自分でできる?アスベスト飛散防止対策の正しい知識と安全な除去作業の流れ
- seira murata
- 9月7日
- 読了時間: 17分

ご自宅や所有の建物にあるアスベストの飛散対策は、ご自身でできるとお考えですか?健康被害のリスクが非常に高く法律でも厳しく規制されているため、DIYによる対策は絶対に行ってはいけません。この記事では、アスベストの危険性の基本から、専門業者が行う安全な除去作業の流れ、工法別の費用相場、信頼できる業者の選び方まで、飛散防止対策の正しい知識を網羅的に解説します。
1. アスベストの危険性 なぜ飛散防止対策が必要なのか
ご自宅や所有する建物にアスベストが含まれているかもしれないと知り、不安に感じていませんか。アスベストは、かつて多くの建材に使用されていましたが、その飛散による健康被害のリスクが明らかになり、現在では原則として製造・使用が禁止されています。まずは、なぜ飛散防止対策が急務なのか、その根本的な理由であるアスベストの危険性について正しく理解しましょう。
1.1 アスベストとは何か その種類と特徴
アスベスト(石綿)とは、天然に存在する鉱物繊維の総称です。非常に細い繊維状の構造を持ち、熱や摩擦、酸、アルカリに強く、耐久性にも優れていたため、かつては「奇跡の鉱物」と呼ばれていました。その優れた特性から、ビルや住宅の断熱材、耐火被覆材、スレート屋根材、ブレーキパッドなど、非常に幅広い用途で建材や工業製品に使用されてきました。
アスベストは、主に以下の種類に分類されます。
種類 | 別名 | 特徴と主な用途 |
クリソタイル | 白石綿 | 最も多く使用されたアスベスト。柔軟で加工しやすく、石綿スレート、石綿セメント管、ブレーキ材などに使用。 |
クロシドライト | 青石綿 | 発がん性が非常に高いとされる。耐酸性に優れ、吹付け材や石綿セメント管などに使用。 |
アモサイト | 茶石綿 | クロシドライトに次いで発がん性が高い。耐熱性・断熱性に優れ、吹付け材や断熱材、保温材として使用。 |
1.2 放置は危険 アスベスト飛散による健康被害
アスベスト建材は、安定した状態であれば直ちに危険性があるわけではありません。しかし、建物の解体や改修工事、経年劣化によって建材が損傷すると、目に見えないほど細いアスベスト繊維が空気中に飛散します。この飛散した繊維を呼吸によって吸い込んでしまうことが、深刻な健康被害を引き起こす原因となります。
体内に侵入したアスベスト繊維は、肺の組織に深く突き刺さり、分解されることなく長期間体内に留まります。これが原因となり、以下のような重篤な病気を引き起こす可能性があります。
石綿(アスベスト)肺:肺が線維化し、硬くなることで呼吸機能が低下する病気。息切れや咳などの症状が現れます。
肺がん:アスベストのばく露は、肺がんの発生リスクを高めることが科学的に証明されています。喫煙と合わさると、そのリスクは相乗的に高まります。
悪性中皮腫:肺を覆う胸膜や腹部を覆う腹膜などに発生する、極めて悪性度の高いがんです。アスベストばく露との関連が非常に強い病気として知られています。
アスベストによる健康被害の最も恐ろしい点は、繊維を吸い込んでから発症するまでの潜伏期間が20年〜50年と非常に長いことです。症状がないからと安心している間に、病状が静かに進行している可能性があるため、「静かな時限爆弾」とも呼ばれています。自分自身や家族、近隣住民の健康を守るためにも、アスベストの飛散を未然に防ぐ対策が不可欠なのです。
2. アスベストの飛散防止対策は自分でできるのか

建物の解体やリフォームを検討する際、「アスベスト対策の費用を少しでも抑えたい」と考え、ご自身での対策(DIY)を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、結論から申し上げますと、アスベストの飛散防止対策を個人で行うことは絶対におやめください。専門的な知識や装備なしでの作業は、取り返しのつかない健康被害や法的な罰則につながる、極めて危険な行為です。
2.1 DIYによるアスベスト対策が非常に危険な理由
アスベスト対策のDIYが危険な理由は、主に4つ挙げられます。
専門知識と技術の欠如
アスベスト含有建材は見た目だけでは判断が難しく、その種類や状態によって適切な対処法が異なります。飛散を防ぐための湿潤化や作業場所の隔離(養生)など、専門的な知識と技術がなければ、意図せずアスベストを飛散させてしまいます。
