 都道府県・市区町村 |
レベル3 | 建設工事計画届(解体工事の場合) | 所轄の労働基準監督署 |
6.4 ステップ4 近隣への説明
工事中の騒音や振動、そしてアスベスト飛散への不安など、近隣住民とのトラブルを未然に防ぐために、事前の説明は不可欠です。優良な業者であれば、工事開始前に近隣住民への挨拶回りや説明会を積極的に行ってくれます。
説明の際には、工事の概要、期間、作業時間、安全対策、緊急時の連絡先などを明記した書面を配布するのが一般的です。近隣への配慮を怠らない誠実な対応は、信頼できる業者の証でもあります。業者任せにせず、可能であれば施主も一緒に挨拶に伺うと、より丁寧な印象を与えられます。
6.5 ステップ5 撤去工事の実施
全ての準備が整ったら、いよいよ撤去工事の開始です。工事中は、アスベストの粉じんが外部に漏れ出さないよう、厳重な飛散防止対策が講じられます。
具体的には、作業場所をビニールシートなどで完全に隔離(養生)し、内部の気圧を外部より低く保つ「負圧除じん装置」を設置します。作業員は専用の防じんマスクや保護衣を着用し、建材を湿潤化させて粉じんの飛散を抑制しながら、慎重に手作業で撤去を進めます。また、工事現場の見やすい場所には、アスベスト除去工事中であることを示す看板を設置することも義務付けられています。
6.6 ステップ6 産業廃棄物の処理
撤去されたアスベスト含有建材は、「特別管理産業廃棄物」として法律に則って適正に処理しなければなりません。不法投棄は絶対に許されません。
撤去した建材は、飛散しないように二重に袋詰めするなど厳重に梱包され、許可を受けた専門の収集運搬業者が、最終処分場まで運搬します。この一連の流れは「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」という伝票で管理され、不法投棄がなく、適正に処理されたことを証明する重要な書類となります。マニフェストの一部は最終的に発注者(施主)に返却され、5年間の保管義務があるため、大切に保管してください。
6.7 ステップ7 行政への完了報告
工事と廃棄物処理が完了したら、作業の記録写真などをまとめて発注者に報告が行われます。これをもって工事は完了となります。
また、事前調査の結果を行政に報告した工事については、元請業者が作業完了を発注者に書面で報告する義務があります。発注者は、工事に関する記録(事前調査結果、工事写真、マニフェストなど)をまとめて保管しておくことが重要です。これらの書類は、将来的に建物を売却する際や、別の工事を行う際に必要となる可能性があります。
7. まとめ
アスベスト撤去は、健康被害や法律違反のリスクを避けるため、専門知識と許可を持つ業者への依頼が必須です。業者選びで失敗しないためには、都道府県の許可や石綿作業主任者の在籍、詳細な見積もりの提示などを必ず確認しましょう。悪質な業者に騙されないよう、複数の業者から相見積もりを取り、実績や担当者の対応を慎重に比較検討することが重要です。国や自治体の補助金制度を活用することで費用を抑えられる可能性もあるため、積極的に情報収集を行いましょう。
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