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空き家トラブル回避のための5つの鉄則|知らないと損する固定資産税の話も

  • 執筆者の写真: seira murata
    seira murata
  • 11月26日
  • 読了時間: 15分
空き家 トラブル 回避

「親から相続した実家が空き家になっている」「遠方で管理できず、どうすればいいか分からない」そんな悩みを抱えていませんか?空き家を放置することは、雑草や害虫による近隣トラブル、建物の倒壊リスク、不法侵入といった問題だけでなく、ある日突然「固定資産税が6倍」になるという金銭的なリスクにも直結します。この記事を読めば、空き家が引き起こす7つの深刻なトラブルの具体例から、それらを未然に防ぐための5つの鉄則、そして固定資産税の増額を回避する方法まで、網羅的に理解できます。結論からお伝えすると、空き家トラブルを回避する最大の秘訣は「放置せず、早期に専門家へ相談し、適切な管理・活用へと行動を移すこと」です。大切な資産を将来の負債にしないため、今すぐできる具体的な対策を学びましょう。


1. 空き家放置が引き起こす7つの深刻なトラブル

「そのうち何とかしよう」と考えている空き家が、実は大きなリスクを抱えていることをご存知でしょうか。遠方に住んでいたり、相続したばかりで状況がわからなかったりすると、つい管理を後回しにしがちです。しかし、空き家の放置は、あなたが思う以上に深刻なトラブルを引き起こす火種となります。ここでは、空き家を放置することで発生する7つの代表的なトラブルを具体的に解説します。


1.1 近隣住民とのトラブルで訴訟に発展するケース

最も発生しやすく、かつ深刻化しやすいのが近隣住民とのトラブルです。最初は些細な苦情でも、対応を怠ることで関係が悪化し、最終的には損害賠償を請求される訴訟にまで発展するケースも少なくありません。


1.1.1 雑草や害虫の発生による苦情

管理されていない空き家の庭は、あっという間に雑草で覆い尽くされます。伸び放題になった雑草や庭木は景観を損なうだけでなく、隣地へ越境して迷惑をかける原因となります。さらに、鬱蒼とした草木は害虫や害獣の格好の住処となります。スズメバチが巣を作ったり、ネズミやハクビシンが住み着いたりすることで、近隣の衛生環境が悪化し、住民から厳しいクレームが寄せられることになります。


1.1.2 建物の倒壊や外壁落下のリスク

適切なメンテナンスが行われない建物は、急速に老朽化が進行します。特に台風や地震、大雪などの自然災害が発生した際には、屋根瓦が飛散したり、外壁やブロック塀が崩落したりする危険性が高まります。万が一、落下物や倒壊によって通行人や隣家に被害を与えてしまった場合、その責任はすべて所有者が負うことになり、多額の損害賠償を請求される可能性があります。これは民法第717条で定められた「土地工作物責任」であり、「知らなかった」では済まされない重大な問題です。


1.2 犯罪の温床になる防犯上のトラブル

人の気配がない空き家は、犯罪者にとって非常に魅力的なターゲットです。地域の治安を悪化させる原因にもなり、所有者として社会的な責任を問われることにもなりかねません。


1.2.1 不法侵入や放火のリスク

人の目がない空き家は、不審者の侵入を容易にします。最初は小さな物置から侵入され、やがて建物本体が犯罪グループのアジトとして利用されたり、非行の溜まり場になったりするケースがあります。中でも最も恐ろしいのが放火です。空き家への放火は決して珍しい事件ではなく、一度火災が発生すれば、自分の資産を失うだけでなく、隣家を巻き込む大惨事につながる極めて深刻なリスクです。


1.2.2 ゴミの不法投棄問題

敷地内にゴミが一つ捨てられると、「ここは捨ててもいい場所だ」という心理が働き、次々とゴミが不法投棄されるようになります。家電製品や粗大ごみ、建築廃材などが捨てられるようになると、その撤去には高額な費用がかかります。もちろん、その撤去費用は所有者の負担です。ゴミはさらなる害虫や悪臭の発生源となり、地域の環境を著しく悪化させます。


1.3 資産価値が下落する経済的なトラブル

空き家の放置は、物理的なリスクだけでなく、所有者自身の経済的な損失にも直結します。気づいた時には手遅れ、という事態に陥る前に、経済的なリスクを正しく認識しておく必要があります。


1.3.1 資産価値の急落

建物は人が住まなくなると、換気が行われなくなるため湿気が溜まり、驚くほどの速さで傷んでいきます。柱や土台が腐食し、雨漏りが始まると、修繕には数百万円単位の費用が必要になることもあります。放置期間が長引けば長引くほど建物の劣化は進み、資産価値は下落の一途をたどります。その結果、いざ売却しようと思っても買い手がつかず、解体費用の方が高くついてしまう「負動産」と化してしまうのです。