専用機材の不足
安全な作業には、アスベストの粉じんを吸い込まないための高性能な防じんマスクや、身体に付着させないための保護衣が必須です。さらに、作業場所の気圧を下げて粉じんの漏洩を防ぐ「負圧除じん機」といった大掛かりな専用機材も必要となり、個人で揃えることは現実的ではありません。
周囲への健康被害リスク
不適切な作業は、目に見えないアスベスト繊維を空気中に飛散させます。DIYによる対策は、作業者本人だけでなく、ご家族や近隣住民の健康を未来にわたって脅かす重大なリスクを伴います。飛散したアスベストは衣服や髪にも付着し、知らず知らずのうちに汚染を広げてしまう危険性があります。
不適切な廃棄物処理
除去したアスベスト含有建材は「特別管理産業廃棄物」に分類され、法律に則った厳重な管理と処理が義務付けられています。個人が一般のゴミとして廃棄することは法律で固く禁じられており、不法投棄とみなされます。
2.2 法律で定められたアスベスト対策のルールと罰則
アスベストの飛散防止対策は、作業者や周辺環境の安全を守るため、「大気汚染防止法」や「石綿障害予防規則(石綿則)」といった法律で厳しく規制されています。これらの法律では、事前調査から作業計画の届出、作業方法、作業後の確認まで、遵守すべきルールが細かく定められています。資格のない個人がこれらのルールをすべて遵守して作業を行うことは事実上不可能です。万が一、法律に違反した場合は、厳しい罰則が科せられます。
法律名 | 主な規制内容 | 違反した場合の罰則(一例) |
大気汚染防止法 | 事前調査の実施と報告、作業計画の届出、作業基準(隔離、湿潤化など)の遵守義務 | 直接罰(3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)、命令違反(6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金)など |
石綿障害予防規則(労働安全衛生法) | 作業主任者の選任、作業員の特別教育、保護具の使用義務、作業記録の保管義務など | 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金など |
このように、法的な観点からも個人によるアスベスト対策は認められていません。
2.3 原則として専門業者への依頼が必要
これまでご説明した通り、アスベストの危険性や法規制の観点から、飛散防止対策はDIYで行うべきではありません。アスベストの除去や封じ込め、囲い込みといった作業は、都道府県などから許可を受けた、専門的な知識・技術・資格を持つ業者に依頼することが唯一の安全な選択肢です。
専門業者は、法律を遵守し、適切な手順と装備で安全に作業を進めます。作業員はもちろん、お客様や近隣住民の皆様の安全と健康を最優先に考え、アスベスト廃棄物の適正処理まで責任を持って行います。建物の解体やリフォームでアスベスト対策が必要になった場合は、必ず信頼できる専門業者に相談しましょう。
3. アスベスト飛散防止対策の具体的な3つの工法

アスベストの飛散防止対策には、建物の状況やアスベスト含有建材の種類(レベル)、予算などに応じて、主に3つの工法が選択されます。それぞれの工法にはメリットとデメリットがあり、専門業者による適切な判断が不可欠です。ここでは「除去工法」「封じ込め工法」「囲い込み工法」の3つについて、その特徴を詳しく解説します。
3.1 除去工法 アスベストを完全に取り除く
除去工法は、アスベストが含有されている建材そのものを物理的に取り除き、建物から完全に撤去する方法です。アスベストによる健康被害のリスクを根本から解消できる最も確実な対策ですが、作業中の飛散リスクが最も高いため、厳重な管理下で慎重に作業を進める必要があります。
項目 | 内容 |
メリット | アスベストを建物から完全に除去するため、将来的な飛散リスクや健康被害の心配がなくなります。その後の建物の利用や将来の解体時にも制約がありません。 |
デメリット | 他の工法に比べて費用が高額になりやすく、工期も長くなる傾向があります。作業中は厳重な隔離養生や負圧除じん装置の設置が必須となり、専門的な技術が求められます。 |
主な適用例 | 吹付けアスベスト(レベル1)やアスベスト含有保温材(レベル2)など、発じん性が高く劣化が進んでいる建材。建物の解体を予定している場合。 |
