知らないと損!原状回復 工事の費用相場と見積もりを安く抑える5つのコツ
- seira murata
- 8月26日
- 読了時間: 18分

原状回復工事の見積もりが高額で驚いた経験はありませんか?どこまでが借主負担なのか、相場はいくらなのか、知らないままでは損をする可能性があります。本記事では、国土交通省のガイドラインに基づいた費用負担のルールから、オフィスや店舗、賃貸物件の坪単価別費用相場までを徹底解説。さらに、工事費用を適正価格に抑えるための具体的な5つのコツも紹介します。この記事を読めば、不当な請求を避け、賢く工事を進める知識が身につきます。
1. そもそも原状回復工事とは?リフォームとの違いを解説
オフィスの移転や賃貸物件の退去時に必ず耳にする「原状回復工事」。言葉は知っていても、その正確な意味や範囲、リフォームとの違いを正しく理解している方は少ないかもしれません。ここでは、原状回復工事の基本的な定義と目的をわかりやすく解説します。
1.1 原状回復の定義と目的
原状回復とは、賃貸物件を退去する際に、借主の故意・過失によって生じた損傷や汚れを修復し、入居時(契約時)の状態に戻すことを指します。これは賃貸借契約における「原状回復義務」として定められています。
重要なのは、これは「新品同様に戻す」という意味ではないという点です。普通に生活していて自然に発生する汚れや傷(通常損耗)、時間の経過による建物の劣化(経年劣化)については、基本的に原状回復の義務に含まれません。あくまで、借主の責任で生じた損耗を元に戻すことが目的です。
貸主にとっては、次の入居者が問題なく物件を利用できるよう、物件の資産価値を維持するために必要な工事です。一方、借主にとっては、契約上の義務を果たし、敷金を適切に返還してもらうために欠かせない手続きとなります。
1.2 原状回復工事とリフォームやリノベーションの違い
原状回復工事は、しばしば「リフォーム」や「リノベーション」と混同されがちですが、その目的と内容は大きく異なります。それぞれの違いを理解することで、工事の範囲や費用負担についての無用なトラブルを避けられます。
端的に言えば、原状回復は「マイナスをゼロに戻す」工事であるのに対し、リフォームやリノベーションは「ゼロやマイナスをプラスにする」工事です。以下の表で、それぞれの違いを具体的に見ていきましょう。
原状回復工事 | リフォーム | リノベーション | |
目的 | 物件を入居時の状態に戻す(復旧) | 老朽化した部分を新しくする(修繕・更新) | 新たな機能や価値を付け加える(改修・刷新) |
状態の変化 | マイナス → ゼロ | マイナス → プラス | ゼロ → プラスα |
工事内容の例 | ・壁紙の部分的な補修 ・床の傷の修復 ・借主が設置した間仕切りの撤去 ・特別なクリーニング | ・壁紙や床材の全面張り替え ・キッチンやトイレなど設備の交換 ・外壁の塗り替え | ・間取りの変更 ・耐震補強や断熱性能の向上 ・デザイン性のある内装への変更 |
主な費用負担者 | 借主(特別損耗) 貸主(通常損耗・経年劣化) | 貸主(物件オーナー) | 貸主(物件オーナー) |
このように、原状回復工事はあくまで「元に戻す」ことが目的です。退去時に貸主から提示された見積もりに、物件の価値を高めるようなリフォーム工事の内容が含まれていないか、しっかりと確認することが重要になります。
2. 原状回復工事の費用は誰が負担する?国土交通省のガイドライン

原状回復工事の費用を「借主」と「貸主」のどちらが負担するかは、退去時の大きな関心事です。この負担割合については、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で明確な基準が示されています。このガイドラインは、賃貸物件のトラブルを未然に防ぐための指針であり、裁判の判例でも参考にされています。基本的には、「経年劣化」や「通常損耗」は貸主負担、「特別損耗」は借主負担と定められています。