1.3.2 特定空家指定による固定資産税の増額

「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、著しく保安上危険、または衛生上有害であると判断された空き家は「特定空家」に指定される可能性があります。特定空家に指定されると、土地にかかる固定資産税の優遇措置(住宅用地の特例)が適用されなくなり、税額が最大で6倍に跳ね上がることがあります。これは所有者にとって非常に大きな経済的負担となり、行政からの指導や勧告に従わない場合は、最終的に行政代執行によって強制的に解体され、その費用を請求される可能性もあります。


2. 空き家トラブルを未然に防ぐための5つの鉄則

空き家 トラブル 回避

空き家が引き起こす深刻なトラブルは、決して他人事ではありません。しかし、適切な対策を講じることで、そのリスクは大幅に軽減できます。ここでは、所有者として最低限知っておくべき、空き家トラブルを未然に防ぐための「5つの鉄則」を具体的に解説します。


2.1 鉄則1 定期的な管理で空き家の状態を把握する

空き家トラブルを防ぐための最も基本的かつ重要な対策は、定期的な管理です。最低でも月に1度は現地を訪れ、建物の状態を自分の目で確認しましょう。遠方で訪問が難しい場合は、信頼できる親族に依頼するか、専門の空き家管理サービスの利用を検討してください。建物の劣化や周辺への影響を早期に発見し、迅速に対応することが、大きなトラブルへの発展を防ぐ鍵となります。

具体的な管理内容は以下の通りです。チェックリストとしてご活用ください。

管理項目

主な目的

作業内容の例

室内管理

湿気によるカビや腐食の防止

全室の窓や扉を開けての空気の入れ替え、押入れや収納の開放

通水

排水管の悪臭や錆の防止

各蛇口を1分程度開放し、水を流す

建物外部の点検

倒壊や雨漏りのリスク確認

外壁のひび割れ、屋根瓦のズレ、雨どいの詰まりなどを目視で確認

敷地内の確認

近隣への迷惑防止、防犯対策

庭木や雑草の剪定・除草、ゴミの不法投棄がないか確認、郵便受けの整理

2.2 鉄則2 近隣住民との良好な関係を築く

空き家の変化に最も早く気づくのは、近隣の住民です。普段から良好な関係を築いておくことで、トラブルの芽を早期に発見できる可能性が高まります。相続などで新たに所有者になった場合は、まず近隣へ挨拶に伺い、空き家の所有者であることと連絡先を伝えておきましょう。「何かお気づきの点があれば、ご遠慮なく連絡してください」と一言添えるだけで、相手の心証は大きく変わります。定期的に訪問した際にも挨拶を交わすなど、コミュニケーションを心がけることが、いざという時の協力関係につながります。


2.3 鉄則3 火災保険や賠償責任保険に加入する

空き家は放火のターゲットになりやすく、また、経年劣化による倒壊や外壁・屋根材の落下で第三者に損害を与えてしまうリスクも抱えています。万が一の事態に備え、保険への加入は必須です。注意点として、人が住んでいない空き家は、一般的な住宅用の火災保険では補償の対象外となる場合があります。必ず「空き家専用」の火災保険に加入し直しましょう。さらに、他人の身体や財産に損害を与えた場合に備える「施設賠償責任保険」も重要です。火災保険の特約として付帯できる場合が多いので、保険会社に確認し、必要な補償を確保してください。


2.4 鉄則4 相続人全員で管理方針を共有する

空き家が共有名義になっている場合、管理責任の所在が曖昧になりがちです。これが原因で管理が疎かになったり、相続人間でのトラブルに発展したりするケースは少なくありません。相続が発生したら、できるだけ早い段階で相続人全員が集まり、以下の点について明確に話し合いましょう。

  • 誰が中心となって管理を行うのか

  • 管理にかかる費用(固定資産税、保険料、修繕費など)の負担割合はどうするのか

  • 将来的にその空き家をどうするのか(売却、賃貸、解体など)

話し合った内容は「遺産分割協議書」などの書面に残し、全員の合意形成を証明できるようにしておくことが、後のトラブルを回避するために極めて重要です。


2.5 鉄則5 早めに専門家へ相談し活用方法を検討する

「いずれ何とかしよう」と考えているうちに、建物は劣化し、資産価値は下がり続けます。管理の手間や費用負担を考えると、空き家を放置し続けることは得策ではありません。自分たちだけで悩まず、早めに専門家へ相談し、売却、賃貸、解体など、最適な活用方法を検討しましょう。

