解体工事の流れを期間・スケジュール別に解説!必要な手続きもこれ一本でOK
- seira murata
- 9月15日
- 読了時間: 13分

解体工事を検討しているものの、何から手をつければ良いか分からず不安に感じていませんか?この記事では、業者探しから工事完了後の建物滅失登記まで、解体工事の全8ステップを流れに沿って徹底解説します。構造別の期間や費用、建設リサイクル法などの複雑な手続きも網羅しているため、これ一本で必要な知識が全て手に入ります。スムーズな解体工事の鍵は事前の段取りです。安心して工事を進めるための準備を始めましょう。
1. 解体工事の全貌 8つのステップで流れを理解しよう
解体工事は、単に建物を壊すだけではありません。業者選びから各種手続き、近隣への配慮、そして工事後の登記まで、多くのステップを踏む必要があります。ここでは、解体工事の計画から完了までの一連の流れを8つのステップに分け、初心者の方にも分かりやすく解説します。全体像を把握することで、安心して工事を進めましょう。
1.1 ステップ1 解体業者への相談と現地調査
解体工事の第一歩は、専門の解体業者に相談することから始まります。インターネットや紹介で複数の業者をリストアップし、問い合わせてみましょう。相談後、業者が現地を訪れて「現地調査」を行います。
現地調査では、建物の構造、大きさ、立地条件、アスベストの有無、近隣の状況などを詳細に確認します。この調査結果が、後の正確な見積もりの基礎となります。施主様も立ち会い、解体範囲や残しておきたいもの(庭石や樹木など)の希望を直接伝えることが重要です。
1.2 ステップ2 見積もりの比較検討と業者選定
現地調査が終わると、通常1週間ほどで業者から見積書が提出されます。この際、必ず3社程度の業者から相見積もりを取り、内容を比較検討しましょう。安さだけで選ぶのではなく、見積もりの内訳が明確で、追加費用の可能性についても誠実に説明してくれる業者を選ぶことが大切です。見積書では以下の点を特に注意して確認してください。
チェック項目 | 確認するポイント |
工事内容 | 建物本体以外に、ブロック塀や浄化槽、庭木などの撤去範囲が明記されているか。 |
廃棄物処理費用 | 「一式」ではなく、木くず、コンクリートがらなど品目ごとに記載されているか。 |
付帯工事費用 | 足場設置費用、残置物(不用品)処分費用などが含まれているか。 |
諸経費 | 各種申請手続きの代行費用や、重機回送費などが含まれているか。 |
追加費用の条件 | 地中埋設物(以前の建物の基礎など)が発見された場合の追加費用について記載があるか。 |
見積もり内容に納得でき、担当者の対応も信頼できる業者を選びましょう。
1.3 ステップ3 工事請負契約の締結
工事を依頼する業者が決まったら、「工事請負契約」を締結します。契約は、後のトラブルを防ぐための非常に重要なステップです。口約束は絶対に避け、必ず書面で契約を交わしてください。契約書には、工事内容、請負代金の額、支払い方法、工期、万が一の事故に備えた損害保険の加入状況などが明記されていることを隅々まで確認しましょう。
1.4 ステップ4 各種届出と申請手続き
解体工事を行う前には、法律に基づいた様々な届出が必要です。多くは解体業者が代行してくれますが、施主としてどのような届出が必要か把握しておくことが大切です。
代表的なものに、延べ床面積80㎡以上の建物を解体する場合に必要な「建設リサイクル法」の届出や、アスベスト含有建材の有無を報告する「アスベスト事前調査結果報告」などがあります。また、工事車両が道路を占有する場合は「道路使用許可申請」も必要になります。
1.5 ステップ5 近隣への挨拶とライフラインの停止
工事開始の1週間〜10日前までには、近隣住民への挨拶回りを行いましょう。工事中は騒音や振動、粉塵などでご迷惑をおかけするため、事前に工事内容や期間を丁寧に説明し、理解を得ておくことが近隣トラブルを防ぐ鍵となります。挨拶は解体業者が主体となって行いますが、施主様も同行するのが望ましいです。タオルや洗剤などの粗品を持参すると、より丁寧な印象を与えます。
同時に、電気、ガス、水道、電話、インターネットなどのライフラインの停止・撤去手続きも進めます。ガスの撤去には立ち会いが必要な場合もあるため、早めに各供給会社へ連絡しましょう。
1.6 ステップ6 解体工事の開始から完了まで