2.1 借主負担となるケース(特別損耗)
借主の負担となるのは、「特別損耗」と呼ばれる損耗です。これは、借主の故意・過失や、通常想定される使い方を逸脱したことによって生じた傷や汚れを指します。「善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)」に違反した場合もこれに含まれます。具体的には、以下のようなケースが該当します。
場所 | 借主負担となる損耗の具体例 |
壁・天井 | 喫煙による壁紙のヤニ汚れや臭い / 掃除を怠ったことによるキッチンの油汚れ / 結露を放置したことで発生・拡大したカビやシミ / 下地ボードの交換が必要になるほどの深い釘穴やネジ穴 / 子どもの落書き |
床 | 飲み物などをこぼしたまま放置してできたシミやカビ / 引っ越し作業でつけた深い傷 / ペットによる傷や臭い / キャスター付きの椅子などで特定の箇所にできた傷やへこみ |
建具・設備 | 不注意で破損させた窓ガラス / 日常の清掃を怠ったことによる水回りの水垢やカビ / 鍵の紛失や破損による交換 |
これらの損耗は、借主が注意を払っていれば防げた、あるいは通常の使用範囲を超えるものと判断され、修繕費用は借主の負担となります。
2.2 貸主負担となるケース(通常損耗・経年劣化)
一方、貸主の負担となるのは、「通常損耗」や「経年劣化」によるものです。普通に生活していても自然に発生する損耗や、時間の経過とともに品質が低下する変化は、貸主が負担するのが原則です。これらは、毎月の家賃に含まれていると解釈されます。
場所 | 貸主負担となる損耗の具体例 |
壁・天井 | 画鋲やピンの穴 / 家具の設置による壁紙の電気ヤケ(黒ずみ) / 日光による壁紙やフローリングの色あせ / 地震などの自然災害で発生したひび割れ |
床 | 家具の設置による床やカーペットのへこみ / 経年によるフローリングのワックスの摩耗 / 畳の自然な変色(日焼け) |
建具・設備 | 耐用年数の経過による設備の故障(エアコン、給湯器、コンロなど) / 網戸の自然な劣化や摩耗 / 建物の構造上の問題で発生した不具合 |
このように、一般的な住まい方で生じる軽微な傷や汚れについては、借主が費用を負担する必要はありません。
2.3 契約書の「特約」には要注意
国土交通省のガイドラインはあくまで指針であり、法的な強制力はありません。そのため、賃貸借契約書に「特約」が定められている場合は、そちらが優先されることがあります。例えば、「退去時のハウスクリーニング代は借主が負担する」「畳の表替え費用は借主が負担する」といった特約が一般的です。しかし、どのような特約でも有効というわけではありません。
消費者契約法に基づき、借主に一方的に不利な内容や、あまりにも高額な費用を請求する特約は無効と判断される可能性があります。特約が有効と認められるには、以下の要件を満たす必要があるとされています。
特約の必要性があり、内容が暴利的でないなど客観的・合理的な理由があること
借主が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕義務を負うことを認識していること
借主が特約による義務負担の意思表示を明確に行っていること
退去時のトラブルを避けるためにも、賃貸借契約を結ぶ際に特約の内容を隅々まで確認し、少しでも疑問があれば貸主や不動産会社に質問することが非常に重要です。
3. 【坪単価別】原状回復工事の費用相場

原状回復工事にかかる費用は、物件の種類(オフィス・店舗・住居)や広さ、内装の状態、そして契約内容によって大きく変動します。ここでは、物件の種類別に一般的な坪単価の相場と、工事内容別の費用内訳を解説します。ご自身のケースと照らし合わせ、見積もり金額が妥当かどうかの判断材料にしてください。