3.2 封じ込め工法 薬剤で飛散を防止する
封じ込め工法は、アスベスト含有建材の表面に専用の薬剤(固化剤や造膜剤)を吹き付け、塗膜を形成することでアスベスト繊維を固定し、空気中への飛散を防ぐ方法です。既存の建材をそのまま残すため、比較的低コスト・短工期で施工できるのが特徴です。
項目 | 内容 |
メリット | 除去工法に比べて作業中の粉じん飛散リスクが低く、費用を抑え、工期を短縮できます。また、大規模な撤去作業が不要なため、周辺環境への影響も最小限に抑えられます。 |
デメリット | アスベスト自体は建物内に残存するため、将来的な建材の劣化や衝撃によって再び飛散するリスクが残ります。そのため、施工後も定期的な点検やメンテナンスが必要です。 |
主な適用例 | 吹付けアスベストなどがある天井裏や機械室など、人の出入りが少なく、直接的な衝撃が加わる可能性が低い場所。建材の劣化が軽微な場合。 |
3.3 囲い込み工法 建材でアスベストを覆い隠す
囲い込み工法は、アスベストが含有されている壁や天井などを、アスベストを含まない別の建材(石膏ボードや合板など)で完全に覆い隠し、隔離する方法です。アスベスト層に直接触れることなく施工できるため、安全性が高く、比較的短期間で対策が完了します。
項目 | 内容 |
メリット | アスベスト含有建材を傷つけずに施工するため、粉じん飛散のリスクが非常に低く安全です。除去工法に比べて費用も安く、工期も短い傾向にあります。 |
デメリット | アスベストが内部に残存するため、将来の改修や解体時には結局除去が必要になります。また、壁や天井を新たに設置するため、部屋が少し狭くなる場合があります。 |
主な適用例 | 比較的損傷の少ない天井や壁のアスベスト含有成形板(レベル3)。煙突のアスベスト含有断熱材など、直接覆うことが可能な場所。 |
4. 専門業者が行う安全なアスベスト除去作業の流れ

アスベストの除去作業は、健康被害と環境汚染を防ぐため、法律に基づいた厳格な手順に沿って進められます。専門業者が行う安全な作業は、大きく6つのステップに分かれています。ここでは、その具体的な流れを詳しく解説します。
4.1 ステップ1 事前調査と分析
アスベスト対策の第一歩は、建材にアスベストが含まれているかどうかを正確に把握することです。まず、設計図書や仕様書などの書類で建材情報を確認します。その後、専門の資格を持った調査員が現地で目視調査を行い、アスベスト含有の可能性がある建材を特定します。疑わしい建材が見つかった場合は、サンプルを採取し、専門の分析機関で含有の有無、種類、含有率を詳細に分析します。この調査結果が、後の作業計画や工法、必要な届出を決定する最も重要な基礎情報となります。
4.2 ステップ2 作業計画の作成と行政への届出
事前調査の結果に基づき、最も安全で効率的な除去作業の計画を立てます。作業計画書には、除去するアスベストのレベル(発じん性)、具体的な作業方法、作業員の安全対策、周辺環境への飛散防止対策、廃棄物の処理方法などを詳細に記載します。そして、この計画書をもとに、法律で定められた届出を関係行政機関に行います。特に発じん性が高いレベル1、レベル2のアスベスト除去では、作業開始の14日前までに所定の届出を完了させることが義務付けられています。
主な届出の根拠法と提出先 | ||
根拠法 | 主な届出先 | 届出書類の例 |
大気汚染防止法 | 都道府県・政令指定都市など | 特定粉じん排出等作業実施届出書 |
石綿障害予防規則(石綿則) | 所轄の労働基準監督署 | 工事計画届・特定石綿等作業届 |
建設リサイクル法 | 都道府県知事 | 解体工事の事前届出 |
4.3 ステップ3 作業場所の隔離と養生
アスベスト繊維の飛散を完全に防ぐため、作業エリアを外部から完全に隔離します。まず、プラスチックシートなどで作業場所を隙間なく覆い、密閉空間を作ります。次に、高性能なHEPAフィルターを備えた「負圧除じん機」を設置・稼働させます。これにより、作業エリア内の気圧を外部より常に低く保ち、万が一隙間があっても空気が外に漏れ出すのを防ぎます。また、作業員が出入りするためのセキュリティゾーン(更衣室、シャワー室、前室)を設け、作業衣に付着したアスベストを外部に持ち出さないための徹底した対策を講じます。
4.4 ステップ4 湿潤化による飛散防止と除去作業