いよいよ解体工事の開始です。工事は一般的に以下の順序で進められます。
1.6.1 足場と養生の設置
まず、建物の周囲に足場を組み、その外側を防音シートや防塵ネットで覆います。これは、騒音やホコリが近隣に拡散するのを防ぎ、作業員の安全を確保するための重要な工程です。
1.6.2 内装材や残置物の撤去
建物の内部から解体を進めます。畳、建具、石膏ボード、断熱材などを手作業で分別しながら撤去します。この段階で、事前に処分しきれなかった家具などの残置物も撤去します。法律(建設リサイクル法)に基づき、資材を適切に分別することが義務付けられています。
1.6.3 建物本体の解体
内装材の撤去が終わったら、重機を使って壁、柱、梁、屋根といった建物本体を解体していきます。水をまきながら作業を進め、粉塵の飛散を最小限に抑えます。
1.6.4 基礎の撤去と整地
建物の上部がなくなったら、地中に埋まっているコンクリートの基礎を掘り起こして撤去します。基礎を撤去した後の地面は、ガラなどを取り除きながら重機で平らにならし、整地して工事完了となります。
1.7 ステップ7 産業廃棄物の処理
解体工事で発生した木くず、コンクリートがら、金属くずなどは「産業廃棄物」として法律に則って適正に処理されなければなりません。解体業者は、これらの廃棄物を品目ごとに分別し、許可を受けた処理場へ運搬します。不法投棄を行う悪質な業者も存在するため、契約前にマニフェスト(産業廃棄物管理票)の発行について確認しておくと安心です。
1.8 ステップ8 建物滅失登記の申請
工事が完了し、建物がなくなった後、最後の重要な手続きが「建物滅失登記」です。これは、法務局にある登記簿から建物の情報を抹消するための申請で、建物の解体後1ヶ月以内に申請する義務があります。この手続きを怠ると10万円以下の過料に処せられる可能性があるため、忘れずに行いましょう。手続きは複雑なため、一般的には土地家屋調査士に依頼します。
2. 【構造別】解体工事にかかる期間とスケジュールの目安

解体工事の期間は、建物の構造や規模、立地条件によって大きく変動します。ここでは、一般的な戸建て住宅でよく見られる「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」の3つの構造別に、解体にかかる期間の目安を解説します。ご自身の建物の状況と照らし合わせ、全体のスケジュールを把握するための参考にしてください。
2.1 木造住宅の解体工事期間
日本の戸建て住宅で最も多いのが木造住宅です。他の構造に比べて比較的解体が容易なため、工期は短くなる傾向にあります。ただし、重機が入れない狭小地での手壊し作業や、アスベスト含有建材の有無によって期間は変動します。
木造住宅の解体期間目安 | |
延床面積(坪数) | 解体期間の目安 |
~30坪 | 約1週間~2週間 |
30坪~50坪 | 約2週間~3週間 |
50坪以上 | 約3週間~1ヶ月以上 |
2.2 鉄骨造(S造)住宅の解体工事期間
鉄骨造(S造)は、柱や梁に鉄骨を使用しており、木造よりも頑丈な構造です。そのため、解体には木造より少し長い期間が必要となります。特に、厚い鋼材が使われる「重量鉄骨造」の場合は、切断作業に時間がかかり、工期がさらに延びる可能性があります。
鉄骨造(S造)住宅の解体期間目安 | |
延床面積(坪数) | 解体期間の目安 |
~30坪 | 約2週間~3週間 |
30坪~50坪 | 約3週間~4週間 |
50坪以上 | 約1ヶ月~1.5ヶ月以上 |
2.3 鉄筋コンクリート造(RC造)住宅の解体工事期間
鉄筋コンクリート造(RC造)は、マンションやビルにも採用される非常に堅牢な構造です。コンクリートを専用の重機(ブレーカーなど)で破砕しながら解体を進めるため、作業に時間がかかるだけでなく、大きな騒音や振動が発生しやすいのが特徴です。そのため、3つの構造の中では最も工期が長くなります。
鉄筋コンクリート造(RC造)住宅の解体期間目安 | |
延床面積(坪数) | 解体期間の目安 |
~30坪 | 約3週間~1ヶ月 |
30坪~50坪 | 約1ヶ月~1.5ヶ月 |
50坪以上 | 約1.5ヶ月~2ヶ月以上 |
これらの期間はあくまで目安です。正確なスケジュールは、解体業者による現地調査後の見積もりで必ず確認するようにしましょう。
3. 解体工事の前に必須となる手続きと届出一覧