3.1 オフィス・事務所の費用相場
オフィスの原状回復工事は、入居時に設置した間仕切りや造作物の撤去、床・壁・天井の修繕が主な内容となります。費用相場は、小規模オフィス(~30坪程度)で坪単価3万円~8万円、中・大規模オフィス(30坪以上)で坪単価2万円~6万円程度が目安です。一般的に、面積が小さいほど坪単価は高くなる傾向にあります。
これは、小規模な工事でも運搬費や人件費などの最低限の経費がかかるためです。また、契約内容が「スケルトン返し(建物の構造体以外をすべて解体し、コンクリート打ちっぱなしの状態に戻すこと)」の場合は、内装解体費用が加わるため、坪単価はさらに高額になります。
3.2 店舗の費用相場
店舗の原状回復工事は、業態によって内装や設備が大きく異なるため、オフィス以上に費用相場の幅が広くなります。特に、厨房設備や排気ダクト、給排水設備などがある飲食店は、解体・撤去・清掃に手間がかかるため高額になる傾向があります。
一般的な目安として、物販店やサロンなどで坪単価3万円~10万円、飲食店では坪単価5万円~15万円程度を見ておくとよいでしょう。オフィスと同様に、スケルトン返しが求められる場合は、解体費用が大きく上乗せされます。
3.3 賃貸マンション・アパートの費用相場
賃貸マンションやアパートといった住居の原状回復は、主に借主の故意・過失によって生じた傷や汚れ(特別損耗)の修繕と、全体のハウスクリーニングが中心となります。そのため、オフィスや店舗に比べて費用は安価なケースがほとんどです。
間取り別の費用相場は以下の通りです。
ワンルーム・1K:4万円~8万円程度
1LDK・2DK:6万円~12万円程度
2LDK・3LDK:8万円~15万円程度
ただし、タバコのヤニによる壁紙の全面張り替えや、ペットによる深刻な傷や臭いが残っている場合は、上記の相場を大きく超える可能性があります。
3.4 工事内容別の費用内訳
原状回復工事の費用は、さまざまな工事の積み重ねで決まります。見積もりを精査する際に役立つ、主な工事内容別の費用相場を以下にまとめました。物件の状況や使用する材料のグレードによって金額は変動します。
原状回復工事の主な費用内訳 | ||
工事項目 | 費用相場(単位) | 備考 |
壁紙(クロス)張り替え | 1,000円~1,800円/㎡ | 量産品か高機能クロスかで変動。下地処理が必要な場合は追加費用が発生。 |
床材の張り替え(タイルカーペット) | 2,500円~4,500円/㎡ | オフィスで最も一般的な床材。部分的な交換も可能。 |
床材の張り替え(クッションフロア) | 2,500円~4,000円/㎡ | 住居のキッチンや洗面所などで多く使用される。 |
塗装工事(壁・天井) | 800円~2,000円/㎡ | 塗装範囲や塗料の種類によって変動。 |
ハウスクリーニング | 1,500円~3,000円/㎡ | キッチン、浴室、エアコン内部洗浄などを含む場合は高くなる。 |
内装解体工事 | 5,000円~20,000円/坪 | 間仕切り壁の撤去など。解体するものの構造や材質による。 |
産業廃棄物処理費 | 30,000円~80,000円/式 | 工事で発生した廃材の量や種類によって変動する。 |
これらの費用相場はあくまで一般的な目安です。正確な費用を知るためには、必ず複数の専門業者から見積もりを取り、内容を比較検討することが重要です。
4. 原状回復工事の見積もりを安く抑える5つのコツ

原状回復工事の費用は、退去時の大きな負担となり得ます。しかし、いくつかのポイントを押さえるだけで、請求される見積もり金額を大幅に削減できる可能性があります。ここでは、適正価格で工事を依頼し、不要な出費を避けるための具体的な5つのコツを詳しく解説します。
4.1 コツ1 相見積もりを3社以上から取る