相談先は目的によって異なります。売却や賃貸であれば不動産会社、管理に困っているならNPO法人や民間の空き家管理会社、活用方法そのものに悩んでいる場合は自治体の無料相談窓口が有効です。専門家の客観的な視点を取り入れることが、最善の解決策を見つけるための近道となります。


3. 知らないと損する空き家の固定資産税

空き家 トラブル 回避

空き家の放置は、近隣トラブルや防犯上のリスクだけでなく、税金面でも大きな負担増につながる可能性を秘めています。特に固定資産税は、ある日突然、今までの最大6倍に跳ね上がるケースも少なくありません。なぜそのような事態が起こるのか、その仕組みと回避策を正しく理解し、大切な資産を守りましょう。


3.1 空き家対策特別措置法と特定空家とは

空き家に関する税金のルールを理解する上で欠かせないのが、2015年5月に全面施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称:空き家対策特別措置法)です。この法律は、増加する空き家問題に対応するため、国や自治体が対策を進めるための根拠となるものです。

この法律の中で特に重要なのが「特定空家(とくていあきや)」という定義です。放置されている全ての空き家が対象になるわけではなく、以下のいずれかの状態にあると市町村が判断した場合に「特定空家」として指定される可能性があります。

  • そのまま放置すれば倒壊等、著しく保安上危険となるおそれのある状態

  • そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態

  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

自治体は、調査の上でこれらの状態にあると判断した空き家の所有者に対し、助言・指導、そして「勧告」「命令」といった行政措置を取ることができるようになりました。この「勧告」こそが、固定資産税に大きく影響するのです。


3.2 固定資産税が6倍になる仕組みを解説

なぜ「特定空家」に指定され勧告を受けると、固定資産税が最大6倍にもなってしまうのでしょうか。その鍵は「住宅用地の特例」という軽減措置にあります。

通常、人が住むための家が建っている土地(住宅用地)の固定資産税は、更地に比べて大幅に安くなる特例が適用されています。これは、人々の居住の安定を図るための政策です。



住宅用地の特例による固定資産税の軽減措置

区分

面積

固定資産税の課税標準額

小規模住宅用地

200㎡以下の部分

評価額の6分の1

一般住宅用地

200㎡を超える部分

評価額の3分の1

しかし、空き家が「特定空家」に指定され、自治体から改善のための「勧告」が出されると、この「住宅用地の特例」の対象から除外されてしまいます。

その結果、例えば200㎡以下の土地であれば、これまで評価額の6分の1で済んでいた課税標準額が、評価額そのもの(1分の1)になります。つまり、単純計算で土地の固定資産税が6倍に跳ね上がってしまうのです。これが「固定資産税が6倍になる」仕組みの正体です。


3.3 特定空家に指定されないための回避策

固定資産税の急増という最悪の事態を避けるためには、「特定空家」に指定されないこと、万が一指定されても「勧告」を受けないようにすることが重要です。そのためには、空き家を放置せず、適切に管理する必要があります。

具体的な回避策としては、以下のような方法が考えられます。

  • 適切な維持管理を行う


    定期的に訪れて清掃や草刈り、庭木の手入れを行いましょう。外壁の剥がれや屋根の破損など、危険な箇所があれば早めに修繕することが、倒壊リスクや景観悪化を防ぎ、「特定空家」の指定を回避する第一歩となります。

  • 解体して更地にする


    建物の老朽化が激しく、維持管理が困難な場合は、解体も選択肢の一つです。倒壊などの危険がなくなり、管理の手間は省けます。ただし、解体すると建物部分の固定資産税はなくなりますが、土地は「住宅用地の特例」が適用されなくなるため、税額が上がる点には注意が必要です。

  • 売却や賃貸で活用する


    最も根本的な解決策は、空き家でなくすことです。売却して手放す、あるいはリフォームして賃貸物件として貸し出すなど、資産として活用する道を検討しましょう。これにより、管理の手間や税金の負担から解放されるだけでなく、収益を得ることも可能になります。

どの方法が最適かは、空き家の状態や立地、所有者の状況によって異なります。自分だけで判断せず、早めに自治体の窓口や不動産会社などの専門家に相談することをおすすめします。


4. 空き家トラブル回避に役立つ相談先一覧

空き家 トラブル 回避

空き家に関する悩みは多岐にわたり、法律、税金、不動産、近隣関係など専門的な知識が求められる場面が少なくありません。一人で抱え込まず、問題が深刻化する前に専門家の力を借りることが、トラブルを未然に防ぐ最善策です。ここでは、あなたの状況や目的に合わせた主要な相談先を3つご紹介します。