隔離空間の準備が整ったら、いよいよ除去作業に入ります。作業中の粉じん発生を抑制するため、まず除去対象のアスベスト建材に「湿潤化剤(飛散防止剤)」を専用の噴霧器で十分に散布します。アスベスト繊維を湿らせて固めることで、解体・除去する際の飛散を大幅に抑えることができます。湿潤化を徹底した後、作業員はレベルに応じた防じんマスクや保護衣を着用し、手作業や専用の工具を用いて慎重にアスベスト建材を剥がし、取り除いていきます。
4.5 ステップ5 アスベスト廃棄物の適正な処理
除去したアスベスト建材は、「特別管理産業廃棄物」として法律に基づき厳重に処理する必要があります。除去した廃棄物は、飛散しないように湿潤な状態のまま、丈夫なプラスチック袋などで二重に梱包します。袋にはアスベスト廃棄物であることが一目でわかるように、専用の表示ラベルを貼り付けます。これらの廃棄物は、許可を得た専門の収集運搬業者が、最終処分場まで安全に運搬します。その際、マニフェスト(産業廃棄物管理票)を用いて、排出事業者から最終処分までの一連の流れが適正に行われたことを記録・管理します。
4.6 ステップ6 作業完了後の濃度測定と確認
すべての除去作業と清掃が完了した後、隔離養生を撤去する前に、最後の安全確認を行います。作業エリア内の空気中にアスベスト繊維が浮遊していないかを確認するため、空気環境測定を実施します。専門の測定者がエリア内の空気を採取し、顕微鏡で繊維の数を計測します。この測定結果が国の定める基準値以下であることを確認できて初めて、作業空間の安全性が科学的に証明されます。安全が確認された後、隔離養生をすべて撤去し、すべての作業が完了となります。
5. アスベスト飛散防止対策にかかる費用の相場

アスベストの飛散防止対策には、専門的な知識と技術、そして厳重な安全管理が求められるため、相応の費用が発生します。費用は、アスベスト含有建材の種類や発じん性のレベル、施工面積、採用する工法、建物の立地条件など、様々な要因によって大きく変動します。ここでは、費用の目安と負担を軽減するための制度について解説します。
5.1 アスベストのレベル別 除去費用の目安
アスベスト対策費用を考える上で最も重要なのが、アスベストの「レベル」です。発じん性(飛散のしやすさ)の高さによってレベル1からレベル3に分類されており、レベルが高いほど飛散防止対策が厳重になり、費用も高額になる傾向があります。
以下は、アスベストのレベルごとの除去費用の目安です。ただし、あくまで一般的な相場であり、現場の状況や業者によって金額は異なりますので、必ず複数の専門業者から見積もりを取得して比較検討してください。
アスベストレベル | 主な建材例 | 除去費用の目安(単価) |
レベル1 (発じん性が著しく高い) | 吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウールなど | 20,000円~85,000円/㎡ |
レベル2 (発じん性が高い) | アスベスト含有保温材、耐火被覆材、断熱材など | 10,000円~60,000円/㎡ |
レベル3 (発じん性が比較的低い) | スレート波板、ビニル床タイル、窯業系サイディングなどの成形板 | 3,000円~20,000円/㎡ |
※上記費用には、事前調査費、足場設置費、廃棄物処理費などが別途必要になる場合があります。
5.2 費用負担を軽減する補助金と助成金制度
アスベスト対策は高額になりがちですが、国や地方自治体では、国民の健康被害を防止し、安全な生活環境を確保するために、費用の一部を補助する制度を設けています。これらの制度をうまく活用することで、経済的な負担を大幅に軽減できる可能性があります。
補助金の対象となるのは、主に以下の項目です。
建築物のアスベスト含有調査(分析調査)にかかる費用
アスベストの除去、封じ込め、囲い込み工事にかかる費用
ただし、これらの補助金・助成金制度を利用する際には、いくつか注意点があります。
最も重要なのは、補助金の内容や条件、申請手続きは各地方自治体によって大きく異なるという点です。また、多くの場合、工事の契約や着工前に申請を完了させる必要があります。予算には限りがあるため、年度の途中で受付が終了してしまうことも少なくありません。
アスベスト対策を検討する際は、まずはじめにお住まいの市区町村のウェブサイトを確認したり、環境課や建築指導課といった担当窓口に問い合わせたりして、利用できる補助金制度があるか、その内容や申請要件は何かを必ず確認しましょう。