原状回復工事の費用を抑えるための最も基本的かつ効果的な方法が「相見積もり」です。貸主や管理会社から提示された1社の見積もりだけで判断するのは非常に危険です。必ず3社以上の専門業者から見積もりを取得し、比較検討しましょう。
相見積もりを行うことで、以下のようなメリットがあります。
適正な費用相場の把握: 複数の見積もりを比較することで、依頼する工事内容の適正な価格帯がわかります。1社だけの見積もりでは、その金額が相場より高いのか安いのか判断できません。
悪徳業者の回避: 極端に高額な、あるいは安すぎる見積もりを提示する業者を見抜くことができます。安すぎる場合も、手抜き工事や後からの追加請求のリスクがあるため注意が必要です。
価格交渉の材料: 他社の見積もりを提示することで、価格交渉を有利に進められる可能性があります。
見積もりを依頼する際は、工事の範囲や仕様など、すべての業者に同じ条件を伝えることが重要です。条件が異なると、正確な比較ができなくなってしまいます。
4.2 コツ2 契約書とガイドラインを再確認する
見積もり内容を精査する前に、費用の負担区分を明確にする必要があります。そのために不可欠なのが、入居時に交わした「賃貸借契約書」と国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の再確認です。
まず、賃貸借契約書を隅々まで読み返し、原状回復に関する特約の有無を確認してください。特に「特約」として、本来は貸主負担であるはずの通常損耗や経年劣化に関する修繕費用が借主負担と定められているケースがあります。ただし、その特約が法的に有効であるかは内容によります。
次に、国土交通省のガイドラインと照らし合わせ、どの損傷が借主負担の「特別損耗」にあたり、どれが貸主負担の「通常損耗・経年劣化」にあたるのかを自分で把握しておくことが重要です。この知識があるだけで、不当な請求に対して論理的に反論できます。
4.3 コツ3 不要な工事項目がないか見積もりを精査する
複数の見積書が手元に揃ったら、それぞれの項目を詳細にチェックします。特に注意すべきは、本来は貸主が負担すべき工事が紛れ込んでいないか、また、過剰な工事が計上されていないかという点です。
以下の表を参考に、見積書の内容を細かく精査しましょう。
チェック項目 | 確認するポイント | 具体例 |
工事項目と範囲 | 借主の責任範囲を超えた工事が含まれていないか。 | タバコのヤニ汚れがないのに「壁紙の全面張り替え」となっている。家具の設置跡(凹み)など通常損耗の補修費用が含まれている。 |
数量・単価 | 数量や単価が市場の相場と比べて著しく高くないか。 | 壁紙の張り替え面積が、実際の部屋の面積より明らかに大きい。クリーニング費用が相場の2倍以上になっている。 |
「一式」表記 | 「〇〇工事一式」のように内訳が不明瞭な項目はないか。 | 「諸経費一式」「内装補修工事一式」など。必ず詳細な内訳の提出を求める。 |
経年劣化の考慮 | 壁紙や床材など、経年劣化が考慮された負担割合になっているか。 | 入居から6年以上経過している壁紙の張り替え費用を100%請求されている。(ガイドラインでは耐用年数を6年とし、価値は1円となる) |
少しでも疑問に思う項目があれば、遠慮なく業者に質問し、納得できる説明を求めましょう。
4.4 コツ4 貸主指定の業者以外も検討する
賃貸物件の退去時、貸主や管理会社から特定の工事業者を指定されることがよくあります。しかし、契約書に「原状回復工事は貸主指定の業者で行うこと」という特約がない限り、借主が自分で業者を選ぶことは原則として可能-mark>です。
貸主指定の業者は、管理会社へのマージン(紹介料)などが上乗せされ、費用が割高になっているケースが少なくありません。自分で信頼できる業者を探して直接依頼することで、中間マージンをカットし、工事費用を大幅に削減できる可能性があります。