解体工事を始める前には、法律に基づいたさまざまな届出や申請が義務付けられています。これらの手続きは、安全な工事の実施と環境保護のために不可欠です。施主様ご自身で行うものと、解体業者が代行してくれるものがありますので、誰が・いつまでに・どこへ手続きを行うのかを正確に把握しておきましょう。手続きを怠ると罰則が科されたり、工事が遅延したりする可能性があるため、必ず確認が必要です。
3.1 建設リサイクル法の届出
「建設リサイクル法」は、特定の建設資材の分別解体と再資源化を促進するための法律です。解体工事で発生するコンクリートや木材などを適切に処理することを目的としています。対象となる工事の場合、発注者(施主様)に届出の義務がありますが、多くの場合、委任状を作成して解体業者が手続きを代行します。
項目 | 内容 |
対象工事 | 解体する建物の延べ床面積が80㎡以上の場合 |
届出義務者 | 発注者(施主様) |
届出先 | 工事現場を管轄する都道府県または市区町村の担当窓口 |
提出期限 | 工事開始の7日前まで |
備考 | 届出を怠ると20万円以下の罰金が科される場合があります。 |
3.2 アスベスト(石綿)事前調査結果の報告
人体に有害なアスベスト(石綿)の飛散を防ぐため、2022年4月より、一定規模以上の解体工事において有資格者による事前調査と、その結果の電子報告が義務化されました。建物の規模や築年数に関わらず、すべての解体工事で事前調査は必須です。調査の結果、アスベスト含有建材が確認された場合は、法令に則った除去作業と追加の届出が必要になります。
項目 | 内容 |
報告対象工事 | ・解体部分の床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体工事 ・請負代金の合計が100万円以上の建築物の改修工事 など |
調査・報告者 | 元請業者(解体業者) |
報告先 | 労働基準監督署および管轄の自治体(原則として電子システム「GビズID」を使用) |
報告期限 | 工事開始前まで |
備考 | 報告を怠ると30万円以下の罰金が科される場合があります。 |
3.3 道路使用許可申請
解体工事では、重機や資材運搬用のトラックが前面道路に駐停車したり、足場の一部が道路にはみ出したりすることがあります。このように公道を使用して作業を行う場合は、管轄の警察署へ「道路使用許可」を申請する必要があります。この申請は、交通の安全を確保し、近隣への影響を最小限に抑えるために不可欠です。通常は解体業者が申請手続きを行います。
項目 | 内容 |
必要なケース | ・工事車両(トラック、重機など)を道路に駐停車させる場合 ・足場や養生シートが道路にはみ出す場合 ・資材の搬出入で一時的に道路を占有する場合 |
申請者 | 元請業者(解体業者) |
申請先 | 工事現場を管轄する警察署 |
申請時期 | 工事開始の1〜2週間前 |
3.4 ライフラインの停止・撤去手続き
解体工事の前には、建物に引き込まれている電気、ガス、水道、電話、インターネット回線などのライフラインを停止または撤去する必要があります。これらの手続きは、原則として契約者である施主様ご自身で行います。連絡先や手続き内容がそれぞれ異なるため、計画的に進めましょう。
ライフライン | 連絡先 | 手続きと注意点 |
電気 | 契約している電力会社 | 電線の撤去依頼をします。工事の1週間前までには連絡しましょう。 |
ガス | 契約しているガス会社 | 閉栓とガスメーター、配管の撤去を依頼します。作業員の立ち会いが必要なため、早めに連絡・予約をしてください。 |
水道 | 管轄の水道局 | 工事中にホコリの飛散防止で散水することがあります。完全に止めるか、工事用に残すかを解体業者と相談の上、手続きを進めましょう。 |
電話・ネット回線 | 契約している通信会社 | 電話線や光ファイバーケーブルの撤去を依頼します。解約手続きも忘れずに行いましょう。 |
浄化槽・便槽 | 管轄の清掃業者 | 最終的な汲み取り(清掃)を依頼します。汲み取りが完了していないと解体できません。 |
4. 解体工事の流れでよくある質問

解体工事を初めて依頼する方にとって、工事の流れの中で様々な疑問や不安が生じるのは当然のことです。ここでは、特にお問い合わせの多い質問について、Q&A形式で分かりやすく解説します。事前に疑問点を解消し、安心して工事に臨みましょう。
4.1 解体工事の費用はいつ支払うの?