6. 信頼できるアスベスト対策業者の選び方

アスベストの飛散防止対策は、専門的な知識と技術が不可欠です。健康被害を防ぎ、法律を遵守するためにも、信頼できる専門業者に依頼することが極めて重要です。ここでは、後悔しないための業者選びのポイントを具体的に解説します。
6.1 必要な許認可や資格を確認する
アスベスト対策工事を行う業者は、国や都道府県から必要な許認可を得ている必要があります。また、現場で作業を行う技術者も専門資格を保有していなければなりません。見積もり依頼時や契約前に、必ず以下の許認可や資格の有無を確認しましょう。
種類 | 許認可・資格名 | 確認するポイント |
業者が保有すべき許認可 | 建設業許可(解体工事業など)または解体工事業登録 | 工事を行うために必須の許可・登録です。許可番号や登録番号を確認しましょう。 |
業者が保有すべき許認可 | 産業廃棄物収集運搬業許可 | 除去したアスベストを適正に処理場まで運搬するために必要な許可です。 |
技術者が保有すべき資格 | 石綿作業主任者 | アスベスト除去作業の現場に必ず配置しなければならない国家資格です。作業員の指揮監督や安全管理を行います。 |
技術者が保有すべき資格 | 建築物石綿含有建材調査者 | 建材にアスベストが含まれているかを正確に調査するための専門資格です。事前調査の信頼性に関わります。 |
これらの許認可証や資格者証のコピーの提示を求めることも有効です。提示を拒んだり、曖昧な回答をしたりする業者は避けるべきでしょう。優良な業者であれば、自社のウェブサイトなどで保有資格を公開している場合も多いです。
6.2 複数の業者から見積もりを取る際のポイント
業者を選ぶ際は、必ず2〜3社から見積もり(相見積もり)を取り、内容を比較検討することが重要です。単に総額の安さだけで決めるのではなく、以下のポイントをしっかりとチェックしてください。
6.2.1 見積書の内訳は詳細か
「アスベスト除去工事一式」といった大雑把な見積もりを出す業者は要注意です。信頼できる業者の見積書には、以下のような項目が詳細に記載されています。
事前調査・分析費用
作業計画作成・届出費用
仮設・養生費用(隔離シート、セキュリティゾーン設置など)
除去作業費用(工法、作業面積、人件費など)
飛散防止剤などの薬剤費
アスベスト廃棄物の収集運搬・処分費用
作業後の清掃・濃度測定費用
諸経費
内訳が不明瞭な場合は、後から追加費用を請求されるトラブルに繋がりやすいため、必ず詳細な説明を求めましょう。
6.2.2 安全対策に関する記載は具体的か
見積書や作業計画書には、どのような安全対策を講じるかが具体的に示されている必要があります。作業場所の隔離(二重養生)、負圧除じん機の設置、作業員の保護具(防じんマスク、保護衣)の着用、湿潤化による粉じん飛散抑制、作業後の空気環境測定など、法律で定められた措置がきちんと計画されているかを確認してください。
6.2.3 工事実績や専門性は十分か
アスベスト除去工事は、建物の構造やアスベスト含有建材の種類によって難易度が異なります。依頼する建物と類似した物件での工事実績が豊富かどうかを確認しましょう。業者のウェブサイトで施工事例を確認したり、直接質問したりするのも有効です。豊富な経験は、予期せぬ事態にも適切に対応できる能力の証となります。
6.2.4 万が一の事態への備えはあるか
どれだけ慎重に作業しても、事故のリスクはゼロではありません。万が一、アスベストを飛散させてしまった場合や、近隣に被害が及んだ場合に備え、賠償責任保険に加入しているかを確認することも重要です。保険への加入は、業者のリスク管理意識の高さを示す指標にもなります。
7. まとめ
アスベストの飛散防止対策は、専門知識なく個人で行うことは極めて危険です。深刻な健康被害を招くだけでなく、石綿障害予防規則などの法律で厳しく規制されており、違反には罰則も科せられます。安全を確保し、法令を遵守するためには、必ず都道府県などに登録された専門業者へ依頼することが不可欠です。アスベストが疑われる建材を見つけた場合は、まず専門家による調査を依頼し、適切な工法で対策を進めましょう。
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