ただし、自分で業者を選ぶ場合は、事前に貸主や管理会社にその旨を伝え、了承を得ておくことがトラブルを避けるために重要です。また、選んだ業者が賃貸物件の工事に慣れており、貸主が求める品質基準を満たせるかどうかも確認が必要です。
4.5 コツ5 自分でできる範囲の清掃や修繕を行う
専門業者に依頼する前に、自分でできる範囲の清掃や簡単な修繕を行っておくことも、費用削減に繋がります。プロによるハウスクリーニング費用や軽微な補修費用を節約できるためです。
ただし、無理は禁物です。不適切な方法で修繕しようとすると、かえって損傷を悪化させ、より高額な修理費用を請求されるリスクがあります。あくまで「簡単かつ確実にできる範囲」に留めましょう。
自分で対応しやすい作業 | プロに任せるべき作業 |
・部屋全体の基本的な掃除(掃き掃除、拭き掃除) | ・壁紙(クロス)の広範囲な張り替え |
・水回り(キッチン、浴室、トイレ)の念入りな清掃 | ・フローリングやクッションフロアの張り替え、大きな傷の補修 |
・シール剥がしや、画鋲の穴埋め(市販の補修材を使用) | ・ドアや柱の大きな傷、凹みの補修 |
・換気扇やエアコンフィルターの油汚れ落とし | ・給排水設備や電気系統の修理 |
退去前のひと手間で、数万円単位の費用が削減できるケースもあります。時間と手間をかけられる範囲で、ぜひ実践してみてください。
5. 失敗しない原状回復工事業者の選び方

原状回復工事は、決して安くない費用がかかる重要なプロジェクトです。トラブルを避け、適正価格で質の高い工事を実現するためには、信頼できる業者選びが不可欠です。ここでは、業者選びで失敗しないための3つの重要なポイントを解説します。
5.1 実績が豊富か確認する
まず確認すべきは、業者の施工実績です。特に、あなたが入居している物件と類似した業種や規模での実績が豊富かどうかは、重要な判断基準となります。オフィス、店舗、住居など、建物の用途によって求められる工事内容やノウハウは大きく異なるためです。
業者の公式ウェブサイトで施工事例を確認し、以下の点をチェックしましょう。
退去する物件と同じ業種(例:飲食店、美容室、クリニックなど)の実績があるか
同程度の広さ(坪数)の物件を手がけた経験があるか
施工前後の写真が掲載されており、仕上がりの品質が確認できるか
豊富な実績は、様々なトラブルへの対応力や、法令・条例に関する知識の証明にもなります。
5.2 見積もりの内訳が明確か
複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」は必須ですが、その内容を比較検討できなければ意味がありません。「工事一式」といった大雑把な記載ではなく、項目ごとに単価や数量が明記されているかを必ず確認してください。内訳が不透明な見積もりは、後から追加費用を請求されるリスクがあります。
信頼できる見積もりかどうか、以下の表でチェックしてみましょう。
見積もりチェックリスト | ||
チェック項目 | 良い見積もりの例 | 注意が必要な見積もりの例 |
工事項目 | クロス張替え、床材張替え、塗装工事など、作業内容が具体的に記載されている。 | 「内装工事一式」のように、内容がまとめられている。 |
数量・単価 | 壁面積(㎡)、床面積(㎡)などの数量と、㎡あたりの単価が明記されている。 | 数量や単価の記載がなく、合計金額しか書かれていない。 |
諸経費 | 現場管理費、廃材処分費など、経費の内訳がわかるようになっている。 | 「諸経費」として一括りにされ、何に対する費用か不明。 |
不明な点があれば遠慮なく質問し、納得できる説明が得られない業者は避けるのが賢明です。
5.3 担当者とのコミュニケーションはスムーズか
工事完了まで、窓口となる担当者とのやり取りは頻繁に発生します。そのため、担当者の対応品質も業者選びの重要な要素です。質問へのレスポンスの速さや、専門的な内容を分かりやすく説明してくれるかなど、コミュニケーションの取りやすさを見極めましょう。