解体工事の費用の支払いタイミングは、業者によって異なりますが、一般的には「契約時」と「工事完了後」の2回に分けて支払うケースが主流です。トラブルを避けるためにも、契約書で支払いスケジュールを必ず確認しましょう。
一般的な支払いスケジュールの例は以下の通りです。
支払いタイミング | 支払い内容 | 費用の目安 |
契約時 | 着手金 | 工事総額の30%~50% |
工事完了後 | 残金 | 残りの全額 |
一部には全額前払いや全額後払いを採用している業者も存在しますが、着手金と残金に分けるのが最も一般的です。特に、理由なく全額前払いを要求する業者には注意が必要です。支払い方法(銀行振込か現金かなど)も含め、契約前にしっかりと確認しておくことが重要です。
4.2 近隣トラブルを防ぐためのポイントは?
解体工事では、騒音、振動、粉塵の発生が避けられないため、近隣住民への配慮が不可欠です。円滑に工事を進めるためにも、以下のポイントを押さえておきましょう。
事前の挨拶回り:工事開始の1週間~10日前までには、解体業者とともに近隣へ挨拶に伺いましょう。工事の概要、期間、作業時間、連絡先を伝え、理解と協力を得ることが最も重要です。
丁寧な養生:騒音を軽減する防音シートや、粉塵の飛散を防ぐ養生シートを建物全体に隙間なく設置してもらうよう業者に依頼します。
作業時間の遵守:早朝や夜間、日曜・祝日の作業は避け、原則として午前8時~午後5時といった一般的な作業時間を守ってもらうことが大切です。
現場の整理整頓:工事車両の駐車位置や、現場周辺の清掃にも気を配ることで、近隣への印象が大きく変わります。
何よりも大切なのは、工事前の誠意あるコミュニケーションです。事前に丁寧に説明しておくことで、万が一クレームが発生した際も、大きなトラブルに発展するのを防ぐことができます。
4.3 解体後の土地活用についても相談できる?
はい、多くの解体業者が解体後の土地活用に関する相談にも対応しています。解体工事を専門としつつも、地域の不動産会社や工務店、ハウスメーカーと提携している業者が多いためです。
具体的には、以下のような活用方法について相談が可能です。
月極やコインパーキングとしての駐車場経営
土地の売却や査定の依頼
アパートや戸建て住宅の新築
更地のまま維持管理(防草シートの設置など)
業者によって対応範囲は異なりますので、最初の見積もり依頼の段階で「解体後の土地活用も検討している」と伝えておくと、その後の話がスムーズに進みます。解体から土地活用まで一貫してサポートしてくれる業者を選ぶことで、手間を省き、コストを抑えられる可能性もあります。
5. まとめ
本記事では解体工事の全ステップを流れに沿って解説しました。解体工事は、業者選定から始まり、各種届出、近隣挨拶、実際の工事、そして工事後の建物滅失登記まで多岐にわたります。トラブルなく円滑に進めるためには、特に事前の手続きや近隣への配慮が不可欠です。この記事で解説した8つのステップと期間の目安を参考に、信頼できるパートナーとなる業者を見つけ、計画的に準備を進めましょう。
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