空き家の家屋解体費用は補助金で賢く抑える!放置で税金が上がる前に知りたい全知識
- seira murata
- 8月1日
- 読了時間: 22分

ご実家など空き家の解体費用はいくらかかるのか、どうすれば安くできるのかお悩みではないでしょうか。この記事を読めば、構造別の解体費用の坪単価相場から、国や自治体の補助金・助成金を活用して費用を抑える具体的な方法、放置した場合の税金リスクまで全てが分かります。複数の業者から相見積もりを取り、補助金制度を賢く利用することが費用削減の鍵です。後悔しないために、まずは正しい知識を身につけましょう。
1. 【構造別】家屋解体費用の相場はいくら?坪単価で見る目安
家屋の解体にかかる費用は、建物の構造によって大きく変動します。一般的に、解体費用は「坪単価」で計算されることが多く、構造が頑丈であるほど高くなる傾向にあります。まずはご自身の家がどの構造に該当するのかを確認し、費用の目安を把握しましょう。
ここでは、代表的な3つの構造「木造」「鉄骨造(S造)」「鉄筋コンクリート造(RC造)」それぞれの解体費用の坪単価相場を解説します。
1.1 木造家屋の解体費用相場
日本で最も一般的な木造家屋は、他の構造に比べて解体が比較的容易なため、費用相場も安価です。重機で一気に解体を進めやすく、工期も短く済むことが多いのが特徴です。
ただし、築年数が古い木造家屋の場合、アスベスト含有建材が使用されている可能性があり、その場合は別途除去費用が発生するため注意が必要です。
木造家屋の解体費用は、坪単価でおおよそ3万円~5万円が目安となります。
1.2 鉄骨造(S造)家屋の解体費用相場
鉄骨造(Steel)は、柱や梁に鉄骨を使用した頑丈な構造です。鉄骨の厚みによって「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」に分かれ、厚く頑丈な重量鉄骨造の方が解体費用は高くなります。
木造に比べて解体に手間がかかり、発生する鉄骨の処分にも費用がかかるため、坪単価は木造よりも高額になります。
鉄骨造家屋の解体費用は、坪単価でおおよそ4万円~7万円が目安です。
1.3 鉄筋コンクリート造(RC造)家屋の解体費用相場
鉄筋コンクリート造(Reinforced Concrete)は、鉄筋とコンクリートを組み合わせて作られた最も頑丈な構造です。マンションやビルなどに多く用いられますが、戸建て住宅でも見られます。
解体には大型の重機や特殊な工法が必要となり、騒音や振動も大きくなるため、防音・防振対策が必須です。その分、工期も長くなり、費用は最も高額になります。
鉄筋コンクリート造家屋の解体費用は、坪単価でおおよそ6万円~8万円が目安となります。
1.4 あなたの家屋解体費用は?簡単シミュレーション
ここまでの坪単価を参考に、ご自身の家屋の解体費用がいくらになるか、簡単なシミュレーションをしてみましょう。以下の表は、構造別の坪単価相場をまとめたものです。
構造別・解体費用の坪単価相場 | ||
構造 | 坪単価の目安 | 30坪の家屋の場合の費用目安 |
木造 | 30,000円~50,000円 | 90万円~150万円 |
鉄骨造(S造) | 40,000円~70,000円 | 120万円~210万円 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 60,000円~80,000円 | 180万円~240万円 |
【計算式】延床面積(坪数) × 坪単価 = 建物本体の解体費用
例えば、30坪の木造家屋であれば「30坪 × 4万円/坪 = 120万円」といった形で概算費用を算出できます。
ただし、このシミュレーションはあくまで建物本体の解体費用の概算です。実際の総額は、後述するアスベスト除去やブロック塀の撤去といった「追加費用」によって大きく変動します。正確な金額を知るためには、必ず複数の解体業者から見積もりを取りましょう。
2. 家屋解体費用の内訳と総額に影響する追加費用の要因