具体的には、以下の点に注目してください。
問い合わせや質問への返信が迅速かつ丁寧か
こちらの要望を正確にヒアリングし、的確な提案をしてくれるか
専門用語ばかりでなく、素人にも理解できるよう配慮してくれるか
少しでも費用を抑えるための代替案などを一緒に考えてくれる姿勢があるか
見積もり依頼や現地調査の段階で、信頼関係を築ける相手かどうかをしっかりと判断することが、工事を成功させるカギとなります。
6. 依頼から完了まで 原状回復工事の基本的な流れ

原状回復工事をスムーズに進めるためには、退去の意思を伝えてから物件を引き渡すまでの全体の流れを把握しておくことが非常に重要です。ここでは、依頼から工事完了までの基本的なステップを5つに分けて、それぞれの段階でやるべきことや注意点を詳しく解説します。
6.1 STEP1 賃貸借契約書の確認
退去が決まったら、まず最初に行うべきことは賃貸借契約書の内容を隅々まで再確認することです。契約書には、借主がどこまでの範囲を原状回復する義務を負うのかが明記されています。特に、国土交通省のガイドラインとは異なる独自の取り決めである「特約」の有無は、費用負担に大きく影響するため必ずチェックしましょう。解約予告の期限や方法についても併せて確認し、計画的に準備を始めることがトラブル回避の第一歩です。
6.2 STEP2 施工業者の選定と相見積もり
次に、原状回復工事を依頼する施工業者を選定します。貸主や管理会社から指定業者を紹介されるケースも多いですが、費用を抑えるためには、必ず3社以上から相見積もりを取得し、工事内容と金額を比較検討することを強くおすすめします。業者によって得意な工事や単価が異なるため、複数の見積もりを比較することで、適正な費用相場を把握し、不当に高額な請求を避けることができます。
6.3 STEP3 現地調査と打ち合わせ
見積もりを依頼した業者に、実際に退去する物件の状況を確認してもらう「現地調査」を依頼します。現地調査では、業者が物件の損傷箇所や劣化具合を直接確認し、より正確な見積もりを作成します。この際、契約書で定められた工事範囲を業者と共有し、認識の齟齬がないか綿密に打ち合わせを行うことが重要です。疑問点や要望があれば、この段階で全て伝え、最終的な見積書に反映してもらいましょう。
6.4 STEP4 工事の実施と進捗確認
見積もり内容に納得し、正式に業者と契約を結んだら、いよいよ工事開始です。工事期間は、物件の広さや工事内容によって異なりますが、事前に提示された工期スケジュールに沿って進められます。可能であれば、工事期間中も担当者と連絡を取り、進捗状況を定期的に確認すると安心です。万が一、契約内容と異なる工事が行われていないかなどをチェックし、トラブルを未然に防ぎましょう。
6.5 STEP5 引き渡しと最終確認
全ての工事が完了したら、最後に行うのが引き渡し前の最終確認です。貸主や管理会社の担当者と一緒に施工箇所を隅々までチェックし、契約通りに工事が完了しているかを確認します。壁紙の剥がれや床の傷、清掃状況など、細部まで確認し、もし不備があればその場で修正を依頼しましょう。問題がないことを双方が確認できたら、鍵を返却して物件の引き渡しは完了となります。
7. まとめ
本記事では、原状回復工事の費用相場や負担区分、費用を安く抑えるコツを解説しました。原状回復の費用負担は、国土交通省のガイドラインが基準となりますが、賃貸借契約書の特約が優先される場合も多いため、まずは契約内容の確認が不可欠です。その上で、複数社から相見積もりを取り、工事内容を精査することが、不当な高額請求を避け、費用を適正化する最も効果的な方法です。この記事で紹介したポイントを押さえ、トラブルのないスムーズな原状回復工事を実現しましょう。
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