4.1 自治体の無料相談窓口

何から手をつけていいかわからない、まずは基本的な情報を得たいという場合に、最初に頼るべきなのがお住まいの市区町村が設置している相談窓口です。多くの自治体では、空き家所有者向けに無料の相談会を定期的に開催したり、専門の相談員を配置したりしています。

ここでは、弁護士や税理士、建築士といった専門家から、空き家の管理方法、法的な問題、税金の仕組み、利用可能な補助金制度などについて、中立的な立場で公平なアドバイスを受けられるのが最大のメリットです。特定のサービスを勧められる心配がなく、安心して現状の課題を整理できます。ただし、自治体は直接的な売買の仲介や管理代行業務は行わないため、具体的なアクションは次のステップとして別の専門家へ依頼する必要があります。


4.2 不動産会社への売却や賃貸の相談

空き家を「売却して手放したい」「賃貸に出して収益化したい」といった具体的な活用方針が決まっている場合は、不動産会社が最も頼りになるパートナーです。地域の不動産市場に精通しており、あなたの空き家の資産価値を正確に査定してくれます。

不動産会社に相談するメリットは、査定から販売・賃貸活動、契約手続き、引き渡しまでを一貫してサポートしてくれる点にあります。また、必要に応じて解体やリフォームの提案、相続登記に関する司法書士の紹介など、関連する専門家とのネットワークも活用できます。空き家を負債から資産へと転換させるための、最も直接的で実践的な相談先と言えるでしょう。会社によって得意分野(売買、賃貸、エリアなど)が異なるため、複数の会社に相談し、査定額や担当者の対応を比較検討することが成功の鍵です。


4.3 NPO法人の空き家管理サービス

「遠方に住んでいて物理的に管理ができない」「売却や賃貸はまだ考えていないが、放置してトラブルになるのは避けたい」という方には、NPO法人などが提供する空き家管理サービスが適しています。これらの団体は、営利を第一の目的とせず、地域の景観維持や防犯といった社会的な観点から活動していることが多いのが特徴です。

主なサービス内容は、月額数千円から1万円程度で、定期的な巡回(建物の状態確認、通風・換気)、庭木の確認、郵便物の整理、清掃、そして状況を写真付きで報告するといったものです。所有者の金銭的・時間的な負担を最小限に抑えつつ、特定空家に指定されるリスクを回避できるため、将来的な活用方法をじっくり考える時間を確保したい場合に非常に有効な選択肢です。自治体と連携している団体も多く、信頼性の高いサービスが期待できます。


4.3.1 【目的別】空き家の相談先比較表

それぞれの相談先の特徴を、目的別に表でまとめました。ご自身の状況に最も近い相談先を見つけるための参考にしてください。

相談先

主な相談内容

特徴・メリット

こんな人におすすめ

自治体の相談窓口

空き家に関する全般的な悩み、法制度、税金、補助金

無料で中立的なアドバイスがもらえる。信頼性が高い。

何から始めればよいか分からない方、まずは情報収集したい方

不動産会社

売却、賃貸、リフォーム、解体、資産価値の査定

収益化や資産整理に直結する。具体的な実行プランを提案してくれる。

空き家を売りたい・貸したいなど活用方針が明確な方

NPO法人の管理サービス

定期的な巡回・管理の代行、現状維持の方法

比較的安価で管理を委託できる。地域の視点を持っている。

遠方に住んでいる方、すぐに活用する予定はないが放置はしたくない方

5. まとめ

本記事では、空き家を放置することで生じる7つの深刻なトラブルと、それらを未然に防ぐための5つの鉄則を解説しました。空き家は、雑草や害虫の発生、建物の倒壊といった近隣トラブルだけでなく、不法侵入や放火など犯罪の温床になるリスクも抱えています。さらに、資産価値の下落という経済的な損失にも繋がりかねません。

これらのトラブルを回避するためには、「定期的な管理」「近隣住民との良好な関係構築」「保険への加入」「相続人全員での方針共有」「専門家への早期相談」という5つの鉄則を実践することが極めて重要です。特に、空き家対策特別措置法により「特定空家」に指定されると、固定資産税が最大6倍になる可能性があるため、放置は金銭的にも大きなデメリットとなります。

空き家問題は、先延ばしにすればするほど深刻化し、解決が困難になります。所有する空き家が少しでも気になる場合は、この記事で紹介した自治体の窓口や不動産会社、NPO法人などの専門家へ速やかに相談し、売却、賃貸、管理委託など、ご自身の状況に合った最適な活用方法を見つけることが、トラブルを回避する最善の策と言えるでしょう。適切な対応をとることで、空き家は負の遺産ではなく、価値ある資産として守ることができます。

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