家屋解体費用の総額は、坪単価だけで決まるわけではありません。工事全体の費用は、複数の項目が積み重なって構成されています。見積書を正確に読み解き、想定外の出費を防ぐためにも、費用の内訳を正しく理解しておくことが重要です。解体費用は、基本的にどの工事でも発生する「必ずかかる費用」と、建物の状況や立地条件によって変動する「追加費用」の2つに大別されます。
2.1 必ずかかる費用の内訳
ここでは、家屋解体工事を行う上で、基本的に必ず発生する費用の内訳について解説します。これらの項目は、見積書の中心となる部分です。
2.1.1 仮設工事費用(足場・養生シート)
解体工事を安全かつスムーズに進めるために不可欠なのが仮設工事です。工事現場の周囲に足場を組み、その外側を騒音や粉塵の飛散を防ぐための養生シート(防音シート)で覆います。これは、作業員の安全確保はもちろん、近隣住民への迷惑を最小限に抑えるために法律で定められた重要な工程です。費用は建物の規模や現場の状況によって変動しますが、総額の10%~20%程度を占めるのが一般的です。
2.1.2 解体工事費用(建物本体)
文字通り、建物そのものを取り壊すための費用で、解体費用の大部分を占める中心的な項目です。重機を使った解体作業費や、作業員の人件費が含まれます。この費用は、建物の構造(木造、鉄骨造、RC造)や延床面積によって大きく変動します。
2.1.3 廃棄物処分費用
解体工事によって発生した木くず、コンクリートガラ、鉄骨、ガラス、プラスチックなどの産業廃棄物を、法律に則って適正に分別し、処分場へ運搬・処分するための費用です。廃棄物の種類と量によって費用が大きく変わるため、不法投棄を行う悪質な業者を避けるためにも、見積書でこの項目が明確に記載されているかを確認することが大切です。特に、アスベスト含有建材など特別な処分が必要な廃棄物がある場合は、費用が大きく加算されます。
2.1.4 諸経費
工事を管理・運営するために必要な間接的な費用です。具体的には、現場監督の人件費、事務手数料、駐車場代、官公庁への書類申請(道路使用許可など)の代行費用、近隣への挨拶回りの費用などが含まれます。業者によって「現場管理費」「一般管理費」などと記載され、算出方法も異なりますが、工事費総額の5%~10%程度が目安です。
2.2 状況によって発生する追加費用
基本料金に加え、建物の状態や立地、周辺環境によっては追加で費用が発生することがあります。契約前に現地調査で判明することがほとんどですが、工事開始後に追加請求されるケースもあるため、事前にどのような費用がかかる可能性があるか把握しておきましょう。
2.2.1 アスベスト(石綿)除去費用
2006年9月以前に建てられた建物には、建材にアスベスト(石綿)が使用されている可能性があります。アスベストは飛散すると健康被害を引き起こすため、法律に基づいた厳格な調査と除去作業が義務付けられています。アスベストの含有レベルや使用箇所によって除去費用は数万円から数百万円と大きく変動し、総額に大きな影響を与えます。築年数の古い家屋を解体する際は、特に注意が必要です。
2.2.2 地中埋設物の撤去費用
建物を解体した後の地面の下から、以前の建物の基礎、浄化槽、井戸、コンクリートガラ、水道管といった「地中埋設物(地中障害物)」が見つかることがあります。これらは事前の調査では発見が難しく、工事中に追加費用として請求される代表的な項目です。撤去しなければ土地の売却や新しい建物の建築に支障が出るため、必ず撤去が必要になります。
2.2.3 付帯工事費用(ブロック塀・庭石・樹木など)
建物本体以外で、敷地内にある構造物や庭木などを撤去するための費用です。カーポート、ブロック塀、物置、浄化槽、庭石、樹木などが対象となります。どこまでを解体・撤去の範囲に含めるかによって費用が変わるため、必ず事前に業者と打ち合わせを行い、見積もりに含めてもらうようにしましょう。
付帯工事の対象例 | 費用の目安 |
ブロック塀の撤去 | 1平方メートルあたり5,000円~10,000円 |
カーポート・車庫の解体 | 1台用で60,000円~ |
庭石・庭木の撤去 | 大きさや量により変動(数万円~) |
浄化槽の撤去 | 5人槽で50,000円~100,000円 |
※上記の費用はあくまで目安です。実際の費用は現場の状況や業者によって異なります。
2.2.4 重機が入れない場合の追加人件費
敷地に面した道路が狭い、電線が低い位置にあるなどの理由で、解体用の重機が現場に入れない場合があります。このような立地条件では、重機の代わりに作業員が手作業で解体する「手壊し解体」という工法が用いられます。手壊し解体は、通常の重機作業に比べて工期が長くなり、多くの人手が必要となるため、人件費が大幅に増加し、総額も割高になります。
3. 空き家の家屋解体費用を補助金で賢く抑える5つの方法

高額になりがちな家屋の解体費用ですが、工夫次第で負担を大きく軽減できます。特に国や自治体が設けている補助金制度は、賢く費用を抑えるための最も効果的な手段です。ここでは、補助金の活用をはじめ、誰でも実践できるコスト削減の具体的な5つの方法を詳しく解説します。
3.1 方法1 全国の自治体が実施する解体費用の補助金・助成金制度を活用する
多くの自治体では、倒壊の危険性がある空き家や景観を損なう建物の解体を促進するため、費用の一部を補助する制度を設けています。これは、管理不全の空き家が引き起こす防災・防犯上の問題を未然に防ぐ目的があるためです。条件に合致すれば数十万円単位で補助を受けられる可能性があるため、解体を検討する際はまずお住まいの自治体の制度を確認しましょう。
3.1.1 補助金制度の探し方と申請の流れ
補助金制度の情報は、自治体の公式ウェブサイトで確認するのが最も確実です。「〇〇市(お住まいの自治体名) 空き家 解体 補助金」といったキーワードで検索するか、役所の「建築指導課」や「都市計画課」などの担当窓口に直接問い合わせてみましょう。
一般的な申請の流れは以下の通りですが、必ず事前に自治体の担当窓口で詳細を確認してください。
ステップ | 内容 | ポイント |
1. 事前相談 | 自治体の担当窓口へ相談し、対象家屋や条件を確認する。 | この段階で必要書類や手続きの詳細を聞いておくとスムーズです。 |
2. 申請書提出 | 必要書類を揃えて、補助金の交付申請を行う。 | 見積書や現況写真など、複数の書類が必要になるのが一般的です。 |
3. 交付決定通知 | 審査後、自治体から補助金の交付決定通知書が届く。 | この通知を受け取る前に解体業者と契約したり、工事を開始したりすると補助対象外になるため、絶対に注意してください。 |
4. 工事契約・着工 | 解体業者と正式に契約し、工事を開始する。 | 工事前後の写真撮影を忘れずに行いましょう。 |
5. 実績報告 | 工事完了後、領収書や写真などを添えて実績報告書を提出する。 | 提出期限が定められているため、速やかに行いましょう。 |
6. 補助金交付 | 報告書の内容が確認された後、指定の口座に補助金が振り込まれる。 | 申請から交付まで数ヶ月かかる場合もあります。 |
3.1.2 【注意点】補助金利用の条件と対象家屋
補助金制度は誰でも無条件に利用できるわけではありません。自治体ごとに定められた条件を満たす必要があります。主な条件の例を以下に示しますが、詳細は必ず各自治体にご確認ください。
分類 | 主な条件の例 |
申請者の条件 | ・対象家屋の所有者またはその相続人であること ・市町村税などの税金を滞納していないこと ・暴力団員等ではないこと |
対象家屋の条件 | ・個人が所有する居住用の建物であること ・1年以上使用されていないなどの「空き家」であること ・自治体の調査により「不良住宅」や「特定空き家」に認定されていること ・耐震診断の結果、倒壊の危険性があると判断された木造住宅であること |
解体業者の条件 | ・建設業許可または解体工事業登録を持つ業者であること ・市町村内に本店または支店を置く業者であること |
3.2 方法2 複数の解体業者から相見積もりを取る
解体費用は業者によって大きく異なるため、必ず複数の業者から見積もり(相見積もり)を取りましょう。最低でも3社から見積もりを取得し比較検討することで、数十万円単位の費用差が生まれることも珍しくありません。費用総額だけでなく、見積書の内訳が明確か、追加費用の項目は含まれているか、担当者の対応は丁寧かといった点も総合的に判断することが、優良な業者を選ぶ上で重要です。一括見積もりサイトを利用すると、手間をかけずに複数の業者へ依頼できます。
3.3 方法3 家の中の不用品(残置物)は自分で処分する
家の中に残された家具や家電、衣類などの不用品(残置物)の処分を解体業者に依頼すると、「産業廃棄物」として扱われるため、処分費用が割高になります。解体工事が始まる前に自分で不用品を処分しておくだけで、大幅なコスト削減に繋がります。自治体の粗大ごみ回収を利用したり、リサイクルショップやフリマアプリで売却したり、まだ使えるものは知人に譲るなど、計画的に片付けを進めましょう。これにより、処分費用を抑えるだけでなく、思わぬ収入に繋がる可能性もあります。
3.4 方法4 解体工事の時期を調整する
解体業界にも繁忙期と閑散期があります。公共工事が増える年度末(2月~3月)や、年末にかけては業者が忙しくなり、費用が高くなる傾向にあります。一方で、梅雨の時期や夏場は比較的工事が少なくなるため、価格交渉がしやすくなる可能性があります。工期に余裕がある場合は、業者の閑散期を狙って依頼することで、費用を抑えられる可能性があります。ただし、天候によっては工期が延びるリスクもあるため、業者とよく相談してスケジュールを決めましょう。
3.5 方法5 滅失登記を自分で行う
建物を解体した後には、その建物がなくなったことを法務局に届け出る「建物滅失登記」を1ヶ月以内に行う義務があります。この手続きは土地家屋調査士に依頼するのが一般的ですが、4〜5万円程度の報酬費用がかかります。しかし、滅失登記は必要書類を揃えれば自分で行うことが可能で、その場合、専門家への報酬費用を全額節約できます。手続き方法が分からない場合でも、法務局の相談窓口で教えてもらいながら進めることができるため、費用を少しでも抑えたい方は挑戦してみる価値があるでしょう。
4. 【要注意】空き家を放置すると家屋解体費用より高い税金がかかるリスク

「解体費用がかかるから」と空き家をそのままにしていませんか?実は、その判断が将来的に解体費用を上回る大きな金銭的負担につながる可能性があります。管理されていない空き家は、税金が急増するだけでなく、様々なトラブルを引き起こす火種となるのです。ここでは、空き家を放置する具体的なリスクについて詳しく解説します。
4.1 「特定空き家」に指定されると固定資産税が最大6倍に
空き家を放置する最大のリスクは、固定資産税の大幅な増額です。通常、住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が軽減されています。しかし、管理が不適切で危険な状態だと自治体に判断され「特定空き家」に指定されると、この特例の対象から外されてしまうのです。
具体的には、自治体からの改善「勧告」に従わなかった場合、特例が解除されます。その結果、土地の固定資産税は更地と同じ扱いになり、最大でこれまでの6倍に跳ね上がる可能性があります。都市計画区域内であれば、都市計画税も最大3倍になります。解体費用を惜しんで放置した結果、毎年高額な税金を支払い続けることになりかねません。
住宅用地の特例の内容 | ||
区分 | 固定資産税の軽減率 | 都市計画税の軽減率 |
小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 価格の1/6に減額 | 価格の1/3に減額 |
一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 価格の1/3に減額 | 価格の2/3に減額 |
※2023年の法改正により、特定空き家になる前の段階である「管理不全空き家」に指定された場合でも、勧告を受ければ同様に特例が解除されることになりました。空き家管理の重要性はますます高まっています。
4.2 特定空き家とは?指定される条件と流れ
「特定空き家」とは、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、周辺の生活環境に悪影響を及ぼす可能性が高いと判断された空き家のことです。具体的には、以下のいずれかの状態にある場合に指定される可能性があります。
そのまま放置すれば倒壊等、著しく保安上危険となるおそれのある状態
著しく衛生上有害となるおそれのある状態(ごみの放置、害虫の発生など)
適切な管理が行われず、著しく景観を損なっている状態
その他、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
特定空き家に指定されるまでには、行政による段階的な指導があります。いきなり指定されるわけではありませんが、「勧告」の段階で税金の優遇措置が解除される点に注意が必要です。
特定空き家に指定されるまでの流れ | ||
ステップ | 内容 | 所有者が受ける影響 |
助言・指導 | 行政から空き家の適切な管理について助言や指導が行われる。 | この段階で改善すれば問題なし。 |
勧告 | 指導に従わない場合、改善するよう勧告される。 | 住宅用地の特例が解除され、固定資産税が増額される。 |
命令 | 勧告にも従わない場合、期限を定めて措置を命じられる。 | 命令違反には50万円以下の過料が科される可能性がある。 |
行政代執行 | 命令にも従わない場合、行政が強制的に解体などを行う。 | 解体にかかった費用は、すべて所有者に請求される。 |
4.3 税金だけじゃない 空き家放置が招く様々なトラブル
空き家の放置リスクは税金問題だけにとどまりません。所有者として管理責任を怠ることで、以下のような様々なトラブルを引き起こし、社会的な信用や資産そのものを失う危険性があります。
空き家放置による主なトラブル | |
リスクの種類 | 具体的な内容と影響 |
倒壊・破損による損害賠償 | 台風や地震で屋根材が飛散したり、建物が倒壊したりして、近隣家屋や通行人に被害を与えた場合、所有者としての責任を問われ、多額の損害賠償を請求される可能性があります。 |
犯罪の温床化 | 人の出入りがない空き家は、不法侵入や放火、不法投棄のターゲットになりやすく、地域の治安を悪化させる原因となります。 |
衛生環境の悪化 | 雑草の繁茂や害虫・害獣(ネズミ、ハクビシンなど)の発生は、悪臭や衛生上の問題を引き起こし、近隣住民との深刻なトラブルに発展します。 |
資産価値の低下 | 老朽化が進んだ空き家は、土地全体の印象を悪くし、売却しようにも買い手が見つかりにくくなります。結果として、土地の資産価値そのものが大きく下落してしまいます。 |
これらのリスクを回避するためにも、空き家は放置せず、解体や売却、活用など、早めに対策を検討することが極めて重要です。
5. 失敗しない家屋解体業者の選び方と比較ポイント

家屋の解体工事は、決して安い買い物ではありません。高額な費用がかかるからこそ、信頼できる優良な業者に依頼したいものです。しかし、数多くの解体業者の中から、何を基準に選べば良いのか分からないという方も多いでしょう。ここでは、悪徳業者とのトラブルを避け、安心して工事を任せられる業者を選ぶための5つの重要な比較ポイントを解説します。このポイントを押さえるだけで、業者選びの失敗リスクを大幅に減らすことができます。
5.1 建設業許可または解体工事業登録があるか確認する
家屋の解体工事を行うには、法律で定められた許可や登録が必須です。無許可・無登録の業者は違法であり、不法投棄や高額請求などのトラブルに巻き込まれる危険性が非常に高いため、絶対に契約してはいけません。見積もりを依頼する前に、必ず業者のウェブサイトや名刺で許可・登録の有無を確認しましょう。
解体工事に必要な許可・登録は、工事の請負金額によって異なります。
工事の請負金額(税抜) | 必要な許可・登録 | 管轄 |
500万円以上 | 建設業許可(解体工事業) | 国土交通大臣または都道府県知事 |
500万円未満 | 解体工事業登録 | 都道府県知事 |
これらの許可番号や登録番号は、国土交通省の検索システムなどで実在するかどうかを調べることができます。少しでも怪しいと感じたら、契約を見送るのが賢明です。
5.2 見積書の内訳が明確で分かりやすいか
複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」は必須ですが、単に総額の安さだけで比較するのは危険です。重要なのは、見積書の内訳が「一式」などの曖昧な表現でなく、項目ごとに詳細に記載されているかという点です。内訳が不明瞭な見積書は、後から不当な追加費用を請求される原因となります。
信頼できる業者の見積書には、最低でも以下の項目が明記されています。
チェックすべき見積書の項目 | 内容のポイント |
仮設工事費用 | 足場の設置、粉塵や騒音を防ぐ養生シートの費用。範囲や単価が記載されているか。 |
解体工事費用 | 建物本体(木造、鉄骨造など構造別)の解体費用。坪単価や数量が明確か。 |
廃棄物処分費用 | 木くず、コンクリートがら、鉄くずなど、種類ごとの処分費用。量や単価が記載されているか。 |
付帯工事費用 | ブロック塀、カーポート、庭石、樹木などの撤去費用。対象物が具体的に示されているか。 |
諸経費 | 現場管理費、書類作成費、近隣挨拶の費用など。何に対する経費か分かるか。 |
特に、アスベスト除去や地中埋設物など、状況によって発生する可能性のある追加費用について、どのような場合にいくらかかるのかが事前に明記されている業者は信頼できます。
5.3 損害賠償保険に加入しているか
細心の注意を払っていても、解体工事には事故のリスクが伴います。例えば、重機が隣家の壁を傷つけたり、解体材が飛んで通行人にケガをさせてしまったりする可能性はゼロではありません。万が一の事故に備え、業者が「損害賠償保険」に加入しているか必ず確認してください。
保険に未加入の業者に依頼した場合、事故が起きるとその損害賠償責任を施主であるあなたが負わなければならないケースもあります。口頭での「加入しています」という返事だけでなく、保険証券のコピーを見せてもらうなど、書面で確認することが重要です。
5.4 マニフェスト(産業廃棄物管理票)を発行してくれるか
解体工事で発生した木くずやコンクリートがらは「産業廃棄物」として、法律に基づいた適正な処理が義務付けられています。この処理が正しく行われたことを証明するのが「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」です。
マニフェストを発行しない業者は、解体で出た廃棄物を不法投棄している可能性があります。不法投棄が発覚した場合、処理を依頼した施主も責任を問われることがあるため、注意が必要です。契約前に、工事完了後にマニフェストの写し(E票)を渡してくれるかどうかを必ず確認しましょう。誠実な業者であれば、快く応じてくれます。
5.5 近隣住民への配慮や対応が丁寧か
解体工事は、騒音、振動、粉塵の発生が避けられず、近隣住民の生活に少なからず影響を与えます。工事を円滑に進め、後のトラブルを防ぐためには、業者による近隣への配慮が欠かせません。
以下のポイントから、業者の対応品質を見極めましょう。
工事前の挨拶回り:工事内容や期間、作業時間などを丁寧に説明してくれるか。
現場の安全・環境対策:養生シートの設置や、粉塵が舞わないための散水などを徹底してくれるか。
担当者の人柄と対応:質問に対して誠実に分かりやすく答えてくれるか。連絡がスムーズで、丁寧な言葉遣いか。
見積もり時の現地調査や電話でのやり取りは、その業者の姿勢を見極める絶好の機会です。少しでも対応に不安を感じる場合は、他の業者を検討することをおすすめします。
6. 家屋解体の相談から工事完了・税金手続きまでの全流れ

家屋の解体工事は、単に建物を壊すだけではありません。事前の準備から工事後の手続きまで、いくつかのステップを踏む必要があります。ここでは、解体業者への相談から工事完了、そして税金に関する重要な手続きまでの全7ステップを、時系列に沿って分かりやすく解説します。
6.1 ステップ1 解体業者へ相談・現地調査依頼
はじめに、解体を検討している家屋について、複数の解体業者に相談します。電話やウェブサイトの問い合わせフォームから連絡を取り、現地調査を依頼しましょう。正確な見積もりを算出するためには、専門家による現地調査が不可欠です。この段階で、建物の構造(木造、鉄骨造など)、延床面積、立地条件、近隣の状況などを業者に伝えることで、その後のやり取りがスムーズになります。
6.2 ステップ2 見積もりの比較検討・契約
現地調査後、各業者から見積書が提出されます。総額だけでなく、工事内容の内訳(仮設工事費、解体工事費、廃棄物処分費など)を詳細に比較検討することが重要です。安さだけで選ばず、工事内容や追加費用の有無、担当者の対応などを総合的に判断しましょう。信頼できる業者が見つかったら、工事内容、工期、金額、支払い条件などを明記した契約書を交わします。契約内容は隅々まで確認し、不明な点は必ず質問してください。
6.3 ステップ3 近隣への挨拶と各種届出
解体工事では、騒音や振動、粉塵の発生が避けられないため、近隣住民への事前の挨拶がトラブル防止の鍵となります。工事開始の1週間前までには、工事業者と一緒に粗品を持って挨拶に伺うのが一般的です。また、工事前には法的に定められた各種届出が必要となります。多くは業者が代行してくれますが、施主としてどのような届出が必要か把握しておきましょう。
届出の種類 | 概要 | 届出先 |
建設リサイクル法に基づく届出 | 延床面積80㎡以上の建物を解体する場合に必要。 | 都道府県知事(各市区町村の窓口) |
道路使用許可申請 | 工事車両が道路を占有する場合に必要。 | 管轄の警察署 |
アスベスト除去に関する届出 | 一定量以上のアスベスト含有建材を除去する場合に必要。 | 労働基準監督署・都道府県など |
6.4 ステップ4 解体工事の開始
届出が完了し、近隣への挨拶を済ませたら、いよいよ解体工事の開始です。まずは、足場の設置と防音・防塵シートによる養生を行い、近隣への影響を最小限に抑えます。その後、内装材の撤去、屋根や壁の解体、建物の基礎の撤去という順で工事を進めていきます。工事中は危険が伴うため、現場への立ち入りは控え、進捗状況は担当者からの報告で確認しましょう。
6.5 ステップ5 廃棄物の搬出・処分
解体工事で発生した木くず、コンクリートがら、金属くずなどの産業廃棄物は、法律に従って適切に分別し、処分場へ搬出されます。不法投棄などのトラブルを避けるため、業者が「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」を適正に運用しているか確認することが重要です。マニフェストは、廃棄物が正しく処理されたことを証明する書類であり、施主は最終処分の完了を確認するE票の写しを保管しておくと安心です。
6.6 ステップ6 工事完了・現地確認
すべての解体作業と廃棄物の搬出が終わり、土地が整地されたら工事完了です。施主は業者立ち会いのもと、現地を確認します。契約書通りに工事が行われているか、地中にコンクリート片などの埋設物が残っていないか、土地はきれいに整えられているかなどを自分の目でチェックしましょう。問題がなければ、工事完了の確認書に署名し、残金の支払いを行います。
6.7 ステップ7 建物滅失登記の申請
工事完了後に必ず行わなければならないのが、法務局への「建物滅失登記」の申請です。この手続きを怠ると、存在しない建物に対して固定資産税が課され続けることになります。申請は、建物を取り壊してから1ヶ月以内に行う義務があります。手続きは自分でも行えますが、複雑なため土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。業者によっては代行サービスを提供している場合もありますので、契約時に確認しておくと良いでしょう。
7. まとめ
家屋の解体費用は構造や立地で変動しますが、空き家を放置すると固定資産税が最大6倍になるリスクがあるため、早期の対応が重要です。解体費用は、国や自治体の補助金制度の活用、複数業者からの相見積もり、不用品の自己処分などで賢く抑えることが可能です。信頼できる業者を選び、正しい手順を踏むことがトラブル回避の鍵となります。まずはこの記事で解説したポイントを参考に、専門業者へ相談することから始めましょう